捨て犬 | 富士の裾野で想うVet

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地方獣医の徒然記

クライアントの隣の家は、今は空き家。

その家に、ビニールひもで繋がれた犬がいた。


クライアントは、その犬を見た事がない。

空き家だから、当然飼われている訳ではない。


その家が空き家だから、捨てて行ったのか。

もし、そうだとすれば酷い事をするものだ。


気が付いてもらえなければ、その子は餓死するしかない。

それが分かっていて、繋いで行ったのか。


既に老犬で、視力・聴力・臭覚は衰えている。

肛門周囲腺腫もあり、精巣も腫瘍化しているよう。

眼瞼にも腫瘤あり。

後肢にも麻痺が出ている。


高齢になって、反応も鈍化してきて、

腫瘍が体の各所にあり、

手術やら何やら、動物病院に掛れば金が掛る。


だから捨てたのか。


そうだとは思いたくないが、

空き家にビニールひもで繋いであった事からすると、

そうなのかと思ってしまう。


ウロウロしている犬がいるから、

取りあえずビニールひもがあるから、繋いでおこう。

交通事故に会うと可哀想だし。


好意的に考えれば、こういう事もあり得るかもしれないが、

それはあまりに楽天的な考えか。


幸い、見つけた隣家のクライアントさんが、

その子が年寄りで、老い先短いかもしれないが、

見つけたのも何かの縁だからと面倒見てくれると言う。


非情な人間の行いで、

命を落としていたかもしれない老犬に、

情けを掛けてくれるのも人間。


どんな人に飼われるかによって、

動物の一生は左右される。


命を粗末にする人間に飼われた老犬の一生は、

その最終章で報われる事になった。