もめんとの双子の妹・妹1と、つれあいが新婚当初ケンカした時のことだった。

妹1「悔しいから、復讐をしてやった。もめちん、聞いてくんな!」


もめ「何やらコワいなぁ!」


妹1「まず、賞味期間の過ぎた肉を焼いて出してくれたわ!」


ありゃま~。
大丈夫なのか?


妹1「茶に、台ふきんの絞り水入れて出してくれたわ!」


ぎゃ~。
本当にやる人がここにいた!


妹1「炊飯器のなかで3日たった黄色いご飯出してくれたわ!」


もめ「いくらなんでもご飯は怒るだろ!」


妹1「それが、やっこさん、こちらの怒りをやっと察したか、低姿勢に出てきた。
¨わぁ、今日のご飯は炊き込み御飯かなぁ、色がついてるしね!おいしいな…あはは…¨」


もめ「いじましい。泣ける!」


妹1「¨これのどこが炊き込み御飯なんだよ¨」

つれあい「えっ?」


妹1「日数が経って色がついてるだけの御飯に決まってんだろ。」


つれあい「そ、そうなの?じゃ、わざと?」


妹1「あぁ、ワザとだよ。」

つれあい「…………。」

妹1「それくらい、こっちは怒ってんだよ。
なんだい黙ってりゃ、亭主関白気取りでえばりやがって。
人を女中扱いすんな!」

つれあい「す、すいません。」


いやぁ。
何ちゅうか。


女はコワいですな。

女を怒らしたらあきまへん。


そんな妹1は東京の、オサレな場所にお住まいの奥さんですよ。


昔、ある時、もめ母が
「ちょっと来てみて!」
と言うので行ったところ、

もめ母が、もめ父のカバンの中を見てみろ、と言う。


カバンの中はボールペンたくさん、
ノート、
折り畳み傘、
聖書、
植物図鑑、

に加え大量の、
山崎パンの空き袋が入っていた。


もめ母「なんだと思う?食パンやバターロールの食べた後の袋がこんなにたくさん!
これなんなんだろう。変わってる人だからやることがわからないよ。
貧乏くさいし、捨てちゃいたいんだけど。」


確かになぁ。
どうすんだよ、
この大量のパンの袋!


「何か目的があるんだよ。勝手に捨てると発狂しちゃうよ。それとなくもめんとが聞いてみてあげるよ。」


後日。

もめ「パパ。つかぬことを聞くけどもいいかな?」

もめ父「ん?なんだろうか。」

もめ「パパのカバンの中には大量のパンの空き袋が入っているようだけど、何に使うか聞いてもよいかな?」

するともめ父は笑って

もめ父「あれはだな。
非常に役に立つ物なのでママがゴミに出す前に、ウチのゴミ箱から取り出してはマメに集めておくんだ!

例えばな、外出先でのゴミ入れに使える。
また病院の給食の残り物を入れて、持ち帰れる。
また、一番の目的だが、道端で見つけた珍しい草を、入れるのにとてもいい。
くちゃくちゃした普通のビニールだと、草が潰れてしまうんだ。
また、あとで逃がしてあげるけども、
珍しい蛙を捕まえて観察する時、あの袋に入れると、とても観察しやすい。」


そうだったのか。

実に多彩な用途に使われていたのか。

もめ父の中には、
パンの空き袋が貧乏くさい、という概念は全くないのだった。


しかし、もめ母はこれを知ってため息をついていた。


もめ母「こないだ、押し入れ開けたら、パンの袋がワサワサあって、腹立ったから捨ててやった!」


ま、いいでしょ。
またすぐ貯まっちゃうよね。
家は毎日パン食べるしね。
もめ父は、強烈なキャラクターだったので、忘れられない語録がたくさんある。


もめ母「ある時のパパのセリフは強烈だったよ~。」

もめ「え~、どんなの?」

もめ母「パパにね、
´しかし、お義母さんは、女だてらに豪快だったわねぇ。
お義父さんが残した財産、ほとんど使い切って亡くなったもの。
華やかで気っぷがよくてねぇ´って言ったら…。」


もめ父「何が華やかだ!それが、問題なんじゃないかっ!」

もめ母「え?なにが?」
もめ父「自分はな、元来働かずに済むなら働かず、
家の中で本だけ読んでいたい人間なんだ。
本当は医者じゃなく絵描きになりたかったのに、許してもらえず医者になるしかなかったのだ。

許されるなら貴族のような身分に生まれたかったくらいだ。

世間は自分には厳しく辛すぎるのだ。
上手く渡る遣り手にはなれないのだ。
こういう息子だとわかっていたんだから、
息子が困らないように財産を残していってくれれば良かったのだ。

あんな三味線だか長唄だか知らん道楽にパカパカ浪費する必要がどこにあったんだ!」


強烈すぎるよ、父、その思考は!

貴族じゃないにしてもどれだけ裕福に育ったかわかってないのか、この人は。


もめ母「どうしてパパ、亡くなった人の悪口を言うのよ。
自分のお母さんでしょ!」

もめ父「そうか、そうやって、こっちの意見をむげにするか!
自分は孤独だ!
誰にも理解されないのだ!
だから俗人はキライなんだ!
俗人は俗人同士で仲良くするがいい!」


と激したら最後手がつけられなくなる。

そうとわかりながら、もめ母は考えるより先に口が出てしまうので、
常に墓穴を掘っていた。

なお、もめ父の物の言い方は平素からこのようなのであり、
芝居みたいな大仰な語り口なのだ。

外の世界では、
そこまでせんでも、
という位低姿勢だが、
家族の前では要するに言いたい放題である。

いささか浮き世離れした父親なのであった。


よくママ友が、
「家の中にいると社会から取り残されそうで仕事始めたの。」
と言うので、

「立派だね!」と言って差し上げる。

「もめんとさんも、そうでしょ?」
と聞かれるが、

別に専業主婦だからって社会から取り残される不安を感じた事はない。

もめんとは生活の為に仕事をしているのであり、その仕事もやりがいはあるが、
働かなくて済むなら本来やはり家で本でも読んでいたい方である。