日本ハムのホームゲームで使われていた札幌ドーム、その日本ハムが北広島に自前の球場を持つことになり、札幌ドームの財政赤字がどうなるかといったところで話題になっているようですね。ネーミングライツやアーティストの勧誘などで埋めようとしていたところ、思った形では進まず3月期決算で純損益が6億5100万円の赤字となったとのことです。
まぁ今までの日本ハムにあぐらをかいていたのが悪いみたいにも言われるかもしれませんが、そもそも公共のものでいったいどれほどのところが黒字化することができているかといった点では別に札幌ドームだけの問題でないかもしれません。それこそ東京五輪で使われた会場であったり、選手村であったりといったところについて、維持コストなどが問題視されているという話も耳にするところではあります。
地方であれば人口減少の影響を受ける中、公共施設を維持するのは楽ではなく、それは札幌ドームのような大きなハコであればなおのことその運営は簡単ではないといえるのかもしれません。
アーティストを誘致うまくできなかったとされていますが、こちらに関してはそもそもの難しさがあるように感じます。
アーティストがライブをするにしても、同じ箇所で何日にもかけてライブをするということはあまりありません。サマソニやフジロックのような野外イベントですら、せいぜい3、4日とかそのくらいです。
アーティストとしては当然ライヴをする上では集客を意識しますから、1年に1日仮に札幌ドームでライヴをするにしても。集客が期待できる日を選択するということになります。そうなるとアーティスト側が札幌ドームを利用したい日というのはせいぜい限定的であり、それも、サッカーや他のイベントなどと重なる可能性を含めると余生集客が期待できる日というのは限られることになります。
また、北海道という土地は、本州とは陸繋ぎではなく、機材などの搬入もそれだけコストがかかるということになります。その上北海道は広大であり、車で移動するにしても時間がかかります。一部のコアなファンでなければ、全国ツアーどこにでも行くという人は稀です。北海道での集客そのものに東京などといったほどに期待値を高く見積もることができないわけです。ファンからしても交通手段が発達している場所ではありませんし、札幌ドームを満席にするようなイベントというのを期待するのは基本的には難しいとなります。
となると、コスト面との折り合いが悪く、アーティストとしてもそもそも札幌、北海道でのイベントというのは魅力的ではなく、ましてや札幌ドームの利用料などを考慮すればなおのことと言えます。
たった1日のために、高いコストを支払うというのは見合わないというわけです。
その意味ではアーティストが利用するということにそもそも適した環境、場所ではないということににもなります。
日本ハムが利用するというのは、年間の試合数のおよそ半分のホームゲームで利用してもらえるということであり、これは非常に計算が立ちやすい魅力的な提案であったということが言えます。
サッカーなど他のスポーツもありますが、野球というスポーツは試合数が多いといった点でも、非常に都合のいいスポーツですね。
年間144試合そのうちの半分で72試合、シーズンものであり、春先から秋までの利用で他の時期の利用がないというのは、おいしい話だったというわけです。
その美味しいビジネスというのがなくなったわけですから、当然それだけ財政への負担が強まり、そこを安定的にカバーするのが簡単ではないというのは明らかな話でもあります。
そして、それは、札幌ドームの価値そのものにも強く影響を与えることであったともなります。
ネーミングライツでの収入を期待した札幌市ですが、ネーミングライツの設定が強気だったのもあってか、なかなかうまく進んでいないようです。
それは、ネーミングライツを購入するコストと、広告費が見合うものではないと判断されたということでもあります。
日本ハムというチームがホームで利用しているのであればあるいは違ったかもしれません。年間の半分を日本ハムが利用し、それは、スポーツニュースや様々な形で耳にする機会もあるというのはそれだけ広告効果を高く期待できるということになります。
ネーミングライツというのはそもそも需要が高いところに対して意味がなされるものです。誰も使わない場所で、その権利を主張しても、誰得なの?となるからです。
最もそれを設定金額を安く抑えて、活用しているシーンなどもあります。
オートボードなどでの一般戦などにおけるネーミングライツの活用です。
こちらは、一般人でも購入できるようなコストのため、一般人がネーミングライツを利用するケースというのがたまにあったりしますね。結婚記念日であったり、告白に使われたりということもあれば、悪ふざけ的にネーミングライツを使われることもあります。
どのようなネーミングライツでも申請すれば通るかといえばそうではありませんが、広告的な活用ではなく、自分たちの思い出、自分たちが楽しむためといった感じでしょうか。
オートボードのネーミングライツは、レースに対してというところがポイントです。
年間何レースも行われう中の1レースにすぎず、そしてそれはドームなどに対してつけられるものではないため、開催側コストがかかることがなく、結果、ネーミングライツを安く利用してもらうということに成功しているわけです。
札幌ドームのネーミングライツを1日だけ貸し出しなどは簡単ではないでしょうし、公共のものである中で、自由度を示すのも難しいかと思います。
そうした制限があり、プロ野球球団がホーム球場として使わなくなったところに対してネーミングライツを主張したところで、高い金額を望むことはできないというわけです。かといって現状に合わせてその金額を調整するということができるわけでもないでしょう。
そしてそういう状況であるということが報道されるとさらにネーミングライツで使いたいという企業などが現れにくくなるというわけです。
まぁ改めて公共のものであるがゆえの扱いにくさも感じるところですが、市民が利用するケースというのは限定的にもなりそうですから、その意味では売却先を探すという方がいいのかもしれません。
北広島に引っ越していなかったらあるいは日本ハムは購入を検討したかもしれませんし、その意味ではもう時遅しかしれませんが、どういう落とし所になっていくのかは気になりますね。