本紹介:豆腐の文化史 | 米の心

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今回ご紹介するのは岩波新書1999 原田信男さん著、豆腐の文化史です。豆腐は中国から日本に来たと言われていますが、日本人にとって馴染みの深い食べ物の一つです。最近では、大豆をアメリカやカナダからの輸入品でということもありますが、豆腐に限らず、味噌に醤油と日本食において大豆というのは欠かせない存在の一つといえるでしょう。

実際、日本人における大豆の消費量は中国などより多く世界でもトップクラスだそうです。大豆の生産量世界一を誇るアメリカはあれほどに大豆を作っていながら国民あたりの消費量は少ないのだとか。近年は豆腐などへのニーズもヘルシー志向て高まってきているようですが、そもそもは家畜への餌や輸出目的の方が強かったようですね。

ちなみに豆腐の元となる大豆は、中国や日本などの地域が原産と言われているようです。

その大豆については、生育環境が合わず、欧州では浸透しなかったものの、新大陸、アメリカ大陸では生育環境が適合したため向こうで作られるようになったのだとか。欧州にはアメリカ経由で大豆、大豆食品への認知というのが高まったという経緯があるようです。

さて、そんな日本人にとって馴染みの深い豆腐についての文化史の本です。

この本については、どのような豆腐の種類があるのか、どう豆腐が広まっていたのか、市民に浸透していったのはいつ頃なのかといったところへの考察がきちんとされているのがいいですね。

文化史を名乗る本というのは結構多くあります。食材であったり、何かに特化した形でのアプローチをしようとする文化史の本って割とあるんですよね。

しかし、実際に読んでみるとあんまり満足度の高くないものというのも多かったりします。

例えば唐辛子はどこそこが起源、いつ、こう広まっていったみたいなことが淡々とかかれている本などはあったりするわけです。しかし、それは歴史的にそうなのかもしれませんが、そこに文化的な営みというのをあまり感じない、乾燥した印象を持つものも少なくないんですよね。

その歴史的な広がりについても、広まったということしか書かれていなくてそこがどうしてそう広まっていったのか、それが果たして事実なのかと至っところへの考察がないという本もあったりします。

そうすると、文化史の本として読んでいて読み応えをあまり感じないという印象を自分は持ってしまいます。

文化であるからこそには、その広がりの背景であったりというところを感じられてこそ、その広がりの意味がより理解できるようになりますし、その理由とする資料についてもその資料についての考察があってこそ、説得されるというわけです。(まぁ私がその資料を読んでいるわけでもないので、勝手に説得された気分になっているとも言えるのですが。)

そのあたり、この本は豆腐について調べて、考察して、書かれているのではないかと思わせてくれる本ですし、だからこそ、読み応えがあり、読んでいて楽しい本だったように思います。

豆腐が好きな人、関心がある人なら一度手に取ってみてもいい本ですね。

著者の原田さんは、日本生活文化史を専攻されている方であり、他にも江戸の料理史や江戸の食生活などなど、食文化をテーマとした本を多く書かれている方です。

それもあってか、時代における食文化への造詣の深さを感じられ、それもあって豆腐へのアプローチというところも説得力を感じる内容になっているように思います。

日本へどうやっていつ豆腐が入ってきたのか、それがどう市民に広がりを見せ、各地でどのような豆腐の食べ方がされてきたのか、昔はどのような豆腐の食べ方があったのかというような様々な豆腐の文化のついてのアプローチがあるので、豆腐好きからすると読んでいて楽しめる本だと思いますので、興味がある方は手に取ってもいいのかもしれません。