藤井聡太7冠に | 米の心

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将棋の第9期叡王戦五番勝負第5局で8冠の藤井聡太さんが、伊藤七段に破れ、叡王の座を奪われる事になりました。同級生の伊藤七段とは小学校の将棋大会からの縁であり、同世代がこうして活躍しているというのは素晴らしいですね。

上の世代ですが、羽生さんの世代も羽生世代として長く将棋界に君臨しました。羽生さん自身が、自分の手の元を隠さずにオープンにする性格だったのもあるのかもしれませんが、世代として切磋琢磨することで非常に強い世代となり、そしてそれが将棋界の中心となって将棋界を盛り上げていきました。

藤井さんや伊藤さんもまた、先に出たのは藤井さんの方かもしれませんが、どちらも将棋界のトップで活躍する事により、より将棋界も盛り上がりますし、若い世代もこの世代を目標として棋力をあげていくことによって、さらにこの後、将棋界が活性化していくのではないかと期待してしまいますね。

さて、藤井さんにとってはタイトル戦の防衛失敗は今回が初めてとなります。

というよりも、ここまで防衛戦で失敗がないというのがそもそも異常なんですよね。

羽生さんが初めて七冠になった時も非常に騒がれましたが、翌年には防衛に失敗し、七冠を維持する事は出来ませんでした。

将棋ではありませんが、囲碁の井山裕太本因坊もまた囲碁・将棋界で初の2度の7冠、全タイトル達成という偉業を成し遂げましたが、やはりその後それを維持することは出来ませんでした。

そもそもタイトル戦に出てくる様な対戦相手はその競技で最強クラスの選手であり、そこに対して常に勝ち続けるということは簡単な事ではありません。

それも、いづれかのタイトルのうち一つなどであれば、まだしも、全タイトル、1年間ずっとそれに対して結果を出し続けるというのはよほどの棋力さでもない限り難しいです。

特に全タイトル保持者ともなれば、最も目指される立場、研究される立場であるわけです。

そう考えると、ここまで藤井さんがタイトルをとってから一度も防衛失敗がなかったと言う事の方が異常だったのかなと思います。

また、今回のタイトル戦は5回戦であったと言うのも、一つポイントだったかもしれません。

もちろん流れなど様々な要因はあるかと思いますが、棋力などが勝率に収束するとすれば、1回きりの勝負より、3回戦の方が、5回戦よりは7回戦の方がより棋力が高い方が勝ち易いという単純に言えると思います。

藤井さんは、年間の一般棋戦のグランドスラムも達成していますが、一般棋戦は一発勝負のため、その後、破れ、話題にもなりました。短期戦であればあるほど、そこは偶発的要因なども含め読み切れない要因が増えるというわけです。

ただ、藤井さんにとってすれば、この段階で1冠陥落したというのはよかったのではないかと思います。

理由はいくつかありますが、一つ目は、やはり8冠を維持する事への重圧です。

8冠を維持して当たり前、それを維持する事が期待されるというのは棋士として非常にプレッシャーになるところがあるかと思います。その重圧を受け続けるというのはやはり大変なものですし、これほどの結果を出しているとはいえ、まだ21歳です。

昔の成人の基準で言えば、成人になってまだ1年目であり、大学に行けばまだ大学生、社会人にもなっていない年齢です。

いくら大人びていてそういう世界で勝負しているとはいえ、これまでのキャリアでの樹圧と言うのは凄まじいものがあったかと思いますので、一旦それが少しでも軽くなるというのであれば、それは今後の藤井さんにとってはむしろプラスになると思います。

常に今後8冠を維持し続けなければならないとなれば、そのプレッシャーは常に増大しつづけ、押しかかるものになるのでその辺り心が軽くなる瞬間が早くにあったというのは大きかったのではないでしょうか?

他の理由を挙げるとすれば、将棋への関心、モチベーションというのがあるかもしれません。

もし、8冠を維持し続ける、それが当たり前になるというのは、自分の棋力に応える相手がいない事を意味します。それは、より将棋の高みに行きたい人にとっては、非常に苦しい状況だと言えます。対戦相手があって成り立つ競技であるのでなおの事です。

羽生さんもまた、対戦相手がなめた手をすると怒る事があったと言われてますが、将棋に対してどん欲であればあるほど、相手にもそれをある程度求めるところはあるでしょう。

故にライバルがいる、棋力の高い、自分を破る相手がいると言うのはより高いモチベーションと、深みに行けるチャンスとも言えます。

そして、そういう相手が多くいればいるほど、将棋は活性化し、どんどん互いに強くなっていくわけです。

その意味で言えば、負ける相手の存在は大きいと思います。藤井さんにとっても、敗れた事はもちろん悔しい事だと思いますが、それと共自分の同級生が破った事に対して、嬉しさといえばいいのかわからないですが、モチベーションに繋がるところはあったのかなと思います。

前述の囲碁の井山さんについては、私の知り合いは井山さんは相手がいなくて、囲碁界の将来を危惧しているのではないかと感じる事があると言っていた事があります。

それが事実かどうかはわからないですが、そう感じさせるようでは他の棋士はダメですし、破る相手が出てくるというのは大きいと思います。

7冠になったからこそ、藤井さんは次のステップ、次の高みに行くのではないか、それとともに若い世代の躍進があるのではないかと今後に期待してしまう、叡王戦だったと言えるのではないでしょうか?

最後になりますが、伊藤匠7段、叡王戦タイトル獲得おめでとうございます!