セイバーメトリクスとアウトカウント | 米の心

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ドジャースに移籍した大谷選手の活躍がすごいですね。一方で、打率に対して得点圏打率が低いということでも話題になったりしました。

セイバーメトリクス的に言えば、そもそも打率というものへの信頼性というのはあまり高いものではありません。HRであれば文句なしなのですが、それがヒットになったかどうかといったところについては偶然の要素が高すぎるからです。そもそもその意味で言えばヒットの基準そのものが曖昧です。守備側のエラーなのか、ヒットなのかということはしばしば議論になります。

守備範囲が広い選手が追いついたもののセーフになった場合、エラーと記録されることがあり、エラーとするのはかわいそうである、守備が普通の選手ならそもそも追いついておらずヒットだったはずというわけです。ヒットかどうかの基準というのは、基本的には選手が触れることができたかどうかというのは一つ見られるところです。その意味で言えば、守備範囲がものすごく狭い選手がいた場合、他の選手なら余裕で取れたものも取れず、それがヒットと記録されることがあるというわけです。それがヒットとなるかどうかというのは様々な要素が加わってのことであり、そのあいまいなものについて評価というのは難しいというのがセイバーメトリクスの考え方です。

特に近年はその選手の打撃方向などがデータベース化されていますので、それに伴った守備シフトなどが敷かれることも多く、極端な守備シフトはMLBでは禁止となりましたが、それによってアウトセーフが変わってくるわけですから、打率が上がらないということを一概に評価を下げる要因とするのは難しいというわけです。

打率についての評価がセイバー的には高くなく、ある一定のところに落ち着くとしていることからすると、得点圏打率という考え方そのものへの評価というのがあまり高くないというのも当然かもしれません。

実際、得点圏打率というところについては、状況次第ですから、そこに対しての情報というのはあまりにも精度が悪いものともいうことができます。

得点圏打率が高いとチャンスに強い、勝負強い打者などと言われますが、そもそもプロの選手のような場合、得点圏だからメンタル的に気負うということがどれほどにあるのかは、特に打者の目線からすれば疑問です。

なぜならばMLBでは年間160試合も行うのであり、日本でも143試合シーズンを通して試合を行います。そしてその中で、得点圏のチャンスというのか数多く経験するわけです。それは自分の仕事の中にしばしば起こる現象であり、特別なシーンと呼ぶには難しいように思います。

もしこれがWBCの優勝をかかったシーンであったり、WSでの試合であれば、その緊張感というのはまた違ったものになるかもしれません。ペナントの優勝を決める試合などでもそれは特別かもしれません。しかしそのような本当に特別なシーンというのは年間に数回あるかどうかであり、それ以外の得点圏というのは1シーズンに何度もある打席の1回に過ぎないというわけです。

その意味で言えば、得点圏だから打率が良い悪いというのが一概に出てくるかというと怪しいと言われるのも当然かもしれません。

まぁ、長嶋さんのように明らかにショービジネスのスターであり、盛り上げることが大好きな性格の人からすれば、このシーンで打つのが盛り上がるなどといったことがあるので、一部の選手については得点圏の方がモチベーションが高いために、集中力が上がり、結果に伴うという可能性はなくはないと思います。ただ、年間何百打席もある人からすれば、そこまで気負うシーンでもないというのは確かなところです。

しかし、これはプロ野球選手のようなケースであればということでもあります。

その意味で言えば、セイバーメトリクス的な考え方というのは、そもそも統計的な思想であり、その統計的な思想はリーグ戦のような年間を通して多くの試合をする舞台でこそその近似値に近づくのであり、トーナメントのような短期決戦でも同様か言えば別かと思います。

得点圏の話にしても、リーグでは近似値に近づいていくかと思いますが、例えば、高校野球、甲子園の舞台となると同様のデータになるかは不明です。

1回でも負けたら終わりの試合であり、その中で優勝を目指す上での、チャンスの1打席というのは、非常にプレッシャーのかかる、通常のプレーが比較的難しい状況だからです。甲子園の場合はアルプスからの敵味方の応援がありそれによって精神的に飲み込まれやすいので余計そうかもしれません。

日本の高校野球などは、その意味では、トーナメントが中心であり、リーグが中心の大学やプロ野球とは異なる舞台でプレーをしているともいうことができます。

まぁ甲子園のような舞台は、特殊ですし、そもそも試合の試行回数が少なすぎるので、その選手が勝負強いのか弱いのかというところを証明するということはそもそも難しいともいうことができますが。

セイバーメトリクス的に言えばバントはあまり効果的ではないと言われたりします。

これは、野球が27個のアウトの中でどれだけ点を多く取るかを競うスポーツであるという考え方の元です。もっと言えば、3つストライクをとるまでであり、アウトカウントが3つになると攻撃にチャンスを失うスポーツです。

つまり、それだけ一つのアウトに対しての重さを重く見ているというのがセイバーメトリクスの考え方であり、MLBの主流の考え方です。

ノーアウト1塁から3回攻撃できるチャンスがあるのと、1アウト2塁から2回攻撃できるのどちらの方が得点の期待値が高いかというわけです。

もっと言えば、ストライクカウントがどうであるかということは投手有利不利に大きく影響を与えます。2ストライクを取られた後の打率が3割を超えている選手は多くはいません。それだけ追い込まれると投手有利になるというわけです。

よって、逆に言えば打者にとって有利なカウントは、ファーストストライクが入る前の状態ということが言えます。失敗しても後がありますし、積極的に行けるカウントです。

野球というのは守備側であるはずの、投手の投球によって試合が進行します。つまりは、試合の軸となるのは実は投手です。投手の三振能力というのが高くMLBで評価されるのもこのためです。打者は投手ほどに自由な立場になく、うち構えることしかできません。

それがゆえに、打者は自分にとってより有利な状況であることが自己の成績に繋がります。

結果、MLBではファーストストライクから積極的に振る選手が多くなります。そういう野球とはどういうスポーツであるかということを突き詰めた結果、ファーストストライクから打つ方が合理的というわけです。

これは合理主義な国であるアメリカと、合理的な思考をするアメリカ人らしい考えの行き先だと言えます。

一方で日本の場合は、社会を見てもそれほど合理的ではない人というのは多くいます。プロ野球のFAでの動向などをみても反応は合理性ではなく感情的なところを感じます。

野球に対しての姿勢についても合理性を追求するというスタンスではどちらかと言えば違い、NPBでの試合を見ても、ファーストストライクから積極的に打つというよりは、3ストライクになるまでで自分が打てる球を打つという傾向が強いと言えます。ファーストストライクが甘くても積極的に振りに行かないというシーンも割と見ますね。カウント的にはそれで不利に近づくにも関わらずです。

高校野球などのトーナメントがあるいは野球を始めた時のベースになっているというのもそこにはあるかもしれませんが、駆け引きなどを含めたその1打席の中でどう勝負をするかというところへの意識が高いとでもいうのでしょうか?

大谷選手は例外として、MLBに挑戦した日本人野手は、正直なところあまり結果が伴わなかった選手が多いです。先日横浜に戻った筒香選手などもそうですね。

この辺りは、野球というものへのそもそもの考え方、アプローチの違いというのもあるのかもしれません。

投手にしても、そもそもアメリカであればボール球を使っていくというよりはストライクをどんどんとっていくスタイルです。その方が投手にとって有利なカウントになるからです。投手も合理的にその方がいいと理解しているからです。

自然投手の組み立て方(まぁMLBではそもそも捕手がリードあまりしないですけど)そのものが違いその中で、ハイテンポにストライクをとっていくMLBのスタイルと、ボール球を活用しながら1アウトを慎重にとっていく日本の投手のスタイル、当然それに対応する打者に求められるものも変わってくるとなるわけです。

そうなると、日本的な野球の考え方ではなく、合理的な野球の考え方にフィットさせていくということがMLBで結果を出す上では重要なのではないでしょうか。日本と同様のやり方では、投手のレベルどうの以前に対応が十分ではないというわけです。

ただ、日本人も若い世代は非常に淡白で合理的な考え方ができる人も増えてきており、セイバーメトリクスなども徐々に浸透しつつあります。今までは通用しなかったMLBですが、今後は日本人野手についてもあるいは変わってっくる、MLBに対応できる人というのもあるいは出てくるかもしれませんね。