食用コオロギの会社が破産 | 米の心

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一時期話題になった食用コオロギですが、その後は苦しい状況になっているようです。食用コオロギで新規参入したクリケットファームが参入後3年で破産手続きを始めたということです。食用コオロギという特に虫を食する文化が根付いていない日本においてSDGsの一環としての期待もあったのかもしれませんが、一時的なトレンド以上の流れには持ち運ぶことができなかったのかもしれません。

わずか3年で破産といえば、やっぱ食用コオロギなんてという声も上がるかもしれませんが、このあたりはそれそのままに捉えるべきかどうかというところは単純ではないところもあります。

ベンチャー起業において5年後の生存率は15%、10年後は6%強と言われています。飲食業などにおいても、3年以内に7割が廃業するなどと言われたりします。

つまり、それだけ多くの企業が起業をし、倒産している中において、3年での破産手続きというのは決して珍しい話というわけではないとも言えます。

親会社を含めた3社での負債総額は2億4290万円とのことですが、この辺りも十分な投資に対応できなかったと判断するのであれば、何も珍しい話とは言えないのかもしれません。

ただ、一方で、食用コオロギというのは新たなことを試みるチャレンジでもあります。当然それだけリスクがあるというのはわかっていることであり、そのリスクをいかに乗り越えていくかということが焦点になるビジネスとも言えます。その点において、それが単純にできなかったということにもなります。

これは、正直なところを言えばクリケットファームがどうこうしようとして乗り越えた壁かといえば難しいかもしれません。

一部の地域や文化を除けば、日本は食虫の文化が浸透しているというわけではなく、また、非常に飽食の時代において、わざわざ食虫をといってもそのニーズは限定的だと言えます。

食虫の印象を変える努力というのは企業としてもしてきたのかもしれませんが、そもそも積極的に食虫をする選択肢にはそれは繋がらないからです。

ヴィーガンが動物を食べないなどといった選択をします。

さて、それは環境問題への意識なのかもしれませんし、宗教的なものもあるのかもしれません。

ただ、ヴィーガンが牛を食べないからといって、環境問題が改善することはあり得ません。そもそも、ヴィーガンの人関係なしに、牛を育て、出荷するからです。そのサイクルでビジネスが成り立っている以上、そこに対して一部の人が利用しないからといって大きな影響を与えることにはなりません。まぁビニール袋の有料化と同じようなものです。

もし大多数がヴィーガンである状況になれば、あるいは、そういう状況にならざる得ないのであればもちろんその状況は変化します。

しかし、現状としてはそうではありません。そうではない以上、農家は自分たちが生活するために家畜を育て、そして生業とします。もし、それで生活ができなくなり、生活する効率が悪くなった時に次の手を考えればいいのであって、今から積極的に転換する必要はないわけです。

生産者側からすれば、今の生業を変化させる必要がない上、それは、ある程度安定した色の供給というのは継続されることになります。もし、そこに恵方巻きの廃棄問題で毎年話題になるような問題があったとしても、その生産量を減らすという選択肢には基本的にはなり得ません。特に一次生産者においては、その後の生産でいかに扱われるかまでをコントロールできる話ではないからです。

よって、現状として大きな外部的な変化がない限りは、安定した供給というのは維持されるということになります。安定して、様々な食が提供される中で、では、馴染みのない食である虫食に移行しようとは通常ならないわけです。

そもそも、人の食に対する興味関心というのは、閉鎖的な傾向があるケースも少なくありません。これは生存を考えると当然であり、食べ慣れていないものを食べるということはそれだけリスクがあるというのは当たり前の話だからです。それによってもちろん、新たな食を開拓できるかもしれませんが、安全で安心のある食べ物を知っている上で、それが食べられる中で知りもしない、自分の体にどういう影響を与えるかもわからない冒険というのは、積極的にしない人が発生するというのは生物的にもおかしな話ではありません。

つまりは、食に対する関心というのは、小さい頃からの食文化によってある程度根付くところがあるとも言えます。

その意味でおいて、もしコオロギ食というのを根付かせるということをさせたいのであれば、仮に、借金し、赤字になろうとしても10年20年のスパンでは少なくとも見なければならなかったと思います。

では、一方で、コオロギに対してその設備投資なども含めて、それだけの時間をかけてビジネスとなるのをじっと我慢するべきかといえばその点もそうではないとも言えます。

それこそ、ノウハウがあるのであれば、一時的にそれをしなくても、昆虫食が一般化、流行になるような時がくれば、その時に参入すればいいだけという話にもなります。つまりは、長時間をかけて我慢してまでそこのファーストペンギンになる意味があるのかという話になるわけです。

それは、ある意味では合理的な選択と言えます。

ただ、一方で上述のように新たな食文化を定着させようとすればよほどのブームなどでもない限り、10年や20年のスパンが必要かと思います。その間それにチャレンジし続ける企業がないとなると、それは根付かなくなるということを意味します。つまりは、食虫を根付いた後に参入しようという試みは絵に描いた餅のようなものともいえるわけです。

将来的には食虫が必要なシーンというのはあるのかもしれません。あるいは、その時のために投資をして技術開発をする必要性もあるかもしれませんが、それは逆に言えば、今の段階では赤字であり、それを補填するすべがないということを意味します。

製薬なども研究費がかさみ赤字とも言われたりしますが、製薬であれば明らかに作る対象があり、そのための投資ですから、開発ができさえすれば、それは莫大な利益を生むともなります。それこそコロナのワクチンなどもその例でしょうか。

その意味では、虫などの研究を食ではなく、薬などの方向に目を向けるというのことは一つ可能性としてはあるかもしれません。ただ、それには目的となるものがあってこそとも言える話なので、その辺り簡単ではに点もあるかもしれません。

ただ、健康食品などといった分野を含めて考えると、一概にも言えないかもしれません。

飛行機の燃料を開発したことで話題にもなったユーグレナ、あの企業は完全栄養食としてのユーグレナ、ミドリムシに着目した企業であり、赤字であっても非常に株式銘柄としても人気の企業の一つです。

健康食品としてミドリムシを取り扱っていますが、ユーグレナという和名ではない表現にしたのも一つ受け入れられた理由かもしれませんし、不可能と言われていたことに挑戦したことも話題になったからかもしれません。

ただ、ユーグレナのようなエネルギーとしての可能性を見出すというようなアプローチであれば、食用コオロギではなくとも何かしらの虫が新たな可能性を示すことはありうるように思います。

その意味ではアプローチやタイミング様々なものがまずかったのかもしれませんね。

これは、時代の先取りをしたからなどという理解にするのは正しくありません。そもそもどの時代にどのようにうるべきかということをする話であり、時代の先を行くのであれば時代を追いつかせるためのことをできなければそれは意味をなさないからです。

ミドリムシ、ユーグレナは少なくとも、赤字であっても株主を説得させ、それを継続させるだけの営業努力をし、研究をし、飛行機の燃料まで開発したわけですから。

そう考えると、話題先行であり、そこからのアプローチが十分にできなかったという形で片付けられてしまうというのも仕方のないことなのかもしれませんね。