羽生結弦プロ転向へ | 米の心

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日本のフィギュア界の一線を引っ張り続けてきた羽生結弦選手ですが、19日記者会見を行い、現役を引退し、プロへの転向を決めました。会見の中で羽生選手もおっしゃっていますが現役をやめてプロになるというフィギュアのあり方というのはなんとも奇妙な感じもしますね。

日本のフィギュア界でいえば、今でこそ男子の方が黄金期を迎え、様々な選手が出てきていますが、その前は女子の方が勢いがあったように感じますね。荒川さんや浅尾さんなどの世代から次世代になる頃とともに、男子からは羽生選手などが台頭し、男子フィギュアの盛り上がりがすごくなったような印象があります。

羽生選手の前の男子フィギュアの中心的選手であった高橋選手が五輪にダンスでの出場を挑戦していたりとこちらはこちらで継続しているというのは素晴らしいですが、羽生選手の年齢を考えるとすでにフィギュア界では大ベテランとも言える年齢であり、むしろよく北京五輪まで現役を続けていたという印象も強いですね。

体操では内村選手がずっと中心であった時代もありましたが、体操やフィギュアのような世界でこれほどまでに長い間トッププレイヤーとして活躍した選手というのはかつてはそれほどいなかったように思います。羽生選手の憧れの選手の一人であったプルシェンコ選手も非常に長くプレーをしていた選手ですが、相次ぐ怪我の中で全盛期の実力を発揮できない中、あれほどまでにフィギュアを続けていた選手も稀有といえるのではないでしょうか。

羽生選手が四大陸選手権などに出場し始めたのが11年ですから、10年以上に及びこのスポーツにおけるトップであり続けたということになります。

冒頭で、引退してプロになるというところへの奇妙さというのも記述したりしますが、これはフィギュアというのは採点スポーツであり、そして競技としてのフィギュアとアイススケートでは求められるものが違うというのも大きいかもしれません。

例えば、今の時代はジャンプ全盛期となっています。女子でも4回転を飛ぶことが求められるようになり、男子では4回転はもはや当たり前の時代となりました。フィギュアの採点基準というのは時代によって大きく異なるところもあります。

例えば、浅田真央選手が現役時代であった頃は、難易度の高いジャンプをするよりも、綺麗に飛べることへの評価がより高い時代だったように感じます。その中で五輪で優勝したのがライサチェクであり、金妍児だったわけですね。

その後。競技者として考えた場合、より難易度の高いものを求めるべきという風潮もあり、より4回転などへの配点が高くなり、それを飛ぶのが当たり前のようになってきたわけです。まぁ、最近はまた難易度の高いジャンプへの配点が高すぎて、そこばかりが注目されるのでいいのかという意見も聞こえてきたりしますから、時代に合わせてということなのでしょう。

時代によってどこに配点が高いかというのは違うわけですが、競技者は自分の実力に合わせた中で、その配点が最大限になるようにプログラムを構成するようになります。つまり、これは競技のためのフィギュア、滑りでしかないというわけです。

この点において、プロになってアイススケートをするというのは大きく異なるとも言えます。採点のためのスケートではなくなるからです。

採点のためのフィギュアは、ジャンプなどの構成にも制限があります。例えば、連続ジャンプにしても1回のプログラムで何回までなどと決まり上がるわけです。

エキシビジョンでかつて、プルシェンコはエキシビジョンということともありそのようなルールを度外視した連続ジャンプを繰り返したことがあります。それは高度な技術が必要であり、見るものを魅了させるものでした。ある意味では、高い技術と見るものを楽しませるということの両立を示したスケートであったように思います。

アイススケートとしてプログラムを組むというのは、その意味では自由に設定をすることができます。自分の限界による挑戦するようなプログラムを組むことも可能ですし、フィギュアの取り決めでできなかったよりファンを楽しませるようなプレーもできるようになるということになります。

会見の中でプロのアスリートとしての強い意志のようなものを感じられましたが、このあたり、フィギュアをやめて競技者でなくなるから、だからといってスポーツのアスリートして挑戦すべきものに挑戦しなくなるわけではないというところへの意識があったのかなというように感じます。

個人的に言えば、採点競技というのはその採点基準が時代によって異なったり、その感じ方は人それぞれであるがゆえに競技としては曖昧さというのがどこかあるように感じていますが、これがアスリートであり、そして表現者としてプロとしてやる何かになれば、それはもはやエンターテイメントスポーツとしてファンにどう楽しませるかという話になるがゆえにその点はしっくりような気もします。

会見からは強いプロとしての意識と、そしてプロになる前からずっとある羽生結弦としての他人に見られる立場でのあるべき姿が今の、今からの羽生選手に影響を与えているんだろうなというところでした。

海外からも人気のある選手であったため、解説など含めてこれから様々な働き方というのもあるかと思います。

その中でこれからの羽生選手として素晴らしい活躍をお祈りいたします。今まで素晴らしいスケートをありがとうございました。