下鴨本通りを国際会議場に向かわれる両陛下のお車。
ズームインさせて頂くと少しお顔が拝見できます。
実はこれまでに両陛下のお車に遭遇したのは3回。
その内の二度までは夜でしたが、いずれも室内灯が灯っていました。
両陛下は国民の注視から一瞬もお逃げにならないのです。
帰国も真じかに迫った6月23日。
じーちゃんが数日前に食べた鰯の寿司を又食べたいというのでデパ地下へ。
私の足はいつでも自転車。京都市内ならどこへでも行く。
川端通りの並木を抜けて御池通りまで。市役所前の駐輪場を利用するつもり。
デパ地下に鰯の寿司はなかった。珍しい寿司だから無理もない。
代わりに京都の夏に欠かせない鱧の寿司を買う。その他サンダル千円也。
市役所前まで戻るときちんと施錠して置いたはずの自転車が無い。
駐輪ブースが満杯だったので、脇に並べて停めたのだ。
さては駐輪禁止の排除に持っていかれたのか?しかしその他の自転車は無事だ。
よくよく見たがやっぱり無い。無い!盗られた!
ショックで呆然とする。他の誰かが欲しがるような自転車ではさらさらない。
古いママチャリだが、私にとっては良く働いてくれる大切な足。
買い物にも看護にもつきあってくれた。無茶な荷物運搬もやり遂げてくれた。
何より、帰国できない私のささやかな気晴らし、楽しみでいてくれたのだ。
地団太踏んでも無いものは無いので、バスに乗って帰る事に。
御池からバスは北へと向かうのだが、丸太町過ぎた当たりからいつもと様子が違う。
警察官の姿がやたらと多い。特に交差点の周辺には集中している。
そうか、天皇皇后両陛下が京都をご訪問中だった!
下鴨本通りと北大路通りの交差点付近でバスを降りるとそこにも警官が。
「あのー。両陛下がお通りになるのですか?」「そうですよー。もうすぐです。」
「何時頃でしょうか?」「5時50分位の予定ですねー。」
よしっ!私だって日本国民の端くれだ。お見送りせねばなるものか!
とにかくまずは住処に帰って自転車を盗られた事をじーちゃんに報告せねば。
「そうか。まあ、お前が悪いんやない、盗ったもんが悪い、盗難届けを出しなさい。」
「あんね、鰯のお寿司は無かった。鱧があったから買ってきたよ。」
「鱧?わしは鱧の寿司は嫌いじゃ。」 くっそー。可愛くないぞ、じーちゃん。
近くの交番でも届けが出せると聞いたので行く事にした。
両陛下がお通りになるまであと20分。お見送りが先だな。
じーちゃんを誘ったが、「わしゃしんどいわい。お前行って来い。」と言う。
両陛下をお見送りするのに「しんどい」とは。まあ病人と思って許す事にしよう。
自転車を盗まれた悲しさで素早く行動できない。気が焦るので小走りに。
元の交差点に戻ると、あ、あの警官。「お帰りなさーい!」
実に気さくだが、そんな軽いノリでちゃんと警備はできるのか?
「もうすぐ来ますよー。」 (来ます、じゃない、お出でになる、だろが。)
「ここはよく見える所ですからねー。」 (見える、じゃない、拝見できる、だって!)
そうこうするうちにわらわらと人だかりができて来た。いい事だ。しかし......。
「写真とってもええの?」「美智子さんは後ろの席のどっちに座ってるんやろ?」
「初めて見るわあ、まだ来いへんのん?」 誰一人として敬語を使う者がいない。
酷いじゃないですか、私心を捨てて国民に奉仕しておられる両陛下に。
私ならやってられないぞ。
「はい、来ましたよー。あの赤い旗を立てた車ですよー。」 まだ言うか!
来ました、じゃない、お出でになりました! 車、じゃない、お車!
人の集まりのある場所はゆっくりとお通りになられるとは言え、まさしく一瞬。
皇后陛下は沿道の群集側にお席を占めておられた。これも人々への御配慮と拝察。
ご体調がお悪いと聞いたのに、たゆまぬ笑顔とお手振り。涙が出る。
両陛下、たとえ海外に暮らそうともけこは日本国のパスポートは決して手放しません!
感動を噛みしめながら、再び徒歩で家に帰る。
「どや、見てきたか?」 ほら、ここにもいた!見てきたじゃないだろが。拝見、じゃ!
「ほんで、盗難届けはどないした?出してきたんか?」
.........忘れました。

