“スジ“違い、あれこれ

ある日の水戸市郊外の整形外科医院、診察室。

  先生「鈴木さん(仮名)、足首をだいぶ強く捻ったようですね。」
  鈴木「先生、スジだっぺ?」
  先生「スジって?つまり、筋肉というか靱帯というか・・・・」
  鈴木「やっぱりスジだったのか、良かった。」
  先生「うん、良かったね。」

やや意味不明の会話

スジと言うと、漢字では筋と書きますが、皆さんは何を連想するでしょうか。
例えば、「首スジ」という言葉は良く聞きますが、首の周りの筋肉のことでしょうか、それとも足首を捻ったとき、スジを伸ばしたとも言うようですが、靱帯のことでしょうか?整形外科では正式にスジと呼ぶ部分は体にはありません。ここではスジで連想される言葉を3つ挙げて説明しますので、外来でのお互いのやりとりの理解に役立てましょう。

医学書を引くと次のように難しい言葉が並びます。

筋肉(きんにく)  筋線維が束状に集まり、紡錘系になっている運動器官
靱帯(じんたい)   骨と骨を連結する強い線維の束性の結合組織で連結されるもの。
腱(けん)  筋肉の両端の強い結合組織線維束

それでは、足首を例に挙げて、簡単に図で説明してみましょう。
皆さんご存知のアキレス腱は図1のようにふくらはぎの腓腹筋の端につながり、かかとの骨(踵骨)にくっついています。
同じ足首を図2のように筋肉を取り除いた状態で見ると、内側、外側に上下の骨を支え、ぐらつかないように保持している靱帯があります。つまり、筋肉と骨の間に腱があり、骨と骨の間に靱帯があるということです





小松整形外科医院のブログ 小松整形外科医院のブログ




私も出来るだけわかりやすく説明したいので、できれば外来でも、筋肉、靱帯、腱と分けて説明するのが“スジ”と思います。
患者さん自身が“スジ”と決めて安心してしまわずに、結果は同じでもご自分の状態を少しでも正しく理解して頂ければと思います。

ちなみに、やくざ屋さんの「筋が通らねぇ~」という場合の“スジ”は仁義ということになりますが、
実際に小指を落とすときに切断するのは腱になります。筋を通すときに切られる腱は、やはり“スジ”ではないのでしょうね



「カルテ開示について」


 近年、情報公開はすべての分野で求められており、医療関係も例外ではありません。

 アンケ-トでは70%以上の人がカルテ開示の法制化に賛成しております。

 しかし、日本医師会では診療情報の提供は医者と患者間の信頼関係を築くためのものであり、法的な義務や権利関係にはなじまないと考えています。

 医師会に対するアンケ-トでは地方の医師の半分以上はカルテの公開に賛成していますが、都会の医師では賛成の医師は2割にも満たないとの報告もあります。

 カルテ開示に反対の人の意見の多くは、訴訟のために利用されるのではないかと不安を訴えます。

 実際一部のマスコミや市民団体など明らかに医師を悪者にしようとしているのではないかと思われる行動が見られます。

 私はカルテの開示は賛成ですが、日本の保険医療の実際がもっとマスコミはもちろんのこと、国民全員に理解されなければ混乱が起こるのではないかと思っています。

 一例を挙げると、日本の保険診療では予防的な医療はできません。
 皆さんはピロリ菌という名前を聞いた事が有ると思います。
 ピロリ菌は胃潰瘍や胃ガンの発生の原因であることが最近の研究で分かりました。
 胃の中からピロリ菌をなくすためには抗生物質を投与する必要が有ります。しかし抗生物質の能書きにはピロリ菌に使って良いと書いてありません。

 患者さんの事を考えて抗生物質を投与しますと適用外のため、保険請求をしても保険から治療費が支払われませんので病院では赤字になってしまいます。
 そのためにやむなく抗生物質の使用が認められている病名をつけることが有ります。
 これを一般に保険病名と言っています。

 カルテ開示が法制化されて医師の説明もなく提供されたならば患者さんが不安を抱くのではないでしょうか

 先日にもある新聞に総合病院が診療報酬を不正請求したという記事が大きく載っていました。
 腰部脊柱管狭窄症の患者さんにホルモン剤を投与して、保険適用の対象となる病名をつけて不正請求をしたということです。
 この病気は治療が困難で手術が必要な場合が多いのですが、この薬が効果が有ることが分かっています。
 患者さんが苦しんでいればなんとかしたいと思うのが医者ではないかと思います。

 まったく薬を出さないで保険請求をしたならば不正請求とされても仕方ありませんが、実際に効果があるものを使って非難されるのは、規則違反をしている事と分かっていても何となく納得できない所があります。
 不正請求ではなくて不適当請求などともう少し穏やかな言い方は無いでしょうか。

 現在の薬の値段や効能を決定する制度を根本的に変えることが必要だと思います。

 またいつも医師会が非難される薬価差益の問題も日本医師会は薬価差益はなくすべきだと主張しています。
 現在、薬価差益を残すように言っているのは薬メ-カ-です。厚生省とグルになっていると思います。

 少し脱線してしまいましたが、日本医師会では診療情報の提供に関する指針を制定し、平成12年1月1日から施行することになりました。
 これは法制化には反対しましたが医師会が自主的にカルテ開示を行うということです。
 自分の診療記録を見たい人は各医療機関に申し込めばコピ-や要約書などを手に入れることができます。

 医療機関がカルテ開示に応じない場合には県医師会にある診療に関する相談窓口に相談を依頼すれば対応することになっています。

 カルテの開示によって患者さんと医者の間に本当の信頼関係が生まれ、病気に対してお互いに協力して対処していくことができることを念じています。
この病気になると寝たきりになってしまうと心配して外来を受診される方が多いので、今回は骨粗鬆症についてお話しします。

 骨は皆さんがご存じのように、とても硬く丈夫なものですが、実は、骨を溶かしカルシウムを血液中に放出する破骨細胞と、カルシウムを骨に取り込んで骨を作っている骨芽細胞の両方のバランスの上に一定の強度を保っているのです。いろいろな原因でこのバランスが崩れ、骨を溶かす破骨細胞の働きの方が強くなると骨が弱くなり骨粗鬆症になります。

 原因としては、宇宙の無重力、筋力低下、運動不足などの機械的刺激の低下、ビタミンDの不足・活性低下、女性ホルモンの低下、カルシウムの摂取不足が主なものです。

 女性では閉経以後の女性ホルモンに低下により60歳頃から急激に骨量が減り、35歳頃の一番骨量が多い時期の70%以下になると骨折し易くなると言われています。

 但し、骨粗鬆症というのは、骨折さえ起こさなければ全く症状がありません。

 また、骨折を起こしても適切な治療を行い早期に離床を図れば、寝たきりになることはありません。皆さん、心配しすぎです。

ほとんどの整形外科医は、骨粗鬆症は正常な老化現象であって病気とは考えていません。骨量が年齢平均の20%以下の場合は治療を考えた方が良いと思います。

 戦後の食料事情が悪く苦労された、痩せた小さな老婦人が、今、骨粗鬆症で問題になっていますが、現在中年太りで体型を気にしていらっしゃる中年女性は、骨粗鬆症については、ほとんど心配ありません。

 逆に、あまり太ってもいないのに一生懸命ダイエットしている若い女性は、将来骨粗鬆症になる危険があります。

 骨粗鬆症の予防で最も大事なのは、35歳前後の骨量をいかに上げておくかということなのです。

 閉経後に骨量が少ないと言われたら、骨を丈夫にするには3つの原則があります。
 1つは運動です。
 骨に適度の機械的刺激を与える事が必要です。30分位散歩が出来れば理想的です。

 2つ目は日光浴です。
 紫外線に当たらないと骨を作るビタミンDが活性化されず働く形にならないにです。

 3つ目はカルシウムの摂取です。
 1日に600㎎必要と言われていますが実際には1200㎎取ったほうが良いという意見もあります。

 ただ、日本人が一番吸収が良いとされる牛乳でこれだけのカルシウムを摂ろうとするとコレステロ-ルが上がってしまいます。ヨ-グルト、小魚、ひじきなどの海草類、女性ホルモン様物質を含み骨粗鬆症に良い豆類などいろいろな食品をバランス良く食べるのが良いでしょう。

 検診で骨量が少ないと言われても、あまり心配しないで、のんびりお散歩したり、ひなたぼっこをしたり、美味しい物を食べたりしていれば大丈夫です。

 心配な時は、外来でお気軽にご相談下さい。