(「心の力学」は、目には見えない心のエネルギーを扱う新しい学問です。
はじめての方は、よかったら「はじめに」からご覧下さいませ)
前回の記事では「優劣から脱する」というテーマでお届けしましたが、ちょうど先日、同じようなテーマが感じられるネット記事を読みました。
それがこちらです。
『ほめられると泣く娘 “自己肯定感”を失わないよう試行錯誤した母の漫画が大反響 「世界中の人に知ってほしい」』
こちらの記事は、あるお母さんの子育て体験なのですが・・・漫画になっていますので、とてもわかりやすい内容になっています。
印象的なのは、2歳の娘さんに「上手だね」と褒めてあげると、なぜか泣いてしまうのですが・・・たとえば、具体的に「ここは〇〇がいいね」という感じで褒めてあげると、素直に受け入れてくれるのです。
お母さんがおっしゃるには、娘さんは「ほめられて素直に喜ぶよりも、できない部分ばかり気になって泣いてしまう」タイプなのだそうです。
このことを優劣の言葉で説明すれば・・・優越感を味わおうとしても、いずれ劣等感を味わうことの恐さが先にきて泣いてしまう・・・ということなのでしょうね。
そこでお母さんは、娘さんをほめる際に3つのルールを考えました。
(※括弧内は、娘さんの描いた絵に対するほめ言葉のようです)
①具体的にほめる
(この色が好きだよ。丁寧に塗っているね。元気な線だね。)
②過程をほめる
(集中して描けていたね。紙を上手に使えたね。)
③得意を見つけてほめる
(色を選ぶのが得意だね。片付けが得意だね。)
つまり、漠然と「上手だね」という言葉でほめるのではなく、よく観察してあげて、本人も理解できるようにほめてあげるということなのでしょう。
括弧内のほめ言葉を見てみると、お母さんがよく娘さんを観察しているのが感じられます。
こんな風に娘さんをよく観察するのは、エネルギーを必要とする部分もあると思いますが・・・でもその分、確かに娘さんのお心に響く言葉を届けられるのでしょうね。
このようなお母さんの姿勢には、娘さんへの愛と・・・深い思いやりが感じられます。
それでフと・・・このことは、大人である私達の心にも応用できるのだろうなぁと思いました。
つまり、前回お伝えした・・・「優も劣も気にしない」ために、このお母さんの視点が役に立つのではないかと思ったのです。
たとえば、何かを成し遂げようと試みたけれども、失敗してしまったような時・・・私達は、すぐにその結果を見て落ち込みがちです。
しかし、おそらくその試みの過程を通して、私達の心は成長しているはずなのです。
ですから、人生の中で何が起きても、きっとそこには肯定的な要素もあるのです。
また・・・私達は何かの結果や評価を得るためよりも・・・心を成長させるために生きているのではないかと、筆者は思っています。
現実で起きている多くのことを観察しても、自分自身の心の動きを観察しても、全ての人、全ての出来事は、まるで「心の成長」という着地点を探しているかのようであり・・・。
逆に「心の成長」を基礎として、一つ一つを見ていけば・・・不思議なほど、全てがスッと腑に落ちてくるのです。
たとえば、私達が失敗をした時に・・・まず、その結果にできるだけ捕らわれずに・・・その過程を通して心が何を学び、心のどの要素を育むことができたのかを考えると、落ち着きを取り戻せることが多いと思います。
努力の過程の中でストレスを感じながらも、それでも前向きな心を忘れずに前に進んでいたとしたら・・・それを経験した分、肯定的な魂の力が鍛えられ、一歩力強く成長しているはずです。
どうすべきかハッキリとわからない状況下で、自分なりに考え、試行錯誤をしていたのなら・・・その分、理性と思考能力が育まれているはずで・・・また、決断力や創造力も育まれていたかもしれません。
難しさを感じる人間関係の中で、できるだけ優しい心や謙虚な心を大切にしていたのなら・・・その分、優しさや謙虚さが育まれ・・・今後の人生の中でも、そのエネルギーは発揮されやすくなるはずです。
そして、もし自分なりに努力したという認識があれば・・・結果や周囲の評価に関わらず、その分、自分を認めてあげてよいのだと思います。
なぜなら、私達は結果と評価の中で生きている前に、生命としてこの世界に生きており・・・自分なりに努力したことは生命の営みで、立派に自分をこの世界で表現していたからです。
このように見た時に、自分なりに努力した経験自体が、心の成長にとって重要な要素であり・・・私達は、もっとその部分を具体的に認めてよいのだと思うのです。
「心」と一言で言っても、実にたくさんの要素と、たくさんの側面があります。
私達は、人生の中でさまざまな心の動きを経験しており、その中でもできるだけ前向きに、周囲と調和できるように、自分なりの努力を重ねています。
実は、このような努力自体が尊いことであり・・・少なくとも自分自身の中では、そのことについて肯定的に評価してあげてもよいのではないでしょうか。
そのことがきっと、優劣という狭い枠組みから心を脱却させることに繋がり・・・一歩ずつ、より柔軟で、広く、力強い心を育むことになっていくと思うのです。
人の本当の価値は、けして表面的な結果や、周囲の評価だけで計れるものではありません。
人類が心の仕組みに明確に気付いていない現状では、政治や科学に期待するよりも・・・まず私達自身が知恵を絞って、心の健康を保っていく必要があると思います。
そこでもう一つだけ、筆者が以前触れた知恵をご紹介しようと思います。
もう7年ほど前のことですが、岸英光さんの「ほめない子育て(小学館)」という本を、買って読んだことがあります。
この中では、子供を「ほめる」から「認める」ということへの変化を提案されていて、とてもわかりやすく、多くの会話例などを通して説明して下さっています。
「すごい」とか「えらい」という言葉よりも・・・子供の様子をよく観察して、具体的に自分がどう感じたのか・・・「助かった」「嬉しかった」などの言葉をかけることをおっしゃっていました。
つまり、優劣を喚起するような言葉ではなく・・・より心と心で、正直に、わかりやすく伝え合うコミュニケーションを提案されているわけです。
言葉のチョイスは違いますが、こちらも先にご紹介したお母さんと同じところに辿り着かれているように感じます。
優劣という狭い二極の枠組みから脱して・・・より繊細に、心に伝わりやすい方へ・・・また、よりあたたかく、思いやりがある方へと、歩んでいらっしゃるのでしょう。
筆者自身、特に今年に入って、このような方向性の大切さを改めて実感しています。
教育や社会の仕組みを変えようとすることよりも・・・もっとシンプルに、私達の心がもっと健康に、もっと幸せに生きられるような知恵が、今求められているように思います。
今後は筆者の視点だけではなく、時には他の方の知恵にも触れさせて頂きながら、「心の力学」をより豊かなものに育んでいけたらと思っています。
よかったら、これからもどうぞよろしくお願いします。
〇記事まとめ〇
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