心理カウンセラーの藤木ミホです。
「私、発達障害のグレーかもしれないんです」
ここ数年のカウンセリングにおいて、クライアントからこのような曖昧なお話を聴くことがあります。
発達障害という言葉がまだ一般化していない昔なら、「私抜けているんです」という表現を聴くことが多かったように思います。
具体的には、約束を忘れたり、やるべきことがポンと抜けたりする、などのエピソードをお聴きすることがよくありました。
この抜けた部分の原因が、病気や怪我の影響でない場合や発達障害等でない場合、ほとんどは心理的テーマが関連しています。
ですので、心理的テーマが解消すると、「抜けた部分がある」という問題も徐々に解消していきます。
しかし、「私抜けているんです」という方の中には、
・カウンセリングの予約を忘れる
・途中でカウンセリングのそもそもの目的を忘れる
・カウンセリングでせっかく得た気づきが抜け落ちる
などが起こり、なかなかカウンセリングが進まないことがあります。
さて、この点にカウンセラーはどのように対処すればいいのでしょうか？
そのためには、そもそも「抜ける」「忘れる」「抜け落ちる」という現象が起こる背景に何があるのかを知る必要があります。
今日のブログは、その参考になるマンガをご紹介します。
そのマンガとは、三宅乱丈さんの「pet」です。
画像は、ペットリマスターエディション版で、最初に世に出たコミックスに、150ページ加筆して出版されたものです。
このマンガのジャンルは、SFファンタジーで、催眠療法やイメージ療法をベースにしたような特殊能力を持つ人々が登場します。
その特殊能力は、人の心を操ったり、人の心を崩壊させるために使われます。
あらすじをマンガペディアより引用します。
人はその人を支える幸福な記憶・通称「ヤマ」と自らを苛む記憶・通称「タニ」を持ち、それはどちらを失っても人として生きていけないほど大切なものである。
明るく奔放な少年・ヒロキは他人の意識に入りこんで人の記憶を操作する能力を持っており、その力を使って親友で恩人でもある司と共に中国系マフィアの下で働いていた。
マンガでは、主人公らが、カウンセラーが使う催眠療法やイメージ療法と似たようなことをして、マフィアの指示する相手の記憶を操作したり、精神崩壊させたりします。
心理学やカウンセリング学んだ方は、「マンガみたいに一瞬で、記憶操作や精神崩壊はできないよ」とは思うかもしれません。
しかし、このマンガで描かれる記憶操作の手法はリアリティがあって、心の世界を学んぶカウンセラーほど引き込まれる物語かもしれません。
話を戻して、ここからは、このマンガと「私抜けているんです」という人との関連をお伝えします。
マンガの登場人物に、「抜けた人」が登場します。
その「抜けた人」は、昔は抜けた人ではなく、とても聡明な人だったことが描かれます。
実は、その「抜けた人」は、記憶操作によって、その人をその人にしている大切な記憶が封印されているのです。
つまり、大切な記憶が抜け落ちた状態になっているのです。
それを専門用語でいうと、「アイデンティティ」の一部である大切な記憶が抜け落ちているということです。
ちなみに、この「抜けた人」から抜け落ちているのは、「自分の愛の記憶」と「自分の家族の記憶」です。
その結果、仕事において抜けたことを繰り返し、「抜けた人」は、自分よりもずっと下の年齢の若者に侮られたりします。
実際、カウンセリングには、同じようなケースのクライアントが来られることがあります。
そして、「私抜けているんです」というようなお話をされます。
そのようなクライアントのカウンセリングが進まなくなった場合、「大切な記憶が抜け落ちているかもしれない」ということを覚えておいていただければと思います。
「記憶の回復」「抜け落ちた記憶の再認識」がクライアントの助けになることはよくあるのです。
今日ご紹介した、三宅乱丈さんの「pet」は、カウンセラーにいろいろなヒントをくれるマンガです。
アニメ化もされています。
マンガでもアニメでもどちらでもかまわないと思いますので、カウンセラーを目指す方に一度触れていただきたいと思います。
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