ある犬が
毎日のように散歩に行っていました
ボール遊びや、お手や、フリスビーもキャッチしました。
飼い主は喜んで美味しいご飯をくれたり
可愛がってくれました。
でも、ある日、猫を見て思いました。
「あんな風にコタツで寝てるだけで、
なんで人間にご飯がもらえるんだ」
こっちは、がんばって芸をしてやっともらってるのに、
猫が寝てるだけで
芸もしないのに可愛がられてるのを見るとイライラします。
なんにもしてないのに
なんで可愛がられるんだ。
お前も、ちゃんと芸をしろよ!!
あまりに
悔しいので
芸をやめてみた。
ボールも追いかけない
フリスビーも取らない
散歩も出かけない。
怪我もしてみた。
このエサ、イヤだと言ってみた。
それでも
飼い主は可愛がってくれた。
芸をしなくてもかわいがられるんだ。
ていうか
しないほうが、可愛がられるかもしれない。。。
と、やがて
芸のできない犬になってしまいました。
芸が嫌いな犬になってしまいました。
・・・たのしくないのです。
・・・・元気も出ないのです。
でも、芸をすると
なんか損してるみたいに思えるのです。
芸をしない猫に、イライラするのです。
たまに猫がじゃらされてジャンプしただけで
飼い主が大喜びするんです。
ふん! 俺にだってそのぐらいできるよ。
てか、おれの方がすごいよ!
・・・犬は、出来るんです。
・・・犬は、すごいんです。
でも、意地張ってやらなかった
できるところ見せたら、いいように使われる
できるところ見せたら、叩かれる
だから
猫のふりしてた。
でも、
楽しくない。
自分を抑えすぎて、
イライラしすぎて
病気になってしまいました。
もう、いい!
損してやる!!! と
ある日、思いっきり、ボールを追いかけた。
ある日、思いっきり、フリスビーキャッチした。
今まで拗ねてたぶん、
ちょっと恥ずかしかった。
また何か言われるんじゃないかって
ちょっと怖かった。
でも
飼い主は
変わらず可愛がってくれた。
ああ、やっぱ、ボール遊び楽しい
ああ、やっぱ、散歩さいこー
わたし、犬でよかったんだ。
目いっぱい遊んでよかったんだ。
ごめんね、能力高くてー(笑)
やっても
やらなくても
自分は嫌われないんだ。
だから
ついつい調子に乗って
期待に応えようとしてがんばりすぎちゃう。
でも、
ちょっとしんどかったら
これからは休んでいいんだ。
迷惑かけても
期待を裏切っても
自分の評判や価値は変わらないんだ。
ある猫が
犬を見て思いました。
「あんな風にお手ができると、にんげんに可愛がってもらえるんだ」
猫はがんばってがんばってお手を覚えました。
飼い主は、珍しがって動画を投稿したり、喜んでくれました。
やがてその猫に子供が生まれました。
「この子も、可愛がってもらうために、お手を教えなきゃ」
とうぜん、出来ません。
「なんで出来ないの」
「みんなみたいに」
「努力が足りないのよ」
子猫は頑張りました。
ちょっと手が上がるようになりました。
でも、お手よりも、
あの猫じゃらしが気になってしかたない。
でも、お母さん猫は許してくれない。
努力して努力して努力して
やがて子猫は、お手が出来るようになりました。
周りの、お手も出来ない猫をバカにします。
教えても出来ないのでイライラします。
お手も出来ないのに
可愛がられてる猫にイライラします。
もっと芸の出来る犬にもイライラします。
イライラしすぎて
病気になってしまいました。
ある日、お手をやめてみた。
ある日、何もせずに寝てることにした。
飼い主は
変わらず可愛がってくれた。
わたし、猫でよかったんだ。
芸、出来なくてよかったんだ。
ネコ二匹