■心の刑事(デカ)の物語 | 心屋仁之助オフィシャルブログ「心が風に、なる」Powered by Ameba

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見えないけれど、やさしく包んでくれる。
風のように、水のように、普通の幸せに気づける、
そんなお話をお届けしようと思います。

おはようございます。

朝風呂に入ってて思いついた物語(笑)


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「ひでぇことしやがるぜ・・・」


刑事は立ち尽くしていた。

そこにはあまりにも惨たらしい殺人現場があった。


横では、母親を殺された小さな子供が泣いていた。

刑事は、こどもに向かってこう言った。


「坊や、大丈夫だ。おじさんがきっと犯人を見つけてやるからな。

 おそらくだけど、目星はついてるんだ」


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時は流れ、20年。

当時の少年は、刑事になっていた。


当時の事件は、まだ解決していなかった。


「きっと母さんを殺した奴が、まだ生きているはずだ。


 きっと自分の手で捕まえてやる。目星はついてるんだ。

 きっとあの女だ。あの女だけは、許しちゃおかない。


 絶対に見つけて、ブタ箱にぶち込んでやる。

 たとえ法がさばかなくても、俺がさばいてやる」


そう意気込んだ若い刑事は、必死の捜索を始めた。


聞き込み、張り込み、被害者の人間関係や、

遺留品の数々を丹念に調べ上げた。


すると、やはり当時聞いた「目星の女」の姿が浮かび上がった。


「やっぱり、こいつに違いない・・・」


その女の周辺を、徹底的に調べ上げた。


女は、案の定、派手な生活を楽しみ、のうのうと暮らしていた。

また、口や態度が悪く、陰険で周囲にも疎まれていた。


「やっぱりこいつだ。こいつに違いない・・」


そしてある日、偶然にも駅のホームで女を見かけた。

女は電車を降りてどこかに向かうようだ。


刑事はあとをついていった。

女は、出会った人たちにあいさつをしたり、文句を言ったりしている。


それを見ていた刑事は、あの壮絶な犯行現場を思い出して

はらわたが煮えくりかえった。


そして、やってはいけないことを、ついやってしまった。


女を追いかけ、羽交い絞めにして、道路に叩きつけたのだ。


女「な、何するのよ!いきなり!!」


刑事「うるさい、おまえはこういう風にされる女なんだ」


女「なにを言ってるのよ!放しなさいよ!!」


刑事「いや、放さねえ。俺がこの数年間、どれだけおまえを憎み、

    どれだけ苦しんできたかわかるか!

    俺にはそうするだけの権利があるんだ!!!」


女「きゃー!助けてーーー!! 殺されるー!!!」


と、女が叫んだので、周囲の人たちが集まってきた。


そして、刑事に向かって言った。


町の人「おまえ!何やってるんだ!!早く手を放せ!!」


刑事「違うんです、僕は刑事なんです、その証拠に、ほら」


と、警察手帳を取り出そうとしましたが、非番の日だったので

手帳を持っていなかったのです。


町の人「こんなウソまでつきやがって、ふてぇ野郎だ、警察に連絡しろ!!」


刑事は、駆け付けた警察官に連行されてしまいました。

その間にも、女の周りにはたくさん人が寄ってきて


町の人「いやぁ、大変だったねぇ、大丈夫かい」


女「大丈夫じゃないわよ!なによあいつ!!死刑にされてしまえばいいのよ!」


と、自分の正当性を訴えていた。そして女は去って行った。


刑事は警察でやっと身分を認めてもらい、解放された。


刑事「くそう・・俺のほうが被害者なんだ。あいつに復讐する権利があるんだ。

    なのに・・・くそう!!」


その事件以来、刑事は女の身辺を探ることが難しくなってしまった。

それでも刑事は、粘り強く調査し、


とうとう逮捕状をとって女を確保することができた。


「お前がやったんだろうが!!!ネタは全部上がってるんだ!!!」


確かに、彼の集めた証拠は、この女が犯人であるといことを

十分実証するものだった。多少のこじつけはあったが・・・


女「だから!!!やってないって言ってるでしょ!!」


刑事「これだけ証拠が挙がってるんだ!いまさら何を言ってるんだ!!」


女「こんな、誰でも集められるし、こじつけみたいなこと止めてよ!!」


先輩刑事「もう、逃がしてやれよ・・・」


刑事「いや!駄目です!!こんなやつを許したら・・・許したら・・・」


先輩刑事「気持ちはわかるよ、でも、こうしたからって何になるんだ」


刑事「何を甘いこと言ってるんですか!!

    こういう奴は、きちんと法律で裁かれないといけないんです!!」


先輩刑事「そうか・・・ おまえはそれで幸せなんだな」


刑事「もちろんです!僕は、間違ったことが嫌いです!正義は勝つんです!」



そして、自白は無かったものの、状況証拠と、決め手になったのは

被害者の爪に残されていた、容疑者の皮膚の一部だった。


その皮膚をDNA鑑定に掛けたところ、見事に一致した。


それが決定打となり、女は実刑判決で服役することになった。



その間も女は、一貫して無罪を訴え続けていたが、

判決が覆ることはなかった。


刑事は、少し安心した。


「これで仇は打てたよ、母さん。」


女を追いかけている、その間に、刑事は結婚し、そして子供も産まれていた。


しかし、女を追いかけ、逮捕することだけが目的だった彼は、

休日も返上して追いかけて、また、その熱心さが認められて

警察内での立場もよくなっていた。


しかし、それとは逆に家庭は崩壊していった。


女は逮捕した。これで恨みは晴らすことができ・・・・  てない!

これで、刑期が終われば、また女はぬくぬくと暮らすのではないか!


ある日そう思った彼は、いてもたってもいられなくなった。

そしてまた、心の中は恨みの炎でいっぱいになった。


母さんはあんなに苦しんだのに、僕もあんなにつらかったのに

どうしてあいつだけが・・・!!!


さらに、彼に追い打ちをかけるような出来事が起こった。


そう、最新のDNA鑑定の結果、この女のものではないことが判明したのです!!


刑事は、打ちひしがれた。


そして、今度は刑事のほうが、行きすぎ捜査、自白強要など

訴えられる側になってしまったのです。


「・・・・・・・・・・・俺の30年は、いったいなんだったんだ・・・・・。


 あいつが犯人じゃなかったなんて・・・


 あの証拠は・・なんだったんだ・・  

 思い込みだったって言うのか・・・?!


そして、楽しいことも、家族との時間も犠牲にして・・・」


ふと、先輩刑事の言葉が思い出された


「そうか・・・ おまえはそれで幸せなんだな」



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さて、この物語が言いたいことは

何だったと思いますか。


実は、人生がうまくいっていない人の多くは

この刑事と同じことをやっているのです。



さて、明日は「もうひとつの 心の刑事(デカ)の物語」

をお届けします。(ほんまに書けるか?)


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