東京医科大の女性差別入試、主要国最悪の女性差別オンパレードの日本vs男女平等が成長の原動力の北欧 | すくらむ

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 東京医科大学による女性差別入試の発覚に続き、安倍政権による女性活躍進政策の補助金8,026万円が東京医科大学に交付されていたことが判明しました。2017年のジェンダーギャップ指数(男女格差指数)の世界順位を114位と過去最悪にした安倍政権。女性活躍推進と言いながら、じつは女性差別推進につながるものであったことがよく分かる事例でもあります。

 「NewSphere」によると「東京医大の女子減点、海外メディアも大々的に報道 国内の反発にも注目」して、英テレグラフ紙は「女性は子供を産めと言われ、産まなければ『非生産的』と揶揄される。その一方で、子供を産むかもしれないという理由で減点される。いったい女はどうすればいいの?」というソーシャルメディア上のコメントを掲載しているとのことです。あらためて、日本社会における女性差別のいくつかの現状を、OECDなどの国際比較データで見ておきたいと思います。

 医師でタレントの西川史子氏が8月5日放送のTBS「サンデージャポン」で、東京医科大の女子受験者一律減点は「当たり前。女性と男性の比率は考えないと」などと発言したとのことです。西川史子氏は女性差別入試をしてでも男性の比率を上げることが「当たり前」と言っているわけですが、世界の状況を見てみましょう。

 下のグラフは、OECDの直近データから作った32カ国の「医師の女性割合」です。各国2016年のデータで、日本の医師の女性割合は21.0%と最下位です。日本の21.0%というのはトップのラトビア74.2%の3分の1にも満たない異常に低い割合です。こんなに「医師の女性割合」が低いわけですから、不正入試をしてでも男性の比率を上げることが「当たり前」などという言説がいかにデタラメであるかがよく分かると思います。




 東京医科大が受け取っていた8,026万円の正式名称は「女性研究者研究活動支援事業」の補助金です。下のグラフは内閣府「男女共同参画白書」2017年版に掲載されている「研究者に占める女性の割合の国際比較」です。日本は15.3%と断トツで最下位です。

 



 下のグラフはUNESCOの直近データから作った「高等教育の男女在学率」です。日本以外の国はいまや男性より女性の方が在学率が高いのです。しかも日本の女性の在学率は60.9%とアメリカの99.6%より40ポイント近くも低いのです。

 




 下のグラフはOECDの直近データから作った「高等教育の教員の女性割合」です。日本は26.8%と断トツの最下位で、フィンランド51.1%の半分程度しかありません。

 




 このような、医師・研究者・高等教育における世界でも異常なレベルの女性差別はどこから来るものなのでしょうか? その一つの要因として、下のグラフにあるように、立法府の「国会議員の女性割合」がOECD加盟国で唯一1割にも満たない現状があると思います。

 




 加えて、下のグラフにあるように国の行政を担う「国家公務員の女性割合」も日本は17.6%と断トツで最下位で、トップのポーランド69.3%のわずか4分の1しかありません。

 




 そして、下の2つのグラフにあるように、「国家公務員の上級管理職・中間管理職の女性割合」はトップの国と比較するとそれぞれ17分の1、22分の1と少な過ぎるにもほどがあるような異常な数字に日本はなっているのです。


 


 この異常な女性差別は、なにも国家公務員に限ったものではなく、下のグラフにあるように「上場企業の取締役の女性割合」も同様で、日本経団連の役員に女性がいない理由がよく分かるデータです。



 そして三権分立の最後、司法においても同様であることが下のグラフで分かります。



 前回の記事「東京医科大学の女性差別入試は日本社会を劣化させ日本経済も衰退させるもの」でも指摘していますが、女性差別は日本経済も衰退させるものです。この点について、OECDは今年5月14日に「北欧諸国における男女平等の経済的利益」という報告書を発表して、北欧諸国のデンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンにおける男女平等政策が経済成長に大きく貢献したことを指摘しています。以下この報告書のサマリーの一部です。

 

 デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンは、自宅・職場・公的な生活において近代的な家族政策とジェンダー平等政策を積極的に推進しています。ジェンダー平等の促進は、保健衛生、社会保障、教育、労働市場、全般的な公共政策の主流になり、雇用主組織、労働組合、大多数の労働者を対象とする団体協約においても推進されています。

 北欧諸国の政策アプローチは、すべての男女が働き続けることができる環境づくりを目指すことにあります。子育てや介護などケアが必要な際に性差が浮かび上がることを念頭に置いて、北欧の政策は、父親と母親の両方が労働市場に全面的に参加できるように、包括的な公立保育、公立児童教育と介護サービスを確立した上で継続的支援を大規模な公共セクターが提供することを目指しています。

 北欧諸国は、子育て、高齢者のケアの拡充に加えて、母親と父親のための育児休暇の取得を進め、労働組合は、労働者がより柔軟で家族にやさしい労働時間を選ぶことができるようにしました。

 北欧諸国は、他のOECD諸国よりもジェンダー平等への道を進み、1960年代後半以降、女性の雇用率は、すでに雇用率が高かったフィンランドを除いて、20~25ポイント上昇。今ではアイスランドの83.4%などOECD平均の59.4%を大幅に上回っています。

 その結果、北欧諸国における雇用のジェンダー格差は平均で約4%と最も低く(OECD平均は12%)、母親は他のOECD諸国よりもフルタイム雇用に就いています。

 こうした過去50年間に北欧諸国が導入したジェンダー平等政策により、1人当たりGDPの伸び率は10%から20%向上しました。

OECD5月14日報告書「北欧諸国における男女平等の経済的利益」



 以上がOECDの報告書のサマリーの一部ですが、この報告書を発表する際、アンヘル・グリアOECD事務総長は、「男女平等は基本的人権であり、包括的な成長の原動力である」と述べています。それに比べて、子育てや介護を「伝統的家族」に押しつけ女性差別を推進する安倍政権は成長そのものを自ら損ねているとしか言いようがありません。(井上伸)