霞が関不夜城で1万人が過労死の危険感じ働く、モリカケ問題等で残業・心の病・転職者が急増 | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 きょう(5月9日)午後7時から午後11時まで「霞が関公務員相談ダイヤル」を実施します。



 私たちが実施した「霞が関2017年残業実態アンケート結果」によると、過労死の危険ラインとされる残業月80時間以上が6.5%(2,210人)、とりわけ過労死の危険が高い残業月100時間以上が3.1%(1,054人)となっています。そして、3割(約1万人)が過労死の危険を感じたことがあると回答しています。



 残業の要因としては、「業務量が多いため」が57.0%(前年59.5%)と依然として最も高く、次いで「国会対応のため」30.3%(前年29.4%)、「人員配置が不適切なため」27.1%(前年29.1%)、「不合理な仕事の進め方のため」18.3%(前年18.5%)が続いています。業務量に見合う職員が十分に配置されていないことが、霞が関の長時間労働の最も大きな要因であることは明らかです。

 このような過酷な超過勤務に対して、手当の支給実態をみると「全額支給されている」との回答は49.7%(前年49.3%)となっています。これを支給割合別にみると「20%未満」が2.7%、「40%未満」が4.6%、「60%未満」が10.1%となっており、「不払いがある」者は、全体の41.2%(前年42.4%)となっています。

 下記は霞が関の残業でまかなっている人員を計算したもので、年間約8千人分の仕事を残業でこなしていることになります。霞が関の国家公務員数(管理職を除く一般職)は3万4千人ですが、残業をなくすには約8千人の職員増が必要になるということです。

 きょうは「霞が関公務員相談ダイヤル」のほか、各政党要請行動や、「霞が関不夜城ウォッチング」を取り組みます。下の表は2015年6月に実施した「霞が関不夜城ウォッチング」です。午前1時半で厚生労働省は6割が点灯していましたが、さて「働き方改革一括法案」を現在進めている厚労省のきょうの実態はどうでしょうか?

 それから、きょうの取り組みにあわせて、昨日「霞が関で働く国家公務員座談会」を行いましたので以下紹介します。

〈霞が関で働く国家公務員座談会〉
霞が関不夜城で1万人が過労死の危険感じ働く
モリカケ問題等で一層の長時間残業、メンタル疾患、転職者が急増
(A省Aさん、B省Bさん、C省Cさん)


 A もともと霞が関の長時間労働はひどかったのですが、モリカケ問題が起こってからさらに拍車がかかっていますね。

 B そうですね。国会対応でいちばん大変な部署では月300時間の残業があり、ほとんど家に帰れない状況が続いています。

 C 国会対応に加えて、森友公文書改ざんの余波で、対処療法的な文書管理に関する会議や実務がやたらと増えてそれでも忙殺されています。もちろん文書管理はきちんと行われるべきですが、場当たり的に現場にだけしわ寄せが来る典型のような実態もありますね。

 A 森友問題にかかわって、きょう(8日)麻生財務大臣が公文書改ざん問題について「どの組織だってありうる。個人の問題だ。個人の資質によるところが大きかった。組織全体でやっている感じはない」と述べたのはとんでもないですね。

 B 自殺した財務省の近畿財務局職員Aさんは安倍政権・財務省による森友公文書改ざんと自分への責任転嫁に絶望したわけですが、死人に口なしのような扱いであまりにひどい発言だと思います。

 C 近畿財務局職員Aさんはノンキャリ職員です。ノンキャリ職員が「個人」で勝手に公文書改ざんをするわけがありません。

 A 麻生財務大臣のノンキャリ職員にだけ責任を押し付けるやる方は、国家公務員全体のメンタルにダメージがあると思います。

 B 「もうやってられない!」という感じが霞が関の現場で広がっていますね。

 C やっぱり、内閣人事局ができて幹部職員の人事を首相官邸が握ってから、キャリア官僚が自分の省庁の上よりも首相官邸を向いて仕事をするようになりましたね。それで、無理難題を押し付けられたキャリア官僚が、首相官邸のウケをよくするためにそれを自分の部下になかばパワハラ的なやり方で、強制的にあれをやれ、これもやれ、と押し付けて、結果、各省庁の大事な仕事より首相官邸のウケがいい仕事の方が増えていっています。

 A 昔からクラッシャー上司のキャリア官僚が点在していて、それで部下はつぶされて若手キャリア官僚も辞めていくことは多かったのですが、最近は、クラッシャー上司のキャリア官僚が内閣人事局によって首相官邸に向けた仕事をするようになって、従来よりもさらに首相官邸の強権を持ったクラッシャー上司のキャリア官僚が幅をきかせている感じです。まさに「首相案件」という権力をバックにしてクラッシャー上司も一層危険な存在になっていますね。

 B その首相官邸のウケがいい仕事をやらされてそれでなんらか報われるのならまだいいのですが、逆に近畿財務局職員Aさんのように、組織的にやらないとできないはずの公文書改ざんの責任を「個人」の責任にされるのではたまったものではありません。

 C 首相官邸のために組織的にやってきた仕事なのに、現場のノンキャリ職員の「個人」に責任を押し付けるし、佐川前国税庁長官のようにキャリア官僚のトップでさえ切り捨てられているので、ノンキャリ職員も、キャリア官僚も転職がやたらと増えていますね。

 A そうですね。とりわけ若手を中心に、地方自治体や民間企業に転職するケースが増えています。

 B モリカケ問題等の国会対応でどんどん仕事量が増えているのもそうなのですが、森友のように公文書改ざんまではいかないのだけど、少しでも首相官邸にウケがいいようにいろいろな調整をして国会答弁等をつくる仕事が増えていて、それに消耗してますますメンタル疾患が増えているように思います。

 C 首相官邸のウケがいいかどうかがキャリア官僚の評価基準のようになっているので、基本的にうまく立ち回る人間が出世することになり、結果として政策能力などが劣化していっているようにも思いますね。

 A 首相官邸のウケ狙いになると他律性がさらに増してしまっているのと、その仕事の結果の尻ぬぐいでさらに仕事量が増えることになる悪循環に陥っているので相当メンタル疾患が増えています。

 B その上、例年の定員削減で職場の余裕がなくなっているので、メンタル不調になった職員をたとえば少しは余裕がある部署で働いてもらうということもできなくなっています。

 C 昔はメンタル疾患の職員が出ると、「あいつが休むせいでまた忙しくなる」みたいな殺伐とした職場の雰囲気と悪循環があった感じだったのですが、最近は自分自身もいっぱいいっぱいなので、自分もいつどうなるかわからないという不安感が職場全体に広がる受け止めの方が多くなっている感じでどんどん悪い方にいっているようにも思います。

 A 霞が関に民間企業や地方自治体から出向して来る人がいるのですが、多くが1年足らずでメンタル疾患になっています。それで、霞が関から民間企業や地方自治体に次の人を出してくれと要望すると、そんな職場に人を出せませんよと民間企業に国が断られるようなケースも増えています。「働き方改革」をすすめる政府自体がこんな「ブラック」な働き方になっているわけですからひどいものです。

 B 派遣労働者も霞が関で働いているのですが、その部署にはクラッシャー上司がいて2週間で派遣労働者が職場に出て来れなくなりました。そんな職場にうちの派遣会社から人を出せませんと派遣会社からも人を派遣することを断られるような霞が関の職場にもなっています。

 C 「働き方改革」と言えば、政府や維新などは「高プロで残業代ゼロにすると残業代が払われないから残業そのものがなくなる」などと言っていますが、霞が関はすでに「残業代ゼロ」が横行しています。「残業代ゼロ」が横行しているのに「霞が関不夜城」で過労死の危険を感じたことがあるのが3割(約1万人)という実態を見れば、政府や維新などが言っている「高プロで残業がなくなる」は大ウソであることがわかりますね。

 A それと、「働き方改革」でテレワークの導入なども言われていますけど、結局、緊急の国会対応などで何日ぶりかでやっと帰れた家でも仕事をすることになってしまっているケースも増えていますね。

 B それから実態ですが、家に帰れないのが当たり前のような雰囲気になっていて、国会対応が翌日に必要でもう時間がないので職場に泊まって、朝着替えてに帰って戻って来るとか、ひどいときだと、月曜に来て週に2回しか家に帰れないとか、仮眠室があるわけじゃないので、自分の机の上で仮眠を取らざるを得ない職員が増えています。

 C 毎月150時間の残業をしていて、残業代は3万円しか出ないので、時給にすると200円という職員も多くいます。東京の最低賃金は958円ですから約5分の1という「ブラック企業」も真っ青な実態が霞が関にあるということです。

 A 毎月1~2件、自殺と自殺未遂の報告が流れてくるのですが、月100時間を超える残業の上に残業代は4割程度しか支給されていませんから、抜本的に職員を増やす必要があると思います。

 B 政府は「ゆう活」とか「プレミアムフライデー」とか、長時間労働を何ら改善することのない適当な目新しいかけ声をかけて「働き方改革」をやってる感を出したいようですが、政府のお膝元の霞が関では今も3割(約1万人)が過労死の危険を感じて懸命に働いている問題に対して、政府にはきちんと実効ある長時間労働規制と抜本的な職員増を行って欲しいと思います。

 

(井上伸)