それから、OECDは、各国の物価水準も考慮に入れた購買力平価で換算した実質最低賃金と、フルタイム労働者の平均賃金に対する最低賃金の比率という2つのデータも公表しています。
物価水準を考慮に入れても日本の最低賃金はオーストラリアの6割程度しかない
まず、各国の物価水準も考慮に入れた購買力平価で換算した実質最低賃金を見ると、直近の2013年の数字で、日本は6.7米ドルで、オーストラリアは10.5米ドルです。物価水準を考慮に入れてもオーストラリアは日本の1.56倍の最低賃金額になっているのです。(※日本はオーストラリアの最低賃金の6割程度という水準になります)
フルタイム労働者の平均賃金に対する最低賃金の比率は、直近の2013年の数字で、日本は39%、オーストラリアは54%です。ここでもオーストラリアの最低賃金は1.38倍になっています。
日本の子どもを持つ女性の賃金はオーストラリアの半分以下
ひとり親が働いている世帯の貧困率はオーストラリアの3.5倍も高い日本
そして、上のグラフはこの世界最悪の賃金差別によって生み出されている惨状をあらわすものです。ひとり親が働いている世帯の貧困率で、日本の50.9%は、オーストラリアの14.4%の3.5倍にもなっているのです。
以上、見て来たように、オーストラリアの物価水準がうんぬんなどと言う方には、オーストラリアより日本の富裕層が2倍も多く存在する一方で、ひとり親が働いている世帯の貧困率が3.5倍もオーストラリアより高いという、「貧困大国日本」の問題をまずもって考えていただきたいと思います。こうした深刻な貧困をもたらしている日本の最低賃金の異常な低さが日本の「反成長戦略」になっているのですから。
(国公一般執行委員 井上伸)