首都圏青年ユニオンが洋麺屋五右衛門による非正規約5,200名への変形労働時間制を廃止させる | すくらむ

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 ※首都圏青年ユニオンの声明と、毎日新聞の報道を紹介します。


洋麺屋五右衛門などを経営する日本レストランシステム株式会社が
約5,200名のアルバイト・パートへの変形労働時間制の適用を
廃止決定したことに関する声明


                         2011年2月28日
                          首都圏青年ユニオン


 2011年2月15日、日本レストランシステムは首都圏青年ユニオンの申し入れに対して、2011年5月16日より、日本レストランシステムで働くすべてのアルバイト・パート従業員約5,200名への変形労働時間制の適用を廃止を決定したと回答した。この回答を、首都圏青年ユニオンは歓迎するものである。


 この回答は、2010年8月24日に東京高等裁判所での控訴審において、日本レストランシステム株式会社と洋麺屋五右衛門元従業員・須藤武史(首都圏青年ユニオン組合員)との間で成立した和解を受けて、2010年9月14日に首都圏青年ユニオンが日本レストランシステム株式会社に対して申し入れた書面に対する回答である。


 2008年3月26日から始まった日本レストランシステム株式会社との団体交渉において、首都圏青年ユニオンは、変形労働時間制の違法な運用実態について指摘し、その是正を求めてきた。また、アルバイト・パートなどに対して変形労働時間制を適用することをやめるように要求してきた。しかしながら、日本レストランシステム株式会社は、その指摘を無視して違法な運用を継続させた。そのため、首都圏青年ユニオンは、洋麺屋五右衛門元従業員・須藤武史(首都圏青年ユニオン組合員)を原告として裁判闘争に踏み切った。最終的に、東京高等裁判所での控訴審和解では、第一審判決において認定されたとおり、日本レストランシステムが全面的に変形労働時間制の運用の違法性、労働基準法違反の実態を認めたものであり、われわれは全面的な勝利をおさめた。


 日本レストランシステムとの全面的な勝利和解の成立後、われわれは「変形労働時間制」の問題を問うシンポジウムを開催するなど、本来、労働基準法の例外的な時間管理制度である変形労働時間制が無限定に広がっていることについて警鐘を鳴らしてきた。


 その後、首都圏青年ユニオンは、日本レストランシステム株式会社に対して、違法な運用をおこなってきた変形労働時間制の廃止を求める申し入れをおこなった。そして、今回、日本レストランシステム株式会社で働くアルバイト・パート5,200名全員に対しての変形労働時間制の廃止が決定された。


 そもそも、変形労働時間制は、労働時間がシフトの変動などにより変動する、時給で働くアルバイト従業員などについての運用はなされるべきではない。このようなことが許されるならば、事実上、変形労働時間制を悪用して、時間外労働賃金の未払いを違法ではないものと偽装することが可能となってしまう。これは、低賃金で働くアルバイト・パート従業員に支払われるべき賃金を少なくすることになるだけではなく、長時間労働を助長することにもなりかねない。


 厚生労働省の発表によると、2010年時点で変形労働時間制を採用している企業数割合は55.5%(前年54.2%)となっており、変形労働時間制の適用労働者数割合は49.8%(前年49.5%)にもなっている。ほんとうに変形労働時間制を導入する必要があるような事業種別なのかどうかも不明な企業・事業所が変形労働時間制を導入していることが予想される。実は、膨大な数の労働者が変形労働時間制の下で長時間労働を強いられ、違法な賃金未払いが発生している可能性がある。


 そして、変形労働時間制の下で最大の被害を被っているのは、ワーキング・プアとも呼ばれる多くのパート労働者・アルバイト労働者である。ただでさえ、低賃金で働かされているパート労働者・アルバイト労働者が変形労働時間制を口実に時間外賃金を少なくしか払われないとするならば、それは貧困をさらに拡大するものであり断じて許されるべきものではない。


 私たちは、変形労働時間制の違法な運用をおこなう企業に対して徹底して許さずにたたかうことを表明し、また、変形労働時間制をパート従業員・
アルバイト従業員に対して安易に適用する企業に対しても、その運用の廃止を求めるためにたたかうことを表明して活動をすすめてきた。今回の日本レストランシステムでのアルバイト・パートに対する変形労働時間制の廃止決定は、首都圏青年ユニオンの大きな成果である。すでに、首都圏青年ユニオンは2006年11月に、牛丼チェーン「すき家」を経営するゼンショーでもアルバイト・パート従業員約1万名に対して変形労働時間制の適用を廃止させるという成果を勝ち取っている。今回の日本レストランシステムにおけるアルバイト・パート従業員への変形労働時間制の廃止は変形労働時間制をめぐる賃金制度の是正の二つ目の大きな成果である。


 私たちは、これからも企業のあらゆる違法行為を許さず徹底してたたかうことをあらためてここに表明する。特に、変形労働時間制を違法運用する企業、そしてアルバイト・パート従業員に安易に変形労働時間制を運用する企業に対しては、その廃止を求めてたたかうこともあらためて表明する。また、変形労働時間制については、事実上の不当な賃金不払いを大量に発生させている実態があり、加えて、長時間労働を促進するおそれもあることから、労働基準法の改正を求めてたたかうことをあわせて表明するものである。


 洋麺屋五右衛門:「変形労働時間制」を廃止
 (毎日新聞 2011年2月28日 19時31分配信)


 スパゲティ専門店の洋麺屋五右衛門などを全国展開する飲食大手「日本レストランシステム」(東京都渋谷区)が、一定期間の平均が法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)にとどまっていれば繁閑に応じてその割り振りに偏りがあってもよいとする労働基準法に基づく「変形労働時間制」について、5月からアルバイトへの適用を廃止することを決めた。廃止を求めてきた元アルバイト男性(29)らが28日、明らかにした。


 同制度は、就業規則に明示した期間内での労働時間の変形を認めたもの。同社は就業規則に期間を明示していなかった上、時給制のアルバイトにも変形労働時間制を適用し、深夜や休日の割増賃金を支払っていなかった。男性が未払い分の支払いを求めて東京地裁に提訴して勝訴。東京高裁で和解が成立した。


 同社人事部は「裁判や組合との話し合いなどから総合的に判断し、廃止を決めた」として、全国400店舗で変形労働時間制を中止することを明らかにした。男性が所属する首都圏青年ユニオンの河添誠書記長は「違法な運用は横行しているのではないか。廃止は画期的で、法改正も求めていきたい」としている。【市川明代】