中央最低賃金審議会目安答申 - 時給15円増・平均728円、2ケタ増も生活改善にはほど遠い | すくらむ

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 ※「国民春闘共闘ニュース」(第50号2010年8月9日付)を紹介します。


 中央最賃審、2010年度の最賃改定目安額を答申
 時給15円増、平均728円
 2ケタ増も生活改善にはほど遠くとりくみの強化を


 8月6日、中央最低賃金審議会は、2010年度の地域別最低賃金改定の目安額を厚生労働大臣に答申しました。都道府県ごとに時給10円から30円の引上げ額を示しましたが、賃金底上げによる生活の改善にはほど遠い水準です。


 今年の地域別最賃の審議をめぐっては、6月の雇用戦略対話での最低賃金引上げの合意(2020年までのできるだけ早期に全国最賃(時給)800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、全国平均1,000円をめざす)後、初の目安答申であり、ワーキングプア問題の解消、生活底上げによる景気回復をはかるために、大幅な引上げが求められていたところです。


 中央最賃審議会の目安小委員会で、労働者側委員は、日本経済が回復へと向かうためにも「個人消費の落ち込みに歯止めをかけ、消費拡大へ反転させる必要がある」「雇用戦略対話の.意に掲げられた目標の達成に向け、…本年度をスタートとして3年程度で目標を実現することが必要」「生活保護との乖離がある地域においては、一気に解消すること」などを求めました。


 これに対し、使用者側委員は、雇用戦略対話の.意は経済成長率や中小企業の生産性向上、中小企業への支援策の具体化などの前提条件があり、このいずれも未達成かつ達成困難であること、こうした状況下での最賃引上げは「企業の存続をおびやかすだけでなく、地域の雇用情勢の更なる悪化を招くおそれがある」と主張し、引上げに最後まで抵抗しました。結局、異例の6回にわたる審議を通じても両者の溝は埋まらず、公益委員による見解をもって目安答申となりました。


 答申内容は、都道府県別のABCD各ランクとも10円の引上げを基本としつつ、最賃が生活保護水準を下回っていると審議会が認定した12都道府県については乖離幅の解消を優先して10円から30円の引上げを示し、あわせて乖離幅の大きい地方については乖離解消年限を1年延長するなどといったものです。


 これらを含めた引上げとなった場合、引上げ額は全国平均で15円、最賃全国平均(加重平均)は728円となります。


 運動がもたらした一定の成果を確信に


 全労連・国民春闘共闘はこの間、5次にわたる最賃行動を実施し、生活水準の底上げで庶民の懐を温め、消費購買力を増やすことで経済を好循環へと転換し、景気の回復をはかることを求めてとりくみを強化してきました。


 各単産・地方でも、創意を凝らしたさまざまな運動にとりくみ、世論の喚起に貢献してきました。各地方で最低生計費調査を実施し、生計費には都市部と地方の間に顕著な差はないこと、時給換算すればどこでも1,200~1,300円台の金額が必要であることなどを事実をもって示し、最賃の大幅引上げと全国一律最賃制の確立を求めてとりくんできました。地方最賃審議会で意見陳述をおこない、委員に直接労働者の声を届けた地方も.なからずありました。


 今回の答申は、私たちが求める「最賃時給1,000円以上」にはほど遠い水準です。しかし、ともかくも「最賃全国平均1,000円をめざす」ことを政労使が.意せざるを得なかったこと(6月・雇用戦略対話)、使用者側の頑強な抵抗にもかかわらず、今回の改定目安額がDランクの地方を含めて2ケタに乗せ、中小企業の賃金改定状況がマイナスを示す中での2ケタ改定であることなどは、この間の単産・地方の奮闘がもたらした一定の成果です。


 各地方では、目安額を上回る大幅な最賃引上げを求めて、地方審議会へのとりくみを強化しているところです。


※別添(参考)


 目安を乗り越え、生活できる最賃の実現を
  - 中央最低賃金審議会目安答申にあたっての談話


      2010年8月6日 全国労働組合総連合 事務局長 小田川義和


 本日、中央最低賃金審議会は厚生労働大臣に対し、2010年度地域別最低賃金額改定の目安を答申した。その内容は、A、B、C、D各ランクとも10円の引き上げを基本としつつ、最低賃金が生活保護水準を下回っていると審議会が認定した都道府県については乖離幅の解消を優先し、乖離額の大きい地方については、解消年限を1年延長するなどのものであった。


 この結果、今年度の最低賃金改定の目安額は、全国加重平均で15円となった。時間額表示となった02年以降で初めてDランク地方の目安額を二桁に乗せ、上位ランクと同額として地域格差の拡大を抑制したことや、中小企業の賃金改定状況がマイナスを示す中での二桁改定であることなどは、単産、地方組織のこの間の奮闘を一定反映したものである。


 しかし同時に、ワーキングプアの解消や均等待遇への接近、消費購買力向上による景気回復を求める立場からの「時給1000円」要求には程遠く、現行最低賃金法の限界が、あらためて明らかになったと言わざるを得ない。


 今年の審議は、雇用戦略対話の「できる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、全国平均1000円を目指す」との政労使合意ををふまえた諮問を受けて開始され、労働者側は3年で全国800円の実現を主張した。これに対し、使用者側はその合意を骨抜きにしようと、中小企業への景気回復の波及の遅れや中小企業支援策が具体化されていないこと、合意の前提とされる「名目3%、実質2%を上回る経済成長」が未達成であることなどを繰り返し、引き上げの目安答申に頑強に抵抗した。そのため、審議会は異例の長期戦となり、最終的には公益委員が先述の内容を提案して答申が取りまとめられた。


 使用者側委員の主張は、内閣府の経済成長率予測が実質2.6%と合意の前提を上回る水準を展望し、かつ、名目成長率が実質を下回るデフレ経済の克服を課題としている中、中小企業が景気回復を実感できるようにするためには、雇用と所得の改善、とりわけ最低賃金の引き上げが必要であるという視点が欠落している。また、2007年時点で働く貧困層が641万人にも上るという厚生労働省研究班の調査結果や、政府のナショナルミニマム研究会で明らかにされた生活保護基準未満の低所得世帯数が相当数に上るという申告な事態を軽視している。


 最低賃金を抑制し続けることは、内需に依存する中小零細企業の経営をさらに困難にし、貧困と格差をより深刻化させ、社会不安を拡げることになる。使用者には、企業の社会的責任の自覚を強く求めたい。


 全労連は、今年の最低賃金引き上げの取り組みを、春闘時の最賃請願署名と国会議員要請行動からスタートさせ、最賃を政治課題に押し上げるべく奮闘した。中央・地方で数次にわたり、公務・民間一体の統一行動を配置し、単産・地方組織での署名や街頭宣伝、最低賃金審議会への意見書提出を行った。また、「最賃生活体験」、「生活保護を活用した最低生計費算定法の検討」、東北、静岡、九州における「最低生計費試算」など、生計費原則に焦点をあてた取り組みも展開した。


 加盟各組織においては、今回の目安が私たちの運動を一定反映するものであることを確信に、来週からスタートする地方最低賃金審議会に向けた要求行動などに取り組み、目安の不十分さを突破して地域別最賃の大幅引き上げを勝ち取るよう、山場の奮闘を呼びかける。


 また、政府に対しては、目安答申にも記されているとおり、低すぎる今の最低賃金の大幅引き上げを円滑に達成するための中小企業支援や、政府発注の事業・業務委託・調達における賃金底上げに向けた必要な措置を講ずるよう、要求する。

                                        以上