霞が関の国家公務員2千人が過労死の危険、残業代不払い34億円 - 政権交代で5人に1人が残業増加 | すくらむ

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 昨日、霞国公(霞が関国家公務員労働組合共闘会議)が、「中央府省に働く国家公務員の第18回残業実態アンケートの結果について」を発表しました。プレスリリースと、参考資料を紹介します。


 【※各マスコミも報道してくれていますが、なかでも「読売新聞」は本日付朝刊の1面トップ記事で、霞が関の残業トップは労働行政所管の厚生労働省で、「残業月70時間/省庁で断トツ/政務三役への対応大変」として、次のように報道してくれていますので以下紹介しておきます。


 省庁の労働組合でつくる「霞が関国家公務員労働組合共闘会議」は28日、霞が関で働く国家公務員の昨年度の残業実態についてアンケート調査したところ、厚生労働省が1人当たり月平均70時間を超え、最長だったと発表した。


 政権交代後に残業時間が増えたとの回答も、厚労省が目立った。


 調査は今年3月、同会議に参加する22組合のうち、厚労省や経済産業省など10組合を対象に行い、組合員3,056人から回答を得た。


 平均残業時間は前年度比3.5時間減の月32.8時間。前年度より増えたのは厚労省で、旧労働省(73.4時間)系、旧厚生省(71.7時間)系で1、2位。3位の経産省(45.9時間)を大きく上回った。


 政権交代が残業に影響したか、という問いには、「変わらない」(72.3%)が最多。ただ、厚労省の組合員は52.9%が「増えた」と答え、理由として政務三役への対応を挙げた人が75.6%に上った。


 自由記述欄には「大臣の指示が細かくて、多すぎる」「職員は駒ではなく人だ」などの意見が寄せられたという。


 同会議は「労働行政を所管する省庁で、長時間労働が横行している」と批判している。(読売新聞の記事はここまで)】



 プレスリリース
 霞国公2010年残業実態アンケート結果について


              2010年7月28日
              霞が関国家公務員労働組合共闘会議(霞国公)


 霞国公は、本年3月、霞が関に所在する立法、司法、行政で働く中央府省の22の労働組合(組織人員:約1万人)を対象に、東京国公と共同で「残業実態アンケート」を実施しました。このアンケートは1985年(昭和60年)から実施しており、今回で18回目になります。当時、深夜におよぶ予算業務、国会対応業務、資料作り等が各省で横行し、そのため霞が関「不夜城」と呼ばれる慢性的な長時間残業が続いていました。この異常な慢性的長時間残業を解決したいとの思いからアンケートを始めました。


 これまで、同アンケートを基に、国会業務の改善等を課題にした政党懇談会を行ったり、予算業務改善のため財務省交渉を重ねてきました。その結果、各政党からは「質問通告時間の早期化について国対委員長会議、議院運営委員会で課題として取り上げる」、財務省交渉では、「ヒアリングは原則勤務時間内とする。時間外となる場合は事前に調整する」等の回答を引き出しています。


 また、毎年人事院や総務省に対し超勤縮減を求める交渉を積み上げ、2006年(平成18年)8月には初めて内閣官房副長官が「政府一体となって超過勤務縮減対策を進めていく」との談話を公表。これを受け、2008年(平成20年)3月には内閣官房が「今後の超過勤務縮減の取組の進め方」をとりまとめ、関係府省に超過勤務縮減の取組指針を提示し、同年4月から超過勤務縮減の取組みが始まるなど一定の成果を勝ち取ってきています。


 これからも霞国公は、慢性的長時間残業解消や過労死・過労自殺を出させないための活動を続けていきます。


 ■今回の結果と特徴


 22組合中、アンケートに参加したのは10組合で、3,056人です。回収率は、組織人員の31%、霞が関で働く一般職員全体(約3万4,200人)の9%でした。


 1 霞が関の残業代の不払いは約34億円


 調査の結果、平均残業時間は32.8時間です。現在の超過勤務手当の予算は1カ月30時間とされています。したがって、その差の2.8時間が不払いとなる計算になります。事実、アンケート結果でも「不払いがある」と回答した者は61.1%にも上っています。


 民間では、残業手当の不払いは「犯罪」として取り扱われており、国自らが「犯罪」を犯していることになります。また、民間企業を指導している厚生労働省にも当然不払いがありますので、早急な解決が求められています。


〈試算〉
 2,940円(霞が関の超勤平均単価)×2.8時間×12月=98,780円(一人当たり)
 98,780円×34,200人=33億7,828万円≒33億8千万円


 2 2千人以上が過労死と隣り合わせ


 霞が関における残業の実態は依然として深刻です。過労死の危険ラインとされる月80時間を越える残業者は6.3%(191人)となりました。従って単純計算で霞が関全体の職員・組合員のうち、2,155人(34,200人の6.3%相当)が過労死危険ラインで働いていることになります。


 事実、80時間以上の残業があったと答えた者(6.3%、191人)のうち、22%が「現在過労死を感じている」、36.1%が「過去に過労死を感じたことがある」と答えており、過労死の危険ラインにあることがアンケートからもうかがい知ることができます。


 なお、回答者全体では「現在過労死を感じている」は3.9%(119人)、「過去に過労死を感じたことがある」は30.6%(936人)となっています。


 さらに、霞が関における残業は健全な家庭生活にも暗い影を落としています。慢性的な残業の結果、22時以降に帰宅する者が24.4%、家族とまったく夕食を共にできない者が21.8%となっており、霞が関における残業の実態は依然として深刻で、早急な対策が求められています。


 3 4割近い人が不健康状態にあり、3分の2弱が疲労や精神的ストレスを感じていると回答


 現在の健康状態を聴いてみると、「不調である」、「薬等服用している」、「通院加療中である」という不健康状態にあると回答した者が全体で37.1%にも上っています。


 また、疲労や精神的ストレスを感じていると回答した者は63.7%であり、その主な原因は「職場の人間関係」、「仕事の量が多すぎる」、「残業・休日出勤など長時間労働」の順に多くの回答が集中しています。


 さらに、「体の具合が悪くて休みたかったが休めなかったことがある」と回答した者が48.3%とほぼ半数近くを占めるなど健康破壊寸前の状態にあるため、この解消にむけた早急な対策が求められています。


 4 残業の最大原因は定員不足 責任ある当局・管理職の認識や姿勢、指導に問題あり


 残業の要因としては、「業務量が多い(定員不足)」(64.7%)が最も多く、次に多いのが「不合理な仕事の進め方」(20.6%)、「国会対応」(17.9%)となっています。


 一方、当局が進める残業改善施策に対する評価では、「全く効果がない」と回答した者が31.1%にも上り、その効果に疑問が抱かれています。また、政府・当局が設定した定時退庁日であるにもかかわらず、53.6%の者が「管理職の指導が十分でない」と答えるなど、当局・管理職の超過勤務縮減に対する認識や姿勢、指導に問題ありとの指摘がされています。


 5 政権交代による超勤の増減について、5人に1人が「増えた」と回答


 今回新たに「政権交代により超勤は増えたかどうか」を設問。結果、「増えた」との回答が20.9%(「減った」は3.9%)となり、その要因として、「政治主導の予算編成・事業仕分け(62.1%)」、「政権交代による業務見直し(49.3%)」、「政務三役対応(47.6%)」となっています。


 ■今後の運動=総務省・人事院に問題解決を迫っていきます!


 政府は、毎年10月の第1週に「超過勤務縮減キャンペーン」実施しています。このキャンペーンの実施所管官庁である総務省は各省を指導できる立場にあることから、全省庁一斉定時退庁の促進を図るなど、年間を通じ総務省・人事院などに対し引き続き超過勤務縮減の運動を強化していきます。



【参考資料】
 中央府省に働く国家公務員の第18回残業実態アンケートの結果について


 Ⅰ 中央府省の残業実態について


 1 月平均残業時間は32.8時間


 アンケート結果では、この1年間の月平均の時間外労働時間は32.8時間となっており、前年の36.3時間に比較して3.5時間の減少となっていますが依然として高水準です。


 これを年代別に見ますと、若年層ほど長時間残業となっていることがわかります。


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 2 月平均残業時間別の状況(月平均80時間以上が6.3%)


 月平均の残業時間別の状況をみますと、過労死の危険ライン(厚生労働省)とされる「80時間以上」が6.3%(前年8.9%)となっており、とりわけ過労死の危険が高い「100時間」以上が2.9%(前年4.5%)となっています。これらの人たちの年間総労働時間は3,000時間を超えています。国家公務員の労働時間は、法律で週38時間45分と定められています。しかし、法定外労働時間を労使間で協定する権利を奪われているため、無制限に時間外労働を強いられる結果となっています。


 人事院(労働基本権の代償機能を有する第三者機関)も、この残業実態を改善するため、時間外労働の上限の目安として年間360時間(月平均30時間)を目標に指針を定めていますが、この上限の目安時間を超えて残業をしている組合員等は41.0%(前年44.3%)にも上っています。


 3 月平均残業時間数の年別推移


 霞国公で実施したアンケートを基にして、2007年から2010年までの4年間について月平均残業時間の推移をみると、「80時間以上」及び「100時間以上」の割合はやや減少し、超長時間残業は低下傾向にあるものの、「20時間以上」は6割以上で推移しており、依然として長時間残業が解消されていないことを示しています。


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 4 勤務時間内で処理できない業務実態(8割が時間内に処理できない)


 業務処理の実態をみると、「勤務時間内に業務を処理できない」とする割合が81.4%(前年84.2%)となっています。処理できない業務は、ほとんどを残業で処理するとしており、残業時間にカウントされない「昼休み時間」や「持ち帰り」で処理するとの回答が合わせて8.3%もあります。


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 5 休日出勤の有無


 さらに業務実態を明らかにするために、休日出勤の有無をみると「休日出勤あり」は47.8%(前年54.5%)と改善はしているものの約半数にのぼり、年間20日、30日以上もの休日出勤を余儀なくされる者も少なからず存在しています。


 また、休日出勤に対する手当等の有無をみると、「手当も代休も無し」とする割合が33.1%(前年36.0%)となっています。


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 6 残業になる要因(定員不足が最大の理由)(※2つ選択)


 残業の要因をみると「業務量が多いため(定員不足)」が64.7%(前年64.1%)と最も高い割合を示し、次いで「不合理な仕事の進め方のため」20.6%(前年22.3%)、「国会対応のため」が17.9%(前年24.2%)、「職場のかえりづらい雰囲気のため」7.5%(前年8.9%)、「予算対応のため」が6.6%(前年6.9%)となっています。


 業務量に見合う職員が十分に配置されていないことが、霞が関の長時間労働の最も大きな要因となっていることが明らかとなっています。


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 残業になる要因の3番目になりましたが、国会対応も大きな要因の一つです。この国会対応残業を改善するには、質問を早く通告してもらうことが急務と言えます。

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 7 残業手当等の支給実態(6割超に残業手当の不払いが)


 以上のような過酷な残業に対して、残業手当の支給実態(無回答者を除く)をみると、「不払いがある」割合は61.1%(前年74.9%)となっています。残業実績に対する支給割合をみますと、「20%未満」が5.3%、「20%以上40%未満」が8.1%、「40%以上60%未満」が14.6%となっており、これらの「6割未満しか支払われていない」者は全体で28.1%(前年35.7%)となっています。残業手当の支給は、前年に比べ改善しておりますが、依然として不払い残業が多いのが実態です。


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 残業や休日出勤に対する手当の全額支給は当然のことであり、国家公務員給与法第25条では、「この法律の規定に違反して給与を支払い、若しくはその支払いを拒み、又はこれらの行為を故意に容認した者は、1年以下の懲役又は3万円以下の罰金に処する」とあります。このような違法状態は直ちに改められなければなりません。


 8 不払い残業代の試算
   霞が関全体で約34億円の不払い残業


 霞国公の試算では、霞が関に働く国家公務員の不払い残業代の総額は約34億円になります。
 また、残業を人事院の指針である年間360時間に納めるためには、約540人近くが不足しています。


 (1)試算の前提条件


 ① 霞が関の国家公務員数:34,200人


 ② 年間労働時間:2,141時間
  (年次休暇10日、夏期休暇3日、土日・祝祭日を除く)


 ③ 人事院指針及び本省残業予算(月30時間)を超える残業:1149 千時間
  (月30時間を超える分2.8時間×12カ月×34,200人)


 (2)試算


 ① 不払い残業代の総額
 本省平均残業単価2,940円×2.8時間×12カ月=98,780円(1人当たり)
 98,780円×34,200人=33億7,828万円≒33億78百万円


 ② 人員不足
 不払い残業を解消するためには
 1,149千時間÷2,141時間=537人の人員増が必要


 Ⅱ 中央府省の残業対策


 これらの残業に対して中央府省の各当局は、毎週水曜日の全省庁一斉定時退庁日の設定等を実施しています。本アンケートでは定時退庁日の状況について聞いています。


 1 定時退庁日の退庁状況


 政府が定めた定時退庁日に「定時退庁できない」とする者が19.5%(前年23.9%)と前年と同水準で、「時々できる」を含めると、54.4%(前年59.1%)が満足に定時退庁できない状況です。


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 2 管理職の指導の有無(指導はするが…)


 定時退庁日に対する管理職の指導の有無をみると、「全くない」が18.5%(前年19.5%)もあり、「時々ある」を含めると53.6%(前年56.6%)が十分な指導をしておらず、「定時退庁日の退庁状況」と似通った割合になっています。


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 3 残業改善施策の効果(施策の効果に疑問)


 残業改善施策に対する評価をみると、「効果があがっている」、「多少効果があがっている」とする割合は、それぞれ、9.9%(前年8.2%)、52.6%(前年51.6%)と前年と同水準で、「全く効果があがっていない」とする割合は、31.1%(前年35.1%)で多くの組合員が、当局が行う残業改善施策の効果に疑問を抱いています。


 これらの結果は、管理職等の残業改善に対する認識の欠如、定時退庁日の形骸化の現れとみることもできます。


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 Ⅲ 組合員等の家庭生活・健康等の状況


 上記のような残業によって、組合員等の家庭生活等の状況もまた厳しいものになっています。


 1 帰宅時間(1割近くが「午前様」)


 まず、帰宅時間をみるために日々の平均退庁時間をみますと、21時以降の割合は、24.4%(前年29.8%)、このうち23時以降は5.1%(前年8.2%)となっています。組合員等の通勤時間の平均はおよそ60分(本調査結果による)であることから組合員等の4分の1は帰宅時間が22時以降となることは明らかであり、5%の組合員等は毎日24時を過ぎての帰宅ということになります。


 また、1.0%(前年2.0%)が24時以降までの深夜残業を強いられています。


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 2 家族との夕食の回数
   30代、40代の3割超が家族と夕食できない


 平日の夕食を家族と一緒に1週間のうち何回とれるかについてみると、「毎日」は13.6%(前年11.9%)と低く、「全くない」とする割合が21.8%(前年25.6%)となっています。


 これは、日々の退庁時間が22時以降になる者が2割いることからみてもうなずけます。


 また、同居者がいる者について、育児をふくめ家庭生活の責任が大きいと思われる世代の30歳代、40歳代の3割以上が、平日の家族との夕食が「全くない」ということは、極めて大きな問題であると言えましょう。


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 3 年次休暇の取得日数(半数が10日以下)


 20日間ある年次休暇の取得日数について、1年間の平均取得日数をみると、11.2日(前年11.1日)となっており、約半数の48.1%の組合員等は「10日以下」となっています。とりわけ、年休取得日数「0~5日」が19.9%(前年22.1%)となっており、家庭生活や健康上からも見過せない問題です。組合員等の半数は、10日以上の年次休暇を放棄させられています。


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 4 健康状態(4割近い人が不健康状態)


 次に、現在の健康状態についてみると、「不調である」、「薬等服用している」、「通院加療中である」という不健康な状態に置かれている人が37.1%(前年41.3%)にも達しています。


 これを年齢別にみると、20歳代以下でも23.4%と高い割合になっており問題があります。30歳代以上では31.8%であり(この年代では「不調である」が急増)、40代では43.6%、50代では50.9%と年代が高くなるにつれ不健康状態の割合が増えており、全体として残業等による疲労の蓄積が増加していると考えられます。


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 5 過労死の危険性(3人に1人は過労死の危険を感じた)


 以上のような残業実態などから、過労死の危険を「過去に感じた」30.6%(前年31.0%)、「現在感じている」3.9%(前年4.1%)を合わせた割合が34.5%(前年35.1%)に達しています。


 危険性を「現在感じている」とする割合は3.9%あり、25人に1人以上が過労死と直面する過酷な労働環境に置かれていることを示しています。


 とくに、30歳代が4.1%、40歳代が4.6%と高く、当局・管理職の適切な指導・対応が強く求められます。



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 とりわけ、危険性を「現在感じている」者は、「80時間以上」では22.0%と全体平均(3.9%)の5.6倍にも達しており、5人に1人が過労死の危険を感じているという状況になっており、「過労死」や「過労自殺」を1人も出さないための政府・当局の緊急で抜本的な解決策が求められています。


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 6 業務におけるストレス
   最大は、仕事の量が多すぎる


 疲労や精神的ストレスを感じていると回答した者は63.7%となり、その主な原因として、職場の人間関係(53.2%)、仕事の量が多すぎる(51.8%)、残業・休日出勤など長時間労働(30.8%)が上げられています。また、「体の具合が悪くて休みたかったが休めなかったことがある」と回答した者が48.3%と半数近い結果となり、健康破壊が一層進むのではないかと危惧されます。


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 7 政権交代により一部府省で残業増える


 政権交代による影響では、府省全体では政権交代により超過勤務が「増えた」が21.0%で、「変わらない」が72.3%となっており、政権交代があっても業務量は「変わらない」という回答が多数でした。


 なお、政権交代による影響は、府省によりばらつきがあり、一部府省においては、過半数の人が政権交代により超過勤務が増えたと回答しています。


 増えた理由としては、回答の多い順に、政治主導の予算編成・事業仕分け62.1%、業務の見直し49.3%、政務三役対応が47.6%、国会対応が39.9%となっています。


 また、過半数の人が超過勤務が増えたと回答したA省では、政務三役対応が75.6%と最も多く、他の理由についても複数回答可のため、全体平均より高めになっています。


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 8 長時間残業者(月平均80時間以上)の実態


 過労死ラインといわれる「月平均80時間以上の残業者」(6.3%)の実態を見ると、残業となる原因は、業務量が多いが82.7%(全体64.7%)、続いて国会対応が30.9%(全体17.9%)となっています。全体と比べると「業務量が多い」と「国会対応」の割合が高くなっています。また、「過去に過労死の危険を感じたことがある」36.1%、「現在感じている」22.0%で、併せて58.1%の人が過労死を感じています。


 「業務において疲労やストレスを感じている」は81.7%(全体63.7%)と多く、その原因は、「仕事の量が多い」が80.9%(全体52.2%)、「残業・休日出勤など長時間労働」が76.0%(全体33.8%)となっており、全体と比べストレスの要因が突出しています。


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 まとめ


 以上の結果は、①過労死の危険ラインとされている月80時間以上の残業が組合員等の6.3%で行われていること、②残業により毎日の帰宅時間が24時を超える組合員等が5%いること、③「体調不調」、「薬等の服用」、「通院加療中」の組合員等が4割あること、④過労死の危険を感じた者(現在、過去合わせて)が3割を超えることなどから、霞が関の中央府省の過酷な勤務実態が組合員等の尊い生命を奪いかねないという危機的状況にあることを示しています。


 人事院の調査によれば、国家公務員の死亡原因のうち「自殺」が「病死」に次いで第2位となっています。また、国家公務員の1カ月以上の長期病休者のうち、63%が「心の病い」となっています。近年、霞が関中央府省での「心の病い」や自殺の増加などは、これらの危機が現実のものであることを示しています。


 霞国公は組合員等の命と健康を何よりも大切にする労働組合として、職場での過酷な勤務実態を直ちに改善するよう強く求め、以下の要求を政府当局に提出し運動を展開しています。


 (参考)昨年の各省庁大臣等への要求(日付は交渉実施日)


 人事院総裁(2009年7月17日)

 1 給与体系・諸手当等について次の改善策を講じること。

 (1)、(2)は略
 (3) 超過勤務手当の支給割合を150%に、深夜勤務及び休日給の支給割合を200%に引き上げること。
 2 超過勤務縮減に向け、「超過勤務の縮減に関する指針」を実効性のあるものに改定すること。平成21年2月27日付けで同指針に盛り込まれた「他律的業務に関わる職員の超過勤務の年間上限720時間」は削除すること。
 各府省に対しては、超過勤務縮減、法令違反の不払い残業を解消するために指導を強化すること。また、不払い残業解消に必要な超過勤務手当の予算を確保するよう財務省に働きかけること。

 3 過労死、過労自殺や公務災害の根絶のため、職場の「労働安全衛生」対策を抜本的に強化するとともに、職員の健康保持に向けた対策を強化すること。


 人事院総裁(2010年3月17日)

 1 霞が関の残業縮減に向けて必要な手立てを尽くすこと。


 人事院総裁(2010年7月15日)

 1 給与体系・諸手当等について次の改善策を講じること。

 (1)、(2)、(3)は略
 (4) 超過勤務手当の支給割合を150%に、深夜勤務及び休日給の支給割合を200%に引き上げること。

 2 超過勤務縮減に向け、「超過勤務の縮減に関する指針」を実効性のあるものに改定すること。平成21年2月27日付けで同指針に盛り込まれた「他律的業務に関わる職員の超過勤務の年間上限720 時間」は削減すること。
 各府省に対しては、超過勤務縮減、法令違反の不払い残業を解消するために指導を強化すること。また、不払い残業解消に必要な超過勤務手当の予算を確保するよう財務省に働きかけること。とりわけ、霞が関における異常な残業が一掃されるよう必要な手だてを尽くすこと。

 3 過労死、過労自殺や公務災害の根絶のため、職場の「労働安全衛生」対策を抜本的に強化するとともに、職員の健康保持に向けた対策を講じること。

 4 病気休暇については、現行制度・水準を維持すること。


 人事院総裁(2010年7月20日)

 1~4(上記7月15日付け要求事項1~4と同内容)
 5 職場環境整備、相談窓口の設置をはじめメンタルヘルス不全やパワーハラスメントに対する対策を強めること。また、男女平等の推進、セクハラ防止対策の具体化など実効ある対策を構築すること。

残業や休日出勤に対する手当の全額支給は当然のことであり、国家公務員給与法第25条では、「この法律の規定に違反して給与を支払い、若しくはその支払いを拒み、又はこれらの行為を故意に容認した者は、1年以下の懲役又は3万円以下の罰金に処する」とあります。このような違法状態は直ちに改められなければなりません。
 残業になる要因の3番目になりましたが、国会対応も大きな要因の一つです。この国会対応残業を改善するには、質問を早く通告してもらうことが急務と言えます。