「霞が関発」のワーキングプア - 中央省庁の警備員苦しむ | すくらむ

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 ※連合通信の配信記事を紹介します。


 「連合通信・隔日版」2010年6月26日付 No.8341

 「霞が関発」のワーキングプア/中央省庁の警備員苦しむ/国は対策取らぬまま


 東京・霞が関周辺の中央省庁を守る民間会社の警備員。彼らも待遇の悪さがもたらすワーキングプアに苦しんでいる。その原因を政府が作り出しているというのだから驚くほかない。


 ●補償も昇給もなし


 主要な省庁で働くある40歳代の男性警備員は、勤務歴10年を超えるベテラン。日勤や夜勤のほか、24時間拘束の当直をあわせて月20回以上こなしても、手取りは月20万円に届くかどうかだ。


 しかも、歩合制でボーナスはおろか、基本給もない。体調を崩して休んでも有給休暇をもらえず、出勤交通費は自腹。ベテランであろうと、入社1日目の新人と待遇は同じだ。


 「私はプロとして頑張っている。でも、今の待遇では生活不安が消えません」


 男性の雇用先は中堅の警備会社だ。だが、勤務先の省庁と契約を結んでいるのは別の施設管理会社で、警備会社は「孫請け」だ。管理会社から警備会社に渡る金額を警備員1人当たりの時給に換算すると、わずか700円。東京の最低賃金(791円)を下回る。


 「給料は会社の持ち出しもあり、それ以上もらっていますが、そんな金額で仕事を取っていることに暗たんたる思いがする」


 ●「官僚は何も知らない」


 こんなこともある。消火栓を収めるケースが古くて開かず、管理会社に修繕を求めると「金がかかる」と断られた。費用は省庁が負担するにもかかわらずだ。夜間巡回の消灯作業でも、管理会社は消灯した場所の報告を逐一求めてくる。


 「要するに、省庁がコストに目を向けるので、管理会社は経費圧縮をアピールし、今後の仕事につなげたいと考えている」


 落胆する瞬間は、省庁の官僚と話すときだ。官僚が「警備員さんはボーナスや給料を多くもらっているのでしょう」と軽く言うので、現状を話すと、一様にびっくりするという。男性は嘆く。


 「自分たちが警備員のワーキングプアを作っている自覚が全然ない」


 ●落札率41%のしわ寄せ


 なぜ、省庁の警備員の待遇が悪いのか。原因は、警備業界の競争激化だけでなく、省庁が警備員の労働条件に無関心なことだ。


 警察庁などによると、09年末の全国の警備員数は54万人で、この5年間で6万人増えた。一方で、業者数は9000社前後で推移し、05年から08年までは連続で減った。業界の生き残り競争の激しさを示している。


 この影響で、省庁の発注業務の落札価格は下がるばかり。業界関係者によると、ある主要省庁の警備業務の入札価格の落札率は41%だった。


 省庁の警備員などでつくる労組ライジングサンユニオンの中川善博委員長は「業者の実入りが減れば、そのしわ寄せが現場で働く警備員の給料や待遇に来る仕組みになっている」としたうえで、業界の置かれた状況を説明する。


 「業者は採算を考えずに、とにかく仕事を取って実績を積まないと、入札資格を得ることができない。入札に参加できなければ、倒産の危機が忍び寄ります」


 ●基本法の精神守れ


 昨年施行された公共サービス基本法の11条では、国にサービス従事者の適正な労働条件の確保を求めている。人件費を削って労働基準法さえ守ろうとしない業者に、入札参加資格を与えないなどの対策も取れるはずだ。しかし、前出の男性警備員と官僚のやり取りが示す通り、省庁に努力した形跡は見られない。


 中川委員長は憤る。


 「私たちは政府の安全や安心を守っているが、政府は私たちの生活の安全を守ろうとはしない」