これでいいのか公務・公共サービス なくせ「官製ワーキングプア」!告発集会 | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 「生活保護を受けながら、一日5時間働いています。来年、仕事があるか不安です」と訴える埼玉の小学校で働く非常勤教員。


 「非常勤職員も、一人の人間です」と訴える国土交通省の出先機関で働く非常勤職員。3年勤務すると雇い止めされ、労働基準法が適用されない劣悪な処遇と立場の弱さにさらされるなか、「あなたの代わりはいくらでもいる」とハラスメントが蔓延してしまう疲弊した職場実態。


 「地域住民の要望を聞き利用しやすい図書館にするため懸命に働いたら、残業が多いからと解雇された。指定管理者制度導入で、委託事業者は利益追求が第一になっている」と訴え、労働者の権利・地位確認と未払い賃金を求め、東京地裁に提訴した足立区の図書館の元館長。


 公務職場で働く非正規労働者の現場からの悲痛な声が続きます。
臨時・非常勤職員、派遣や委託労働者の多くは、正規職員と同じ仕事をしながら、「突然の雇い止め」が横行する極めて不安定な雇用環境。食べていくことがやっとの賃金・労働条件で、「ワーキングプア」におかれています。
 不安定で劣悪な処遇は、専門性や安定性、継続性が求められる公務・公共サービスの質が
低下する原因になっています。


■不安定な身分で働く非正規労働者と、総人件費削減政策


 3月13日、「これでいいのか公務・公共サービス なくせ『官製ワーキングプア』!告発集会」(全労連公務部会、非正規センターが主催)が東京都内で開かれ、85人が参加しました。


 国家公務員の非常勤職員数は約14万人、自治体に働く非正規雇用労働者は約50万人(6月以上勤務する週20時間以上の人数)、全国の臨時教職員・非常勤講師は20万人、日本郵政グループ5社に雇用される非正規労働者は21万4千人います。
 国をはじめ自治体や学校などにおける臨時・非常勤職員の多様と民間委託や派遣労働など雇用形態の多様化は、「構造改革」路線における総人件費削減政策とともにすすめられてきました。


 臨時・非常勤職員等を、不安定な身分と、多くが「官製ワーキングプア」といわれる劣悪な賃金・労働条件においたままでいいのでしょうか?
 国民・住民にとっての公務・公共サービスはどうあるべきでしょうか?
 告発集会で出された非正規労働者の仲間の発言を通して、みなさんと考えていきたいと思います。 (by ブレッド&ローズ)


■国民の財産を担う法務局乙号事務 


 法務局職員とともに登記業務の騰抄本作成業務(いわゆる乙号事務)に携わる民事法務協会労働組合からは、多くの民間事業者が落札参入し、解雇・失業が発生していることを告発。09年3月には非正規職員400人が雇い止め、正規職員約200人が退職を強いられ、長年培ってきた知識と経験が流出しています。
 民事法務協会で働く職員のほとんどは女性です。全国一律最低賃金制と均等待遇、公契約法を求めて、運動を展開しています。「法務局の乙号事務は国民の財産や身分関係の保護に関わる重要な業務であり、競争入札の対象にされるべき性質のものではありません。公務・公共サービスを低下させないためにも、労働者の雇用、労働条件を低下させないため、要求を掲げ、実現にむけてたたかいます」と決意を語りました。


■国民の命を預かる車両管理業務


 道路や河川を監視する国土交通省の車両管理業務で働く建交労日本総合サービス宮城分会の仲間は、「一般競争入札され、月7~8万円引きさがり、年収200万以下になりました。会社は内部留保を溜めこんでいるのに、ボーナスカットを押しつけたのです。給食費、公共料金、妻の出産費用が払えない人もいます」と告発しました。
 災害対応など日夜を問わない国民の安全・安心を確保するための迅速な災害対応のため、公用車は必要不可欠です。車両管理業務という災害現場への迅速な職員や車両・資材の搬送は、沿線の様々な情報に精通した運転技術が必要な極めて専門性の高い業務です。
 しかし、今年度の入札は、ダンピングで落札できませんでした。月12万円で落札したある業者は交通事故多発、挨拶ができないなど公共サービス低下が深刻になっています。運転免許を持っていれば誰でも可能という安易な企業の募集になっています。


 「国民の命を預かる重要な業務ですから、長年の知識が必要です。私たちは命をかけ、プライドをもって業務についています。労働者を弄ぶな!」と訴えました。そして、入札制度の改善を求める運動もすすめています。「私たちは労働組合を立ち上げて、団体交渉を積み重ね、解決金を勝ち取りました」というたたかいの報告が印象的でした。


■国立病院の院内保育所は、子どもと保護者とともに


 国立病院の院内保育所に働く全医労の仲間は、「2004年の独立行政法人に移行してから、賃下げ強行や、ピジョンという民間業者に全国一括で委託されました。病気で休めば、欠勤になり、夏休みもなく子どもと一緒に帰省もできません。3月で退職するパート保育士が続出し、胸が痛みます。全医労がたたかい、認可保育所も勝ち取っています。子どもたちと保護者を支えるために、がんばります」と元気に発言しました。


■四谷税務署への抗議で、雇い止めを撤回


 税務署で働く全国税東京地連の仲間からは、四谷税務署への抗議で雇い止めを撤回し、国公一般と共同して、非常勤職員の雇用を守ったとりくみを報告。非常勤職員の任用形態で昭和36年に閣議決定された「定員外職員の常勤化の防止について」の廃止と、税務署3カ月更新・雇い止め撤廃を訴え、非常勤職員の処遇改善を求める運動の重要性を強調しました。
(詳しくは、すくらむ2月22日 http://ameblo.jp/kokkoippan/day-20100222.html
 3月3日 http://ameblo.jp/kokkoippan/theme-10007204591.html 参照)


■団結すれば要求は実現する


 郵産労の仲間からは、郵政事業会社では64%が非正規社員、パートやアルバイトを除いた週40時間労働未満の非正規社員を含む17万2千人のうち、64%が年収200万円以下のワーキングプアという低賃金と雇用不安を抱える実態報告がありました。
 一方、要求アンケートや団体交渉を積み重ね、非常勤職員の有給の時間給を認めさせたり、神戸の非正規社員が地域の利用者と一体で運動し、団地配達所の廃止計画を撤回させるなど、「組合ってすごい!」「団結があれば要求が実現する」という確信が広がり、組織を飛躍的に発展させる教訓も出されました。


■労働組合に加入して、自らたたかう非常勤職員の仲間たち


 国の行政職場で働く非常勤職員からは、全経済特許庁支部、全建労、全港建四国地本の仲間から、それぞれ発言がありました。


 全経済特許庁支部の非常勤職員の仲間は、「日々雇用という劣悪で不安定な労働条件では、ダブルワークしなければ生きていけません。私自身、5月で雇い止めになりますが、労働組合に加入して運動を展開しています。支部で学習交流会・懇談会を4回開催し、非常勤職員と派遣労働者の切実な訴えと要求を集めました。公務員バッシングが激しいからこそ、ヨコのつながりと連帯が必要です。労働組合があってこそ、仲間たちと支えあい、要求実現ができることを幅広い仲間に呼びかけています」と力強く語りました。


 国土交通省の出先機関で働く全建労の非常勤職員の仲間は、2人の子どもを育てるシングルマザーです。雇い止めされる生活不安とパワハラに脅えながらも、労働組合に加入し、自ら非常勤職員の雇用と労働条件改善を訴え、仲間つくりなど組織化の運動にも積極的に参加しています。


 彼女は、「国の防災政策が今後どうなっていくのか不安です。災害がきて、道路・河川・橋などへの対策が自治体ごとに違ったらどうなるのでしょうか。予算・体力のない山間部では大変だと思います。突発的な災害が起きても国の責任で、国民の命と財産を守ることが求められます。国自らが、雇用を拡大してほしいです」と行政と公務労働の民主化を訴え、4月に開催する全建労の非常勤職員交流会への参加を呼びかけました。


 全港建四国地本の非常勤職員の仲間は、昨年2月に開催した「官製ワーキングプア告発集会」に参加し感動したことを話し、「構造改革が公務・公共サービスの破壊と質の低下につながることを学びました。そして非常勤職員の労働条件改善だけでなく、すべての仲間が心と身体の健康を守り、安心して働ける職場をつくるためがんばりました。私は今月末、雇い止めで退職しますが、労働組合運動と集会に参加して本当によかったと思います!」と語りました。


■「子たちと過ごす学童保育の仕事が好きだから、やめたくない!」


 大阪自治労連からは、大阪での任期付短時間勤務職員制度の導入拡大を告発。
 大阪市が、非常勤保育士に対し「任期付フルタイム職員」の導入を提案し、大半が雇い止めになったこと。茨木市は、更新を繰り返し長年勤務してきた非常勤職員(学童保育指導員)をいっせいに雇い止めを強行。保護者が安心して働き続け、子どもたちが豊かに育つために、経験豊かな指導員は欠かせない存在なのに、学童保育指導員の仕事に「3年で雇い止め」の「任期付短時間職員制度」導入を強行したのです。「被害をうけるのは子どもたちです。私たちは子どもたちと共に過ごす学童保育の仕事が好きですから、やめたくない!地域の仲間と連帯してがんばります」と語りました。


自治労連千葉、滋賀自治労連からは、劣悪な職場実態と大量解雇、団体交渉でたたかい、要求を実現する重要性が語られました。


 続いて、東京公務公共一般労働組合の仲間から、文京区が、図書館の指定管理者に委託し、非常勤職員への不当労働行為と団体交渉拒否問題や、中央区が5年で雇い止めした労働者に対し区に応募する資格を取り上げるという「公平原則」に明白に違反する行為を告発。板橋区では、学習会や決起集会、交渉を実施し「年限をなくし専門性の発揮を」の生の声を当局にぶつけた結果、更新限度撤廃を実現した報告がありました。


■コンビニで働く臨時教員の辛さ


 埼玉県高等学校教職員組合の仲間からは、芸術系など非常勤教員の雇用が厳しく、一人で5~6校も掛け持ちしている実態や、教員なのに机もなく時間割も知らされない、低賃金で劣悪な労働条件が明らかになりました。


 長野県高等学校教職員組合の仲間からは、臨時なのにクラスの担任を任されたり、7日間の任用中断中も、生徒のために「ただ働き」せざるをえない、特別休暇がなくインフルエンザになり年休を使い果たした、生活が苦しくコンビニでバイトをしている臨時教員の劣悪な実態が明らかになりました。


 今回の告発集会で、公務・公共サービスを支えているさまざまな職場から、処遇の実態と、職場の働きがいが報告されました。「公務・公共サービスの拡充」「均等待遇の実現」のためには、地域住民・国民と連帯して、運動を展開しなければ!


 一人ひとりの声は小さいかもしれないけれど、団結する仲間と労働組合があってこそ、運動がすすみます。


 「労働組合ってすごい!」と組合員や市民から言われるような、元気がでるとりくみをしていきたいです。
                                           (by ブレッド&ローズ音譜