※中央社保協の抗議声明を紹介します。
不当な生存権裁判東京高裁判決に抗議する
2010年5月28日
中央社会保障推進協議会
東京都内在住の70歳以上の生活保護利用者12名が、自治体を被告として、老齢加算廃止の取消しを求めた裁判について、東京高等裁判所は、5月27日、上記廃止に違法はないとして原告らの請求を棄却した1審判決を追認し、原告らの控訴を棄却しました。
高齢の保護利用者は,もともとぎりぎりの生活を送っています。老齢加算1万7930円(東京都各区等の場合)は、彼ら、彼女らにとってのまさに命綱として憲法25条に定める「健康で文化的な最低限度の生活」の一部となっていました。老齢加算の廃止は、「人間らしい生活」を大きく脅かすものです。
このような仕打ちに対し、現在全国100名の原告が本高裁の他、4地裁、3高裁で裁判を闘っています。これまで、東京地裁、広島地裁、福岡地裁、京都地裁で不当判決が言い渡されてきましたが、本東京高裁判決は、全国で初めての高裁判決でした。
各原告は極めて厳しい生活の現状を訴えるとともに、生活保護を利用しながらささやかな楽しみを持ち、社会との繋がりを保つといった「人間らしい生活」を取り戻すため、それぞれ人間の尊厳をかけて訴えてきました。老齢加算廃止によりねらい打ちされたのは、高齢者という極めて弱い立場にいる者です。格差と貧困が拡大し世界的な不況によって雇用が打ち切られる中、生活保護制度の重要性は増すばかりで、生活保護制度は他の諸制度や諸施策と連動し、保護基準は国民生活全般に極めて重大な影響を及ぼします。
民主党中心の連立政権の下で母子加算が全廃後わずか8か月で復活するなど、政府の生活保護基準切下げ政策について転換の萌芽が見える一方、老齢加算については廃止のまま放置されてきました。本判決は「ナショナルミニマム」の意味内容を明らかにし生存権保障を全うさせるうえで、重要な意義を有していました。
しかし、言い渡された判決は、高齢者世帯の置かれた厳しい現状に目をつむり、政治の判断をそのまま追認するものであり、憲法によって与えられた司法の責務をも放棄するものです。極めて不当な判決といわざるを得ません。この判決は、高齢者に鞭打つ仕打ちを、司法もが繰り返すものです。政府自ら過ちを認め、母子加算を復活させている現状がありながら、裁判所は独善に陥ってその役割を放棄し、三権の一角たる司法権の誇りを完全に失ったといわざるを得ません。
私たちは、こうした東京高裁の不当な判決に断固抗議すると供に、生存権裁判支援の活動を強め、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を守るため引き続き全力で闘うことをここに表明します。
以上