「授業料払えない」1日電話相談に156件 -年度末・始めの教育費の困難を解決する緊急対策・提言 | すくらむ

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 ※全教等による教育費無償化を前進させるための提言を紹介します。


 年度末・始めの教育費の困難を解決する緊急対策を求め、

 教育費無償化を前進させるための第2次緊急提言
  2010年2月26日

  全日本教職員組合(全教)・日本高等学校教職員組合(日高教)・

  全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)


 第2次緊急提言の発表にあたって


 私たち全教・日高教・全国私教連の三教職員組合はさる2月11日、諸団体や専門家の協力を得て「授業料・教育費緊急ホットライン」による電話相談を行いました。昨年の第1次ホットラインに続くもので、17都府県から156件にも及ぶ相談が寄せられました。また、広島・富山・長野等でも同様の「教育費ホットライン」が行われました。


 寄せられた相談は、「孫が高3で卒業だが50万円滞納で払えない」(香川・公立高校)、「児童扶養手当を打ち切られ、私学の入学金を払えない」(大阪・私立高校)、「96万円を2月末までに払わないと除籍といわれた」(兵庫・私立大学)、「(子どもが7人)仕事が週2日しかない。給食費が払えない」(兵庫)など、いずれも緊急性の高いものばかりでした。日本の異常な高学費がいかに高校生や大学生を苦しめているか、いかに家族が教育費負担に苦しんでいるかが明らかになりました。また、年度末・卒業期を前に授業料納入のメドが立たず、悩んだ末の相談も相次ぎました。


 こうした困難の背景には、急激な景気の悪化の中で、父母が職を失ったり、営業が破壊されたりしていることがあります。国民の雇用と営業を守るために、大企業がその社会的責任を果たすとともに、国や自治体が国民の雇用と営業を守り、子どもたちの学ぶ権利が守られるよう、全力をあげることが必要です。


 教育費負担の軽減を求める世論を受けて、新年度から公立高校授業料の無償化(私立高校は「就学支援金」の支給)が動き出す見通しが出てきました。本来無償であるはずの義務教育における給食費・教材費等の負担、公立高校における授業料以外の負担、私学における高学費負担など、解決しなければならない課題は依然として残されていますが、教育費無償化に向けた重要な第一歩を踏み出したと言えます。この上に立って、長年にわたる自公政権のもとでとられてきた「受益者負担主義」の政策を根本的に転換させていくことが、現在の鳩山政権には強く求められます。


 私たちは、とくに3月末の卒業・進学・進級を目の前にして、教育費に苦しむ子どもや父母への緊急の支援体制をとることが急務と考え、あわせて動きはじめた教育費無償化を大きく前進させるために、この「第2次緊急提言」を発表しました。昨年の第1次ホットラインの際に発表した「緊急提言」に続いて、1年間の推移を踏まえてまとめたものです。


 教育費負担軽減を求める世論を受けて、文部科学省・厚生労働省が年度末に向けて緊急の対応策をとる動きを見せていることは積極的に評価します。国、地方自治体、教育機関などの関係諸機関がさらに具体的な支援策をとるよう強く求めます。


 同時に、私たち教職員組合も、貧困と格差から子どもたちを守る社会的使命を果たすために、全力をあげてとりくむ決意を表明するものです。


 緊急提言1
 2009年度の高校卒業生に対して、授業料滞納を理由にした出席停止・除籍・卒業延期などの処分や、授業料滞納を理由に「卒業式に出席させない」「卒業証書を渡さない」などの非教育的な対応を行わない。


 2009年度公立高校においては、授業料滞納を理由にした出席停止・退学・除籍等の懲戒処分は、宮城県では5名の退学処分、静岡県では8名の出席停止、愛知県では2名が入学金未納による入学取り消しなどとなっています(日高教調査)。また新聞報道では、都道府県立高校の授業料滞納累計総額が2008年度に全国で7億9千万円にのぼり、滞納を理由に出席停止処分を受けた高校生が6県で約170人いたとされています(毎日新聞1月31日付大阪本社版報道)。


 私立高校では、全国私教連の学費滞納調査(2009年9月末現在)によると、3ヶ月以上の滞納率が1.7%というきびしい結果になっています。年度末に向けて授業料滞納による退学者が増加する可能性が高くなっています。


 ようやく授業料無償化の展望が明らかになる状況で、その直前に授業料滞納を理由にした処分が行われたり、学校を去らなければならない高校生が出ることは、何としても避けなければなりません。授業料滞納を理由にした処分をしない、卒業にかかわって非教育的な対応を行わないよう、文部科学省と都道府県教育委員会が急ぎ必要な措置をとるように求めます。


 緊急提言2
 授業料滞納、家計急変による教育費負担の困難など年度末の緊急事態に対応するため、行政は学校現場の協力を得て「ワンストップ相談窓口」を設置する。


 教育費負担の軽減をすすめる上で、修学支援事業の拡充とともに、教育費について気軽に相談でき「相談窓口」の設置が必要です。教育委員会が主管する奨学事業と生活保護関連の社会福祉事業が別々の縦割りで行われている状態を解消し、1ヵ所で相談できるようにすることが必要です。行政は学校現場との協力体制を強化し、できれば市町村単位で、少なくとも教育局・教育事務所単位に「ワンストップ相談窓口」を設置するよう求めます。


 緊急提言3
 文部科学省は、2009年度第1次補正予算において措置された「高等学校授業料減免事業等支援臨時特例交付金」について、自治体が基金を取り崩して活用できるように改善をはかる。奨学金の「併給」を禁止している都道府県は、その規定を廃止し、併給が可能となるようにする。


 文部科学省はこの「特例交付金」について、「この交付金を活用して、経済的理由により修学困難な生徒に係る私立高等学校等への授業料減免補助や高等学校奨学金事業を引き続き推進」(2月9日付大臣政務官通知)するよう求めています。しかし、この「特例交付金」は自治体が2分の1を負担しなければ基金を取り崩せないなど、自治体からは「使い勝手が悪い」として改善要望が出ています。文部科学省は、自治体の持ち出しなしに基金を取り崩して修学支援事業に積極的に活用できるよう、急いで制度を緩和し、改善することを求めます。


 緊急提言4
 厚生労働省が高校生の授業料滞納にかかわって通知した「生活福祉資金貸付制度(教育支援資金)」の特例措置をさらに拡充する。行政は学校現場への周知徹底を行う。


 厚生労働省は2月12日、都道府県民生主管部局あてに「高校生の授業料滞納に係る生活福祉資金(教育支援資金)の取扱について」とする通知文を出し、「今年度に限り…特例的に高校の授業料について遡及して貸し付けることを可能とする」としました。年度末の事態に対してこうした特例措置をとろうとする厚生労働省の姿勢を歓迎するとともに、この措置がいっそうの効果を発揮するため、以下の諸点について改善することを求めます。


(1)都道府県負担(3分の1)の軽減を図り、支援枠の拡大を行う。


(2)民生委員の面接の省略など手続きの簡素化を図り、利用しやすい制度に改善する。


(3)厚生労働省と文部科学省、教育委員会と社会福祉協議会の連携を図り、制度の周知徹底を行う とともに、学校から申請手続きができるように改善する。


(4)収入基準の緩和を行う。


 緊急提言5
 授業料未納で苦しむ大学生向けの緊急対策として、日本学生支援機構奨学金の無利子・緊急貸付を行う。


 「世界一の高学費」といわれる日本の高等教育において、学生・家族にとってその負担は大変大きいものがあります。その額が大きいだけに、年度末に向かって学費滞納に苦しむ学生が多数出てくることが予想されます。年度末の学費滞納に対応するため、日本学生支援機構に無利子の緊急貸付を行うよう求めます。


 緊急提言6
 父母の失業・経営破綻、病気など家庭の経済的困難に対応するため、生活保護制度の「生業扶助」における高等学校等就学費の授業料分を「教育費扶助」として引き続き支給する。あわせて就学援助制度と生活保護制度の拡充を行う。


 2010年度からの公立高校授業料の無償化(私立高校は「就学支援金」の支給)に関連して、生活保護制度の「生業扶助」に含まれる高校授業料分(11万8800円)を「教育費扶助」として引き続き支給できるよう改善することを求めます。あわせて、捕捉率が1~2割と異常に低い現在の生活保護制度を抜本的に改善し、制度全体の拡充をすすめることが必要です。



 教育費問題の根本的解決に向けての提言


 鳩山首相が施政方針演説で「目標とする」と表明した国際人権A規約13条2項(b)(c)の留保撤回を一日も早く行い、教育費無償化に向けての日本政府の決意を内外に表明するとともに、先進諸国水準に教育予算を増やすよう努力をする。


 義務教育諸学校、公・私立高校、大学等の高等教育において、教育費負担を軽減するために現行制度の改善をはかり、教育費無償化の流れを前にすすめる。


 1.中等・高等教育の教育費無償化を定めた国際人権A規約13条2項(b)(c)を留保しているのは、条約を批准する160カ国のうち日本とマダガスカルの2国のみとなりました。いかに日本政府の教育費負担の軽減に向けての努力が不十分であったかを象徴しています。鳩山首相は通常国会における施政方針演説で留保撤回を目標とすることを表明しました。これを歓迎するとともに、一日も早く留保撤回を決定し、教育費無償化に向けての日本政府の決意を内外に表明することを求めます。


 あわせて、教育予算のGDP比をOECD加盟国平均(2009年最新値4.9%、日本は3.3%)にまで引き上げるための行程表を早急に作成し、それに向けての真剣な努力を求めます。


 2.緊急提言1~6を実施することによって、重い教育費負担に苦しむ高校・大学生の危機を救済することを最優先の課題として行政に求めます。同時に、教育費無償化に向けて、義務教育諸学校、公・私立高校、大学等の高等教育において、当面次の点での改善を図ることを求めます。


(1)義務教育諸学校の教育費負担の軽減


 ① 準要保護家庭に対する就学援助制度の国庫負担制度を復活させ、制度の拡充を図る。


 ② 給食費・教材費を公費負担とする。


(2)公立高校の教育費負担の軽減


 ① 教科書・副教材・実験実習費など学習・教育活動に必要なものは公費負担とする。


 ② 経済的に困窮する家庭に対して、義務教育の就学援助制度に準じた「高校版就学援助制度」を創設する。


 ③ 返還の必要がない給付制奨学金制度を創設する。


(3)私立高校の教育費負担の軽減


 ① 公立高校と同様にすべての私立高校生の授業料の無償化を実現する。当面、「就学支援金」とし て、公立高校生の3倍にあたる36万円(私立授業料の平均額)を支給する。


 ② 年収500万円以下の家庭については、上記の「就学支援金」に加えて、施設設備費など授業料以外の負担がカバーできるよう、都道府県減免事業として18万円を支給する。


 ③ 年収800万円以下の家庭については、施設設備費など授業料以外の負担の半分がカバーできるよう、都道府県減免事業として9万円を支給する。


 ④ 返還の必要がない給付制奨学金制度を創設する。


(4)大学等の高等教育の教育費負担の軽減


 ① 大学・短大・専修学校の高等教育の無償化に向けて努力する。当面、授業料免除制度を拡充し、年収500万円以下の家庭に対する授業料を免除する。


 ② 返還の必要がない給付制奨学金制度を創設する。


 ③ 奨学金制度の中に大学入学生のための「入学支度金制度」を創設し、入学金等の負担軽減を図る。
                                      以上