内部留保の還元でデフレ脱却・非正規の正規化・最低賃金引き上げ・サービス残業根絶 | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 一昨日のエントリー「トヨタもキヤノンも内部留保を使うが雇用には使えない? -10年で2倍増の内部留保こそ“埋蔵金」 の続編として、昨日ひらかれた全労連・労働総研共催の公開学習会「内部留保の社会的還元を!」から、労働総研の木地孝之さんの講義要旨を紹介します。細かい内部留保の定義や、現金として実際に雇用などに使える内部留保については過去エントリー「大企業の内部留保の4割強は雇用維持に活用可能 - ほんの一部の取り崩しで雇用を守れる」 ですでに紹介済みですし、労働総研の緊急提言の全文についても過去エントリー「経済危機打開のための緊急提言 - 内部留保を労働者と社会に還元し内需拡大を」 で紹介済みですので、この機会にぜひお読みいただければと思います。


 それから、このブログへのコメントで、そもそも内部留保など存在しないかのように主張されている人がいらっしゃいますが、日本経団連でさえも、『2010年版経営労働政策委員会報告』(1月19日発表)の中で、「繰越利益準備金などの内部留保」「内部留保は、企業活動から生じた当期純利益から、配当金、税金など社外に払い出された分を差し引いた部分の累計」と明記しています。日本経団連でさえ、その存在を認めざるを得ない「内部留保」を、あたかも存在しないかのように主張されるのは、単なるデマでしかないことを最初に強調しておきます。(byノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)


 ▼内部留保について(労働総研・木地孝之研究員)


 経済は、生産活動によって新たに付加された価値が、賃金・株主配当・税金などに配分され、それが家計消費、政府消費、設備投資などの国内需要に転化して、再び国内生産を誘発することにより、循環していきます。


 内部留保は、生産活動によって新たに付加された価値――その合計は、国内総生産GDPとほぼ一致――が企業内部に留保され、ただちに国内需要に転化しないことを意味しますから、内部留保の急増は、慢性的な需要不足――価格低下→デフレ――を引き起こし、日本経済を成長できないどころか、正常な循環すら困難にするのです。


 その内部留保が、1998年から2008年の10年間に、国内総生産GDP――2008年のGDPは507.6兆円――の実に41.4%に相当する218.7兆円も増えているのです。

すくらむ-内部留保提言図1


 上のグラフにあるように、内部留保の急増が始まったのは1999年です。奇しくも「労働者派遣法」が改悪された年と一致しています。さらにこの年には、小渕内閣によって、年収3,000万円以上の高額所得者の所得税率引き下げ――50%から37%へ――や、企業の法人税率の引き下げ――国税分については34.5%から30%へ――が行われています。


 私たちは、内部留保を「すべて悪い」と言っているわけではありません。この10年間で2倍以上はあまりに積み上がり過ぎだと言っているに過ぎません。この10年間で積み上がった内部留保218.7兆円は、正社員の非正規化や解雇、賃下げなど労働者の犠牲と、下請け単価切り下げなどによる中小零細企業への犠牲転嫁の上に積み上がったものであり、これは社会的に還元してしかるべきだということです。それに、この10年間で積み上がった分の内部留保を取り崩しても10年前の水準の内部留保になるだけで、それでも十分巨額な内部留保なのですから企業側にとっても問題はなんら生じません。

すくらむ-内部留保


 上の表は、この10年間で積み上がった内部留保218.7兆円を労働者と社会に還元した場合の経済効果を、産業連関分析したものです。トータルとして、国内需要が264.8兆円拡大し、それによって国内生産が424.7兆円、付加価値が231.3兆円誘発され、それに伴って、国税・地方税あわせて41.1兆円の増収となることが分かりました。


 付加価値231.3兆円は、年率約3.7%の経済成長に相当し、税収は、法人税率を元に戻したとすると、合計45.9兆円の増収になり、2009年度補正予算の公債発行額44.1兆円を全額まかなってもおつりがきます。


 つまり、この間、目先の利益だけを追った内部留保の拡大に走るのではなくて、きちんと利益を労働者と社会に適正に配分していれば、これだけの経済効果が発生し、現在のような不況、デフレには陥らなかったということです。