労働者性をめぐるシンポジウム-音楽家・委託・請負・契約も労働者、裁判所の労働者性否定は許さない | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 ※「労働者性」をめぐるシンポジウムのお知らせです。


 労働者性をめぐるシンポジウム
 音楽家だって労働者! イワンヤ委託・請負・契約も労働者


 私たちだって労働者だ!
 裁判所による「労働者性」の否定は許さない


 憲法は労働者の労働基本権を認めています。


 それは、経済的に弱い立場の労働者が、使用者から一方的に劣悪な労働条件を押しつけられないようにするためです。しかし、2009年以降、労働委員会が個人請負や業務委託の労働者、音楽家などに関して、いったん「不当労働行為」と認定した救済命令を裁判所があいついで覆す事態が発生しています。


 とき 2010年2月6日(土)午後1時~5時


 ところ 全国家電会館5階 ※地図はこちら
     文京区湯島3-6-1 TEL03-3832-4291


 内容


  講演 西谷敏(近畿大学法科大学院教授)

 大阪市立大学名誉教授。主著:「労働法における個人と集団」(有斐閣)、「労働組合法」(有斐閣)、「規制が支える自己決定-労働法的規制システムの再構築」(法律文化社)、「労働法」(日本評論社)


  シンポジウム 宮里邦雄(日本労働弁護団会長)
  討論・発言


 主催 全国労働組合総連合(全労連)



 裁判所が不当労働行為の認定取り消し
 あいつぐ団結権否定の判決


 東京地裁・高裁判決で大きな問題になっているのは、労働組合法上の「労働者性」の問題です。


 都道府県や中央労働委員会が、企業が労働組合との団体交渉を拒否したことを不当労働行為として認定したにも関わらず、裁判所が請負や委託などの契約形式を優先し、「労働者性」を認めず、その命令を取り消す判決を出しているのです。


 ▼新国立劇場合唱団員・契約打切り(音楽ユニオン)


 音楽ユニオン組合員の八重樫節子さんは、1976年来、二期会合唱団メンバーのソプラノ歌手として、また97年オープンの新国立劇場合唱団員のパートリーダーとして年間40回のオペラ公演、約230日もの稽古や練習に参加し、年間約300万円の報酬でLた。


 八重樫さんは、合唱団員の地位と労働条件向上を図るために団体交渉を申し入れたものの、財団側がこれを拒否し、八重樫さんの組合活動を嫌悪して03年2月には試聴会の結果を理由に八重樫さんの契約更新を拒否しました。


 これに対し、音楽ユニオンは、東京都労働委員会に団体交渉の応諾を求めて不当労働行為救済を申し立て、都労委、中労委とも不当労働行為を認定する命令を出しました。


 しかし、東京地裁、同高裁ともに八重樫さんに「労組法上の労働者とは認められない」とし、団体交渉応諾命令を取り消す判決を出したため、現在、団交拒否問題が最高裁で争われています。


 ▼INAXメンテナンス事件(建交労)


 INAX製品のバス、トイレなどの給排水の点検、修理業務に従事するCE(カスタマー・エンジニア)は、午前8時30分から午後7時まで会社の指示とマニュアルに基づいて仕事をし、修理代金は会社に納め、会社が決めた算定基準に従って支払われる「報酬」を生活の糧としています。


 会社の一方的な契約解除や単価切り下げに反対し、04年9月に建交労INAXメンテナンス分会を結成し、団体交渉を申し入れたところ、会社は個人事業主とは団体交渉ができないと拒否。組合は大阪府労働委員会に「不当労働行為救済」を申立て。大阪府労委は「CEは労組法上の労働者であり会社は団体交渉に応じなければならない」との全面勝利命令を下し、中央労働委員会も会社の「再審査申立」を棄却しました。


 これを不服とした会社は、東京地裁に提訴。東京地裁は09年4月、会社の訴えを棄却し、団体交渉開催の「緊急命令」を決定しました。ところが、会社は「緊急命令」の執行停止と東京地裁判決取り消しを東京高等裁判所に提訴。東京高裁は09年9月、中労委命令及び東京地裁判決を取り消し、「業務委託契約」を理由に「個人事業主扱い」する不当判決を下し、現在、最高裁判所に上告中。


 ▼ビクターサービスエンジニアリング事件(JMIU)


 JMIU・ビクター支部の組合員は、日本ビクター音響製品の出張修理やメンテナンス業のビクターサービスエンジニアリング(日本ピクター100%子会社)ではたらき、修理料の一定割合を手数料として受け取る委託労働者です。


 同労働者たちは、修理手数料が引き下げられ業務割当てが一方的に決められてきたことに対し、労働組合を結成し団体交渉を申し入れました。しかし、会社は委託労働者は個人事業主であり、「労働組合は認めない、団体交渉にも応じない」という態度をとり続けたため、組合は大阪府労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てました。


 大阪府労委、中央労働委員会とも「形式的には個人委託という形をとっていても、実態は会社が雇用した労働者であり、会社は組合との団体交渉に応じなければならない」との行政命令を下しました。しかし会社は、この命令を不服として東京地方裁判所に行訴。


 東京地栽は8月6日、会社の不当労働行為を断罪した中労委の判断を真っ向から否定する判決を下し、現在東京高裁で争われています。


 ▼裁判の3つの意義


 「労働者性」をめぐる3つの裁判は、①委託・請負・契約労働者の労働組合法上の労組加入・結成の権利と団体交渉権を認めさせるのかどうか。②また、200万~300万人とも言われるこれら労働者の雇用と労働条件を改善させることができるかどうか。③さらには、労働組合法に基づく不当労働行為の救済機関である労働委員会制度の存在と役割にかかわる重大な裁判となっています。


 ◆団結権を否認する判決を正そう

   宮里邦雄・日本労働弁護団会長


 個人請負や「業務委託」で働く人が増え、「労働者性」が争われる事例が増えている。これらの「労働者」が労働組合を結成し、就労先企業に団体交渉を申し入れたところ、「労働者ではない」として団体突渉を拒否されるというのはその典型である。


 契約形式を理由とする使用者責任の回避を許さないため、名実ともに「独立事業主」でない限り、労働者と認められるべきだ。


 労働者性を認めた労委命令を取り消した判決は、契約の形式・名目にこだわり、団結権を否認した不当判決であり、判断の誤りは正さなければならない。