若者から夢と希望を奪う労働者派遣法 - 抜本改正まったなし | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 「派遣法改正 まったなし!10.29日比谷大集会」(10月29日開催)での3人の方の発言要旨を紹介します。(※遅くなりましたが、忘れないうちに紹介しておきたいと思います。byノックオン)


 ▼日本労働弁護団会長の宮里邦雄さんの発言要旨


 昨年の秋以降、「派遣切り」の嵐が全国に吹き荒れています。派遣労働の持つ構造的な不安定・低賃金労働としての本質は、いまや誰の目にも明らかです。ILO(国際労働機関)は、1944年に「労働は商品ではない」「一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である」という労働における基本的な原則を掲げました。そして、この原則を発展させて、1999年からは「人間らしい尊厳ある労働」=「ディーセント・ワーク」を21世紀のILOの目標として掲げました。現在の日本における派遣労働の実態はまさにこの原則に反するものであることは明らかです。派遣法を抜本的に改正することは「労働は商品ではない」という原則を実現し、「ディーセント・ワーク」を実現する道にほかなりません。雇用の原則は「直接雇用」であり、「常用雇用」です。したがって、派遣法の抜本改正のみで今日の非正規雇用問題の解決が可能かというと決してそうではないと思います。この立場から私たち日本労働弁護団は、昨日「有期労働契約法制立法提言」 を発表しました。「ディーセント・ワーク」に向けて、有期労働のあるべき規制のあり方について提言をまとめたものです。人間らしい尊厳ある労働をめざして、力を合わせましょう。


 ▼作家・鎌田慧さんの発言要旨


 労働者派遣法とは何でしょうか? 派遣法は、労働者に対する「やらずぼったくり法」です。労働者に還元しない「ピンハネ法」です。労働者からピンハネする労働者供給事業は産業民主主義の原則からも本来認められない産業です。それを先進諸国で日本だけがピンハネする労働者派遣法を許してしまったわけです。経営者が派遣法抜本改正に抵抗しているのは、彼らがこれまでピンハネによって得てきた利益、あるいは派遣労働者の低賃金によって、あるいは派遣労働者の解雇自由によって、経営者が得てきた原始的蓄積を少しでも奪われたくないからです。ですから現在の労使対立は、この労働者派遣法をめぐっての天下分け目のたたかいになっているのです。


 新政権は何をすべきでしょうか? まず若者に夢と希望を与えなければいけないと思います。若者に与える夢と希望とは何でしょうか? いま現在、若者が生活していける、あるいは将来に向かって生活していくことができる、あるいは結婚し、子どもを育てて生活していくことが可能で、いろんな夢をかなえていく、それら若者の人間として当たり前の夢や希望さえも、労働者派遣法はすべて解体してしまいました。大企業が必要なときに、大企業には何の負担もなく好き放題に派遣労働者をこき使い、不用になればモノのように捨て去る。これを許してきたのが自民党政治です。新政権は、こうした社会悪の法律を直ちにやめる必要があります。若者が、労働者が、未来に向かって生きていく、暮らしていける、そして明日の不安がない生活、こうした当たり前の権利を奪っているのが派遣法です。


 派遣法抜本改正には労働者の未来がかかっています。連合は立ち上がってください。この取り組みによって日本の労働運動を再生していくのです。今まで「人件費」の「件」は「物件」の「件」でしたが、しかし、これからの「人件費」は「人権」の「権」、人間が生きていく「権利」のための「人権費」にしなければいけません。人間は「物件費」じゃないんだ。人間は「物体」じゃないんだ。人間は取り替え可能な「部品」じゃない。いつでも取り替えられるモノじゃない。人間らしさを取り戻すため、人権を守るためにも労働者派遣法の抜本改正を勝ち取りましょう。


 ▼反貧困ネットワーク事務局長・湯浅誠さんの発言要旨


 政権交代に意味があるとするなら、それは政策の優先順位が変わることによってだと思います。今まで私たちが取り組んできた貧困を解決していくための課題は、ずっといつも後回しにされてきました。その変わりに投げかけられるのは、「ちゃんとやっていれば貧困になることないだろう」、「派遣労働は、自分で選んだんだろう」などと言われて、いつも、いつも後回しにされてきました。そしてずっと放置され続けてきました。「派遣切り」や貧困が生まれ続ける構造とか、「穴だらけのセーフティーネット」とか、「雇用のあり方」の問題とか、そういう大きな構造上の問題には目を向けずに、一人ひとりの生きていけなくなった状況やその存在をとらえて、貧困に陥った人間が悪いんだ、「自己責任だ」と言って、そうした社会構造には手をつけず、その状況を正当化して放置してきました。その結果、日本の貧困率は、15.7%までになってしまいました。年間を通じて働いているのに、年収200万円を超えない人の数は、去年よりさらに増えて、1,067万人に達しているのです。


 政策の優先順位が変わって、「人が生きていく支援」をできるようになったとき、労働者が働いていけば食べていけるその状況が優先的に実現されるとき、政権交代の意味があったと言えるのだろうと思います。大企業の方は、うまくいっているときは、「自分で派遣労働を選んだんでしょ」と言っていました。ところが、今度は「派遣労働を規制すると、あなたたち失業しちゃうよ」と言っています。考えてみると両者は矛盾しています。以前は仕事の選択肢はいくらでもあるから選べ直せばいいと言ってきて、今度はそういうことができない現実の足元を見て、派遣労働が無くなったら困るでしょ、だからこういうあり方を認めないと、あなたたち自身が困るんですよと言う。ついこの間までは自分で選んだくせに文句を言うな、他にもいくらでも仕事が選べたはずだと言っていたのですから矛盾しています。こうした矛盾している大企業側の物言いに対して、マスコミなどは批判するどころか、同調してしまっています。こうした矛盾を指摘していくのがマスコミの本来の役割ではないでしょうか。


 もやい に相談に来る生活困窮者は、昨年の3倍に増えています。いまの社会のあり方を変え貧困を減らすような社会構造をつくること、働けば食べていける状況をつくること、セーフティーネットがあって路頭に迷わなくてもすむこと、それをどうつくっていけるか、そこに政権交代の意味があるかないかがかかっているのだと私は思っています。


 そういう意味では、今まで運動がやってきたように、仲間を増やして、声をあげて、一歩一歩、改善していく。私は内閣府の参与というのになって3日目になりますが、結局やることは同じだなと思っています。今まで運動がやってきたように、その中で仲間を増やして、その人たちが同じ方向を向くようにして、一歩一歩、改善していけるようにしていく。それをまた一からやり始めています。いろんなところで、いろんな人たちが、また新たなところに踏み出して、垣根を越えて、つながっていくことで社会の状況を変えることができます。またそうでなければ、この社会に持続可能性はありませんし、日本社会の未来がありません。貧困をなくすためのウルトラCはありません。仲間を増やし、一つひとつ進めていきましょう。