住まいの貧困に取り組むネットワーク設立宣言 | すくらむ

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 ※3月14日に大久保地域センターにて「住まいの貧困に取り組むネットワーク設立集会」が行われました。設立宣言を紹介します。


 住まいの貧困に取り組むネットワーク設立宣言
                            2009年3月14日


 2008年の冬、突如として世界的な不況の波が押し寄せ、雇用情勢の悪化から、派遣社員や期間従業員が解雇や雇い止めにより職を失い、住まいも同時に失うといった事態が頻発し、にわかに住まいの問題が顕在化しています。


 厚生労働省の発表では09年3月までに約15万8千人が期間満了や解雇により職を失うとされています(09年2月27日発表)。離職者のうち、09年2月までに職とともに住居も失ったのは、約3千人とされていますが、状況が不明な部分も多く、さらに多くの労働者が住まいを失っていると考えられます。また、収入が不安定になることで家賃の支払いが遅れ、立ち退きや遅延違約金の支払いといった追い出し被害の事態が拡がることも懸念されます。


 また、国土交通省による、ゼロゼロ物件などの住宅の賃貸業務や家賃債務保証業務を巡るトラブルに関する実態調査(09年2月16日発表)では、家賃保証会社は全国で92社とされていますが、追い出し行為を行っているのは保証会社だけに限らず、不動産管理会社やサブリースによる賃貸業者も含めるとさらに多くの業者が取り立て行為や追い出し行為を行っていると考えられます。また、同日発表された賃貸住宅における家賃支払いの遅延等に伴う家賃回収方法を巡る相談等の実態調査でも、相談件数が07年から急激に増加したとされています。しかし、05年から4年間で合計190件という被害件数は、実態と照らしてあまりに少なく、加害業者が継続的組織的に業務として追い出し行為を行っていることを鑑みれば、さらに多くの被害が埋もれていると予想されます。


 非正規労働者の多くは、収入が安定せず雇用期間も見通しが立たないことから、持ち家のためのローンを組むことはおろか、連帯保証人や入居時初期費用がハードルとなって民間賃貸住宅に住むことさえできないことがままあります。寮付き職場を選ばざるを得ないことで、職を失うとともに住まいも失う。その一方で、自ら部屋を借りようとすれば収入が不安定であるがゆえに、初期費用の安いゼロゼロ物件に入居せざるをえず、保証会社との契約を求められ、あげくは追い出し被害に遭う。これらは強く関連しており、違法な解雇を行う企業はもちろんのこと、強引な取り立てや違法な追い出し行為を行う保証会社や不動産管理業者、サブリース賃貸業者に対する規制は不可欠です。しかし、業者を規制するだけでは根本的な解決にはなりません。また、ゼロゼロ物件の多くが定期借家契約で契約期間も半年から1年というものであり、定期借家制度は期間が満了すると契約が終了となることから、家賃の滞納が一度でもある借主は再契約ができずに、家主の都合で無条件で追い出される不安定な居住を強いられています。


 私たちは、いま、住まいの貧困(ハウジングプア)の問題に直面しており、そして、これは、なにもいまに始まった問題ではありません。


 シングルマザーは女性であることにより不安定な職に就かざるを得ず、家計を支えながら育児を続ける困難を強いられ、さらには居住差別により民間賃貸住宅への入居が阻まれています。障害がある場合には、住宅改造のために貸主の理解を得ることや情報提供等も含めてバリアフリー化さていない問題があります。また、障害や病気を理由にして、入居や居住建設等に反対されるなど、居住差別もあとを絶ちません。外国人労働者についても、習慣・言葉が異なることへの不安としてなかば公然と同様の差別がはびこっています。野宿労働者は、最後のセーフティネットである生活保護の申請も水際作戦や稼働能力を問題とされることで阻まれ、さらには劣悪な第2種社会福祉事業施設への入居を強いられています。また、2006年度の日本賃貸住宅管理協会の調査では、管理を委託している家主のうち、単身高齢者及び高齢者のみ世帯を不可とする家主は15.5%に及び、高齢世帯が賃貸住宅を排除される比率が一番高くなっています。


 これらはいずれも同様に住まいの貧困の問題であり、その根底にはこの国の居住政策の貧弱さが横たわっているのです。


 この国の居住政策は、まずは職を確保することを優先し、居住の権利をないがしろにしてきました。社宅をはじめとする企業福祉に住まいの保障を依存し、足並みをそろえるように持ち家政策が進められ、そのレールに乗れない者の居住の権利が顧みられることはほとんどありませんでした。すべての人に基本的人権としての住まいを保障するといった政策とは逆に、生存に直結する住まいの提供を民間市場に委ねてきた結果、公的賃貸住宅は全住宅の6.7%に過ぎません(総務省・2003年度住宅・土地統計調査)。また、中でも生活困窮者の住まいのセーフティネットとされている公営住宅については、応募倍率が全国平均で約9.6倍、東京都では34.3倍にも上ります(国土交通省2006年度発表)。また、公営住宅への入居はごく制限された条件があり、たとえば若年層単身者の入居は認められていません。このことからも公的な住宅供給が不十分であることは明らかです。


 私たちは、あらゆる差別の撤廃を求めるとともに、ハウジングプア状態に置かれた人たち全体が、安心できる住居を確保できるよう、公共住宅を拡大し、民間賃貸住宅への居住対策として低所得者向けの公的支援制度を導入するよう求めます。


 また、これまでも借家人が立ち退きを求められる紛争はありましたが、いまやいたるところで紛争が起こっており、局地的な紛争であったものが全面化されています。いったん紛争に巻き込まれた借家人は居住を奪われるのではという大きな不安に脅かされながら、組織である業者に対し、個人で立ち向かわねばなりません。いま求められているのは、家主や業者に比べ圧倒的に立場の弱い借家人が相互に連帯し、助け合い、対抗し、安心できる住まいを勝ち取り、確保していくことです。


 安心できる住まいをすべての人々の手に取り戻すため、ともに立ち上がりましょう。