戦争は、最大の環境破壊であるという指摘がある。
すなわち、戦争は多大な人命の損失を生むのと同時に、物質的環境を破壊する。例としては通常兵器の大量使用や原爆投下による焦土があるだろう。戦争によって環境が破壊され無に帰されるだけでなく、その後も影響を与え続ける場合があると考えられている。劣化ウラン兵器の使用がそれにあたる。通常兵器による攻撃は、ただ破壊を生むだけであると言えるとすれば、劣化ウラン兵器の使用は破壊と放射能による長期的な影響をその地域に与える。劣化ウランとはなんなのか、なぜ劣化ウラン兵器は使用されるのかを検証し、その与える影響、国際社会の対応を考察し、今後の方向性に示唆を与えたい。
劣化ウランとはなんなのか
劣化ウランとは濃縮ウランをつくる際にできる廃棄物のことである。天然ウランにはウラン238とウラン235がある。ウラン238は核分裂しにくく、半減期が約45億年であり、ウラン235は核分裂しやすく、半減期は約7億年である。ウラン濃縮をすることによってウラン235の濃度が天然ウランより高い濃縮ウランと濃度が天然ウランより低い劣化ウランが生成される。ウラン濃縮の目的物である濃縮ウランは、濃度に違いが大きく3つあり、ウラン核兵器や原子力発電所で使用する核燃料、原子力空母など、濃度の違いで使われ方が異なる。そして、廃棄物として劣化ウランは作り出される。劣化ウランももちろん放射性物質である。主成分はウラン238であり、出す放射線の破壊力は大きいが半減期が約45億年と長いので放射線を出す頻度が小さいアルファ線である。
劣化ウランは軍事利用と民事利用がなされており、軍事利用としては劣化ウラン兵器、戦車等の装甲補強など、民事利用としては航空機のカウンターウェイト、高速増殖炉のブランケット燃料などに使われる。煙草という作物はリン酸肥料を大量消費し、リン酸の基である、リン鉱石は比較的多くのウランを含んでいる。そのため煙草の煙には、ウラン238の崩壊産物であるポロニウム210が含まれている。したがって、劣化ウランは天然には存在しないが、人類が作り出した人工的な物質であり、放射能を持つ放射性物質である。劣化ウランを生成しているのは、天然ウランを使用する原子力発電所ではなく、濃縮ウランを使用する軽水炉型原子力発電所用など、天然ウランを濃縮ウランとするためのウラン濃縮工場である。劣化ウランは、その大部分を半減期の長いウラン238が占めており、その約45億年という半減期は今後予想される太陽の赤色巨星化に伴う地球の消滅まで続いていくと言え、劣化ウラン汚染は「永遠」の問題と言える。
なぜ劣化ウラン兵器は使用されるのか
劣化ウラン兵器とは、簡潔に言うと、核兵器と違って爆風や熱は通常兵器並みであるが、放射能汚染をもたらす兵器である。タングステンや鉛で強化した砲弾より貫通力が大きく安価である利点がある。また燃焼したウラン粉末の吸入により内部被曝が起こると思われる。
その特長を詳しくみていくと、まず安価であることが挙げられる。劣化ウランは濃縮ウランを取り出す際にでる廃棄物であり、廃棄物であるために安価に手に入れることができる。また、劣化ウランはもっとも固い鉱物のひとつであり、貫通力が同サイズの鋼鉄の砲弾と比較すると2.4倍にもなる。そして、劣化ウランの比重は鉄の約2.5倍、鉛の1.7倍であるため、それを使用した砲弾の弾道は、放物線よりも直線に近く、そのため射程距離も長く、命中精度も高いという特長がある。さらには、衝突すると「自己先鋭化現象」を起こし、貫通力が一層高まるのみならず、戦車内部において高熱で燃焼するため、対戦車砲弾の先端に用いる貫通体として理想的だと思われた。貫通力の高いタングステン砲弾はコストが高いため、安価に手にできる劣化ウラン兵器は同じ以上の貫通力を有し、有利である。
衝突して延焼する際、劣化ウランの最大70%がエアロゾル状の超微粒子となって大気中に拡散する。劣化ウランは重金属として化学的毒性も極めて高く、放射線毒性に関しても天然ウランの約60%の放射能を有し、その半減期は約45億年である。劣化ウランの微粒子は大気中にあれば、放射するアルファ線はせいぜい数センチしか届かず、薄い紙1枚で遮断されるが、人体に取り込まれた劣化ウラン粒子が、排泄されずに様々な細胞の中に入り込んでしまうと、周囲数ミリの細胞は放射線を浴びせ続けられることになる。したがって人体への内部被曝を引き起こす要因にもなる。
また、以上のような特徴を持つために、軍事的観点からも、相手から攻撃を受けることなく圧倒的火力を持って機甲部隊や強化目標を破壊できる特長がある。つまり、味方の損害を最小限にとどめ、相手に壊滅的な打撃を与えられるということである。
以上のように、劣化ウラン兵器はその有用性が高く、軍事的な観点から戦闘において使用するのに適した兵器であると考えられ、積極的に湾岸戦争以降使われるようになったと言える。
(続)
参考文献
戸田清著 『環境正義と平和-「アメリカ問題」を考える』 法律文化社 2009年
佐藤真紀編著 『ヒバクシャになったイラク帰還兵―劣化ウラン弾の被害を告発する』大月書店 2006年
劣化ウラン研究会著 『放射能兵器劣化ウラン―核の戦場ウラン汚染地帯』 技術と人間 2003年
NO DU ヒロシマ・プロジェクト他編著 『ウラン兵器なき世界をめざして―ICBUWの挑戦―』 合同出版 2008年
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