雨が帽子のつばから滴る。この時間、いつもなら人でにぎわう井の頭公園も、人の気配はまばらであった。
雨の上がった隙に走り回っておこう、と勇んで家を飛び出たのはよいが、途中からまた、本格的に降りだしたのだ。雨の井の頭公園、写真。
やれやれ、と村上春樹ふうに思ってみる。
そのうち雨脚も強まってきて、ああもうずぶ濡れではないか、とあきらめた瞬間に、急にスイッチが入ったかのように、楽しくなってきた。
久しぶりに先日見た映画、"シャイン"で全裸ヘッドホンでトランポリンで跳ねまくるヘルフゴッド氏の気持ちに近いような。ちなみにちゃんと服は着ている。
晴れている日にのほほんと走っている心地よさとはまた違った、はっきりいうと雨の中、俺は走っている。というストイシズムとナルシズム、さらにまた、もっとボクをびしょ濡れにしてください、というという持ち前のM感がカフェオレのように混じり合った気持ちの悪い気持ちよさに、私たちは高揚するのだ。誰だ私たちって。
神戸に住んでいた頃、近所には外国人もたくさんいて、なかにはモデルのような美しい白人娘もいたりした。
まだ蒸し暑い夏の終わりの、ある激しく雨の降る昼下がりにふと窓の外を見てみると、私の家から坂を下った車道で、その白人娘はなんとTシャツにパンツ一丁ではしゃぎまわっている。しかも友達らしきやはり美しいモデル娘これもまたパンイチと二人だ。
ここここれは!!
と思い、急いで家を飛び出て坂を下ると、残念なことに娘たちは車道向かいの自宅マンションにさっさと撤収するところだった。
ワンモアタイム、プリーズ。
そんなことはとても言えない。ふりしきる雨の中、まぬけなスケベ面の私はすごすごと何事もなかったかのように家に帰ったのだった。
雨の日にはサンバが似合う。これ最高。