〈きろきろ〉は現代語のきょろきょろに当たる擬音語です。然るにこんな一文、〈きろきろとなし奉りても、時の間の御命を助け奉りて〉。運命に弄ばれていまやか細い息で尼になることを切に願う姫です。命が永らえるならと、髪を失う辛さを姫と見つめる乳母たち、〈くりくり頭にして差し上げてでも〉。

 

 
 

まずは〈御帳の後ろにすべりおり給ふも、わだわだとわななかれて〉、つづいて〈思すに恐ろしくて、わだわだと震はれ〉。わが子をひと目見たさに女の屋敷に忍び込むと大将はその姿にわななきます。そしてそんな自分の行いを誰かに見られはしまいかと震えるわけですが、この〈わだわだ〉、そうわなわな。

 

 

〈枯野の色したる御衣どもの、濃く薄くすぎすぎなるに〉、突然の叔母の薨去に弔意の鈍色の衣を召す宮を遠くに見つめて、色合いの重みでくすんでしまいそうなものだが、艶めかしくあるのはやはりその美貌故だと改めて宮に目を奪われる大将です。〈すぎすぎ〉とは枯れた色の濃淡を〈次々と〉重ねたさま。

 

 

〈うとうとし〉、つい白河夜船にこっくりとするさまが浮かぶ音の並びですが、こんな具合。〈聞くやうなるうとうとしさならば、形見などあながち偲ばでも〉、先日聞いた程度の女性との仲ならば、形見まで持ち出して偲ぶというのはどうか。女性への思いは人一倍ながら一方的、まさに〈よそよそしい〉。

 

 

知らぬこととは言え、主家である自分の恋人を横取りした上、おめおめと自分の前へ離京の挨拶に罷り来るとは。〈げに生公達よりは、きらきらしげに目やすきを〉、なまじっか三品の貴族などよりも〈堂々と立派な〉見映えで、まあこの男ぶりならば然様なこともしかねまい、それにしても腹に据えかねる

 

 

どちらもポチっとお願いします♪

  

 

 

前記事 >>>

「 映画ひとつ(づり)、田辺若男『俳優舞台生活五十年』 」

 

■ フォローよろしくお願いします ■

『 こけさんの、なま煮えなま焼けなま齧り 』 五十女こけ