太陽は光り輝く
  監督 : ジョン・フォード
  製作 : アメリカ

  作年 : 1953年
  出演 : チャールズ・ウィニンジャー / アーリーン・ウィラン / ジョン・ラッセル / ジェーン・ダーウェル

 


戦前にウィル・ロジャースで撮られた『プリースト判事』が20年の歳月を経て戦後にふたたび巻を紐解かれます。判事の気障な好敵手であるメイデューともまたまた次回判事を巡って熾烈な選挙戦を展開中です。些細な事柄でも選挙の動向を左右するそんなひりひりとした時によりにもよって判事にはそれこそ判事人生、どころかその小さな体ごと呑み込みかねない難題が次から次へ押し寄せてまいります。ひとつは港をうろついては日がなバンジョーを弾き鳴らしている息子に業を煮やした黒人の父親からの訴えです。この父親は南北戦争において兵士の遺骸を担いで帰郷してきて判事とは古馴染みでして温情な裁きで少年を農園に送ったまではよかったのですが、当園にたまたま通り掛かった保安官はこの少年があわやリンチで吊るし首に合っているところを助けます。聞けば農園で白人少女の暴行事件が起こりいくら潔白を訴えても聞く耳を持たないまま制裁を受ける寸前だったと泣いています。そうであれば手に手に武器を持った農園の男たちが少年を匿うこの町を襲うのは時間の問題で、護衛の確認に判事が行ってみると事態を察して保安官補は逃げてしまって... いやはややって来ましたよ、目に目に憎悪を滾らせ皆して何かガソリンの入った大きな桶のように身を寄せ合って揺れながらいまにも火のつきそうな感情の昂ぶりで判事に詰め寄ってきます。この絶体絶命を判事はひとりでどう乗り切るのか...  いやあこれでもおわかりのように南部の荒々しい気風を残す(どころか厳然と生きている)土地柄であります。何せ判事を初め南北戦争の折青年兵士だった面々の、いまでも精神的な支柱である老将軍は戦後にふしだらに陥ったわが息子を許さず(彼はやがてならず者の手に掛かってどこぞで息絶え)彼の妻もそして孫すらも屋敷の門をくぐらせることのない厳格さです。しかしその妻は女の身で荒くれた土地を渡って行った果てにこの町に辿り着いたときにはひとりの息絶えかけた娼婦となっています。やがて娼館で息を引き取った彼女は苦しかったその人生から解き放たれ故郷に許されて帰るためにも牧師による正式の葬儀を娼館の女主人に託します。しかし彼女の過去といまを思えば保守的な町のひとたちがすんなり通してくれるとは思えません。現に牧師は恐れて逃げてしまい、女主人は判事に救いを求めに来たのです。大っぴらに葬儀をすれば或いは力づくの妨害があることを一番知っているのは判事です、挙句に伯仲する選挙の大詰めに町のひとたちの大半を敵に廻すことになるとは... しかし数日自分の許にいただけの女に女主人は私財と命を賭けてでもやり遂げる覚悟です、とっくに死んでいる体を引きずってまで故郷に帰ってきた女のその心根を叶えてやるために。判事も肚を括ります。娼婦たちと判事ひとりという葬列が日曜日の往来を静かに進んでいきます、見据える町のひとたちの只中をゆっくりと、ゆっくりと。


 

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