最終章 “卒園式”

あんなかんじで毎日が過ぎた。
その時はなんとなくよっちゃんがきになってて。

園児を代表してうちが前に出る。
『平成十六年、太田夢乃。』
先生がなんかジェスチャーをおくってる。
『礼!』
『あ…。』

とりあえずお礼をしなおして喋った。

『夢乃ちゃん上手だったよ。』
『先生ありがとー!』
ほかの子も話しかけてくる。
『間違えたの?』
『うん…。』
『そっか。』

『本当に居なくなっちゃうんだね。』
『そうよ。』
『…もう会えない?』
『そうね、いつかまた会えるわ。』
『…。』
幼いうちにも分かった。
『卒園』すると言うこと。

いつもは『泣かないで。』と言う先生も泣いた。

泣くうちを慰めるママ。

『夢ちゃん、帰ろ。』
『っく。』
うちは静かに頷く。


帰る前に全員と話した。

『バイバイ!』
『またいつか会おうね。』

いつもはクールなつばさもしんちゃんも泣いてる。

『バイバイ。』

なんで『バイバイ』って言っちゃったんだろ。

もう会えなくなるかもしれないのに。

うちはバカだな…。

『ママ、行こ。』

三年間ここで過ごした思い出が胸いっぱいに溢れた。


『バイバイ…。』
意味もなく泣いたり、女子に嫌味をいわれて寂しかったり…。

色々あった三年間。
人生のごく一部だけどうちにとっては大切な思い出。

今ではあまり、名前覚えてないけど、
薄れてく記憶をそのままにしたくない。


『あの時は幸せだった。』
そうは言えないけど…。

あの時、よっちゃんなんか好きじゃ無かった。

でも、ピアノを習いに行く途中、幼稚園を見るとよっちゃんとの思い出が溢れ出す。

『夢乃ちゃん、遊ぼ!』

今ではよっちゃんとの思い出が恋しくてたまらない。

誤解されてるかもしれないけど、
『思い出』が恋しい訳じゃない。

よっちゃん自身が恋しいの。


よっちゃんがこれを読んでいるなら、
幼稚園の時の連絡網みて。

もしもないなら、なんかで教えてくれれば連絡するよ。

連絡先が変わってなければね。
第三章 “嫉妬”

みんなと仲良くしたうちは、クラスで人気のつばさとしんちゃんがいつも隣にいた。

女子とも仲良くしてるのに。
幼児とはいえ女は女。

『ねえ!よけてよ。』
『私しんちゃんと遊ぶんだから。』
『う…うん。』

うちは外が嫌い。
昔から喘息持ちで、少し走るだけで苦しい。
今でもそう。

『夢乃ちゃん、外行こう。』
『ん…うちよっちゃんとお絵描きする。』

『あっそ。』

自分から苦しくなりたくないもん。

苦しくなったら泣きたくなるけど、
冷たい態度にも泣きたくなる。

『寂しいな。』


『夢乃ちゃん、何の絵かいてるの?』
『りんご。よっちゃんは?』
『僕の病院。』

よっちゃんの家は動物病院。

『うち、猫好き!』
『そうなんだ。』

小さい時は飼ってた。
でもアレルギーってわかってから飼ってない。


『夢乃ちゃん、僕とつばさとでつみき遊びしよ。』

『うんっ!』

つみき遊びしてても
『しーんちゃぁん!』
『つばさくぅん。』

他の女の子が邪魔する。

遊びたいだけなのに。
うちには遊ぶことすら許されない。

『なにつくってんの?』
『お城…。』
『ちっちゃいね。』
『…。』
『だーん!』
『あぁ!!!』
『あははっ壊れちゃったぁ。』
『せっかく作ったのにっ。』
『しんちゃん!あっちで遊ぼ。』

つまんないな。


気付けば絵本の世界。
本はうちからにげたりしない。
『先生、これ読んで。』
『なになに?』
先生は本を読むのが上手。
『ゴリラさんが玉ねぎの皮をむいて…むいて…。』
本の内容に爆笑するうち。
『あれっなくなっちゃった。』
『あははっ!面白いっ。』
『おしまい。』
『じゃあうちピアノ弾く!』
この為にむすんでひらいてをマスターした。

『夢乃ちゃんすごいね。』
『うんっ!』

うちはこうして暇をつぶした。
でも、女子に人気の無いよっちゃんはうちと遊んでくれた。
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第二章 “水泳”

『今日は水泳です。』
『せんせー!』
『なに?』
『僕風邪気味ででられません!』
『じゃあ休むのは夢乃ちゃんと…。』
うちはアトピーでプールにはいれない。
『夢乃ちゃん、二階で大富豪しよ。』
『うん、いいよ。』
『つばさどうする?』
『僕、夢乃ちゃんとお飯事したいな。』
『うちはどっちでもいいよ。』
『じゃあ僕もお飯事する!』
『じゃあ、あっち行こう。』
『うちお母さん!』
『僕お父さん。』
『僕もお父さんが良い!』
『じゃあ二人のお父さんだね。』
『そだね。』


みんなと一緒にいる時間が楽しい。
みんなと一緒にいれれば良い、そう思ってた。

『あっ!みんな帰ってきた!』
『本当だ。むかえにいこ!』

昔っから人の気持ちを考えず行動する癖。

『おかえりー!』
『ただいま!』
『楽しかった?』
『うん!』
『いいなぁ!』
『さっご飯!』

『いただきます。』
うちの幼稚園はお弁当制で、たまに給食。
『あら、夢乃ちゃんのお弁当美味しそうね。』
先生が笑顔で見てる。
『ママが作ってくれたの。』
『お母さん料理上手いんだね。』
『うん!』
水泳の後はみんなが色々な話をしてくれる。
『今日はしんちゃんがねー。』
『なになに?』

水泳が出来なかったことも有り、うちは海が大好きだ。

アトピーは、今もある。
水泳が出来ない程ではないけど、幼稚園時代の思い出の一つだ。