第十二章 “仕事”

お母さんに負担をかける訳には行かなかった。
お母さんが働く時間を増やして体調を崩したら嫌だから。
私はみんなに相談して私でも出来る仕事をさがした。

仕事を決めるきっかけは、あるクラスの子の言葉がきっかけになった。
『美優ちゃんモデルやれば?』
その子のお父さんは芸能関係に勤めている。
私はモデルに託した。

でも、所属しようと思ったのはそこじゃない。

意外と有名な事務所。
書類試験は受かった。
私はオーディションを受けた。

『お名前は…鳴海 美優さんですね?』
『はい!』
『桜庭高校普通科ですね?』
『はい!』
『なぜ車椅子なのですか?』
『ある事故で右脳を損傷してしまったからです。』
『そうですか…。』
他にも色々聞かれた。
『では、来月までに結果をお知らせします。』
『ありがとう御座いました。』
やっぱ左半分つかえないと駄目かな?
今はリハビリですこしは使えるけど…。
ダメ元で審査結果を待とう!

三週間後、審査結果がでた。

『鳴海 美優様 第二次試験 合格』
こんな短い文章だけどうれしい

私はモデルとして働ける様になった。
学校でその噂は広まった。
『普通科からモデル出してね!』
『頑張れ!』
私も絶対売れてお母さんに楽をさせたかった。

今日は雑誌の一ページの撮影。

『美優さん、芸名どうする?』
『えー。電話していいですか?』
『ええ。』

私は俊に電話した。
『えっ?芸名?』
『うん。』
『美優でいいよ。美優なんだし。』
『いいね!ありがとう。』
私は考えた。
美優…みゆう…みゅう。
『みゅうで!』
『OK。』
その日から私の芸名はみゅう。

私が今日やるページはデートのページ。
一緒に撮影する子は可愛くて、慣れてる子。

『美優ちゃんよろしくね!』
『今日の撮影って…。』
『大丈夫!座れるから。』
設定は公園デートらしい。
春っぽいワンピースを着た。
彼氏役の男の子がお弁当をあーんして、
私が食べるシーン。
撮影は一発合格した。
バイトの人が飲み物を運んで来る。
『どうぞ。』
あれ…。俊に似てる!
『あれっ俊じゃない?』
『美優!?』
『バイト先ってここだったんだ!』

『あら、山陰くんが人を呼び捨てにするなんて珍しい。どうゆう関係?』
一緒に撮影した祐美ちゃんが聞いた。
『ああ、付き合ってるんです。』
『へー。』
すると、プロデューサーが出てきて、
『ちょっとまって!』
『はい?』
私達は声をそろえた。
『二人ならんで写真とろ!衣装かえてきて!』

私と俊は言われるがままに着替えた。

私はいつもの眼帯にロリ系の衣装。
俊はゴス系の衣装。

『美優ちゃん左半分つかえないよね?』
『はい!』
『じゃ山陰くん、美優ちゃんをお姫様だっこして!』
『はい。』
俊は私をひょいっと持ち上げた。

『顔近づけて!』
最終的に頬と頬がくっついてる。
『こうですか?』
『OK!』
シャッターが光った。

後から写真を見たけど、やっぱプロのカメラマンさんは凄い!

私はデートのページと俊とのページ。
二ページにでた。

雑誌の発行日がたのしみ♪
第十一章 “退院”

私の目がさめたとき、お母さんはないていた。
『お父さんが亡くなったわ…。』
『え…。』
『入院費はお母さんが仕事ふやすし、お父さんの保険があるから。』
『お父さんが…。』
『落ち着いたらお葬式をしましょう。』
『うん…。』
お母さんが帰った後、工藤さんが入ってきた。
『泣きたいなら泣いていいわよ。』
私は工藤さんにしがみついて泣いた。
『よくお母さんの前で我慢出来たね。』
工藤さんの優しい声と香りで涙がでる。
『亡くなったお父さんのためにも完治しよう!』
『はい!』
私は一時間位泣いて、泣きつかれて寝た。夢の中でお父さんとの思い出が思い出される。
遊んでくれたお父さん。
勉強を教えてくれたお父さん。
笑ってるお父さん。

全部私のお父さん。

目がさめた時、またお母さんがいた。
『お父さんの遺品を整理してたら、こんなの出てきたの。』
お母さんが差し出した手には、
アクアマリンの指輪とメッセージ。
『美優の二十歳の誕生日に渡す。』

これって…。
十歳位の時、お父さんとデパートに行った時に私が欲しいとねだった時、
『二十になったらあげる。』
って。
買っててくれたんだ。
指輪の裏になんか書いてある。
日本語で…。
『私はいつもここにいます。』
この指輪がお父さんの形見。
私は指輪をはめた。
『お母さん…ありがとう。』
『いいえ、お礼ならお父さんにいいなさい。』
お父さんはもう戻ってこない。
でも、ここにいる。
なんだかずっとお父さんといる気がして嬉しい。


五回目の手術なだけあって、白血病は完治した。
それと同時に退院した。

退院してからお葬式があった。
お父さんの死を突きつけられて苦しかった。
でも、お父さんの分も幸せに生きよう!
お父さんの様に素敵な家庭を築きたいから。
第十章 “父の死”

車椅子で三十分、私の家に着く。
途中、工藤さんのメールに返信した。
『めちゃくちゃ楽しかったよ(^O^)
今からお家に行くんだヾ( ´ー`)
もちょっと俊といたかったな(^_^;)』

メールしていたら、家に着いた。
『お父さん、お母さん!美優だよ、開けて!』
お父さん達はすぐに出て来た。
『美優!久しぶり。』
家には友達もいた。
『おっ!眼帯&車椅子使ってくれてる!』
『今日は楽しも!』
いつものみんなのテンションだ。
色々な話をした。
『まさか俊君と付き合ってるとは…。』
『いつも苗字で呼んでるから。』
『付き合ったの結構最近だよ!』
『そうなんだ!』
『美優、ちょっといいか?』
お父さんに呼ばれた。
『なに?』
『これ、欲しがってたろ?』
なにか分からないけど、結構高いブランドの袋。
あけると前から狙ってたバルーンスカートのワンピース。
『これ、一万五千円もするのに!』
『その位良いんだ。きっとお前に似合うから。』
『着てくる!』
私は自分の部屋に上がった。
今更階段に手すりがあって良かったと思った。
お気に入りのサロペットよりお気に入りにしたい。
この格好変じゃないよね?
はやくみんなに見せたい!
私は落ちない様ゆっくり階段から下りた。
『お父さん!着たよ。』
『やっぱり似合う!』
『さすが美優ちゃん!』
いつも笑わないお父さんが笑ってる。
『あら、美優は何でも着こなすわね。』
ファッションにうるさいお母さんも。
嬉しかった。
みんなが帰って、サロペットに着替えて下に戻った時、
お父さんが気分悪そうな顔をしている。
『お父さん、どうしたの?』
『いや…ちょっとな…。』
『ならいいけど…。』
ちょっとしてからお父さんが苦しみだした。
『うっ!』
お腹を押さえて苦しんでる。
『お父さん!お母さん大変。お父さんが!』
『あなた!美優、声をかけてて。私は救急車呼ぶから。』
お母さんが救急車をよんだ後、私はパニックになった。
『お父さんが…お父さんが…。』
『美優、落ち着いて!』
私の心臓はいままでにないくらいドクドク言っていた。
『お父さん!お父さん!』
『美優!』
あれ…鼻血…。
『鼻血…。なんでこんな時に!』
私はすっかり工藤さんの言葉を忘れていた。
『心臓に悪い事はやっちゃだめよ。』
あの言葉を理解したはずなのに…。
『美優、ティッシュ!』
私の鼻血は止まらない。
『お母さん…苦しい!』
『美優!大丈夫よ。』
お母さんが前に来たとき、私は血を吐いて倒れ込んだ。
お母さんは血まみれになった。
『美優!あなた!しっかりして!』
『お母さん!苦しいよ!』
『美優!』
お母さんが泣いたのを初めてみた。
お母さんが私を抱きかかえて泣いてる時に救急車が来た。
『大丈夫ですか?』
『夫は意識が無くて娘は意識があるんです!お願いです、助けてください!』
『最善をつくします。奥様も救急車に乗って下さい。』
お母さんからは私の血と涙が落ちて、
隊員さんがお母さんをなだめていた。
お母さんは震えていて、顔は真っ青だった。
私は苦しくて、お母さんに声をかけたくてもかけられなかった。
病院に着いた時、お母さんは病院のシャワー室に行った。

そして、私の最愛の父は急性心臓麻痺で亡くなった。
そして母は泣く様になった。

家庭を支えていた父が亡くなったのはやっぱり大きかった。