Side−S
マサキから「オレが庇った」理由が知りたいと懇願された。
「マサキには、姉がいたな?」
「はい、サクという姉がおりますが、それがなにか…」
「サク王女を探してくれと、翠の国王から頼まれたのだ。」
「サク姉さまを…?」
「サク王女が行方知れずになっている。秘密裏に探しているはいるのだが、依然として、まだ足取りが掴めていない。」
「サク姉さまのことと、俺を庇ったことは何か関係があるのですか?」
「今はまだ言えぬ。サク王女が見つかれば全て話そう。」
「……。」
「不満そうだな。」
「…不満ではありません。」
そのふくれっ面は不満だと顔に書いてあるのと同じだろう?
…仕方がない。オレは少しだけ理由を話すことにした。
「マサキは此度の戦がなぜ起きたのか、知っているか?」
「秀の国が近隣の諸国を手に入れる為だと、承知しておりますが…」
「その秀の国が一番欲している国が、翠の国だということは?」
「…えっ?!」
「やはり知らなかったのか。無理もない…」
「教えて下さい。何故翠の国が…」
「翠の国と言うより、『例の場所』を欲していると言ったほうが正しいだろうな…」
「『例の場所』とは…一体?」
「『例の場所』とは、『翡翠の谷』のことだ。」
「翡翠の…谷?」
「文字通り、翡翠で出来た谷のことだ。誰の目にも触れることなく、代々の国王に引き継がれているという伝説の谷だ。」
「…伝説の…谷」
「マサキは国王から何も聞かされていないのか…?」
「……はい。」
…やはり、な。オレの推測が正しければ、翠の国の次期国王は…
「マサキ、オレと一緒に翠の国へ行こう。」
「…えっ?」
「此度の和睦は、短期間のものだ。国王は近々退位すると仰っていた。そうなれば、我が炎の国は新国王と和睦を結ばねばならなくなる。」
「ショウさまは…翠の国とは、戦うつもりはないのですか?」
「当たり前だ。オレは無益な争い事をしたくない。それに…」
「それに?」
「翠の国にはマサキという、オレの愛するこの世で一番大切な人がいるからな。」
「…ショウさま」
「膳は急げだ、マサキ。私の父、炎の国王に挨拶を済ませたら、直ぐに翠の国へと出掛けるぞ!」
「…ハイ!」
マサキの瞳に覚悟が宿ったような気がした。
この先、マサキの身に何が待ち受けているのかも知らずに…
やっと、マサキの姉上、再登場!😅
↓
…つづく。