Side−S


『一緒に帰ろう』


部活終わりにスマホを見ると、相葉先輩からのメールが着ていた。 


後片付けとミーティングが終わると、オレはシャワーもそこそこに大急ぎで制服に着替えて、待ち合わせ場所の校門まで駆けた。


「はぁ…っ…はあ…っ…あ…いば…せん…ぱいっ!お待たせ…っ…しまっ…したっ…!はぁ…っ!」

「そんなに急がなくても良かったのに。でも、嬉しい」


相葉先輩の笑顔を見てたら、胸が苦しくなった。


「歩きながら話そうか?」

「は…い」


まだ息が整なわないオレを気遣ってか、相葉先輩がスポドリをオレに手渡してくれた。


「飲んで?一旦、落ち着こう?」

「…ん、はい」


夜の8時近くなのに辺りはまだ明るくて、相葉先輩と並んで歩くのが何となく照れ臭かったから、オレは少し遅れてその後ろを歩いた。


「翔くん…」

「ハイ」


「俺と付き合うのって、抵抗ある?」

「えっ?」


「だって…男同士で『恋人』って言ったことで、翔くんに迷惑掛けたみたいだし…」

「あ…それは…」


「滝沢先生から聞いたの。そのことで…なんか…揶揄われたって…」

「オレは…」


気にしていない…そうひとこと言えば、済む話なのに…。喉に何かが詰まったみたいで、思うように話せない。


「翔くん。俺は翔くんの『特別』になりたいって思ってる。翔くんは俺のこと、どう思ってるの?」

「オレは…」


相葉先輩とは、気持ちの温度差があるみたいで…


「オレにとって…相葉先輩は、憧れの存在で…」

「憧れ?俺が?」


「なんて言うか…。オレが相葉先輩の隣りに居てもいいのかな…って」

「そっか…」


相葉先輩はオレの手を掴むと、公園の方へ歩き出した。


何となく、人気の無い場所へ歩いているような気がしたら…



「翔くん…」

オレの名前を呼ぶと、相葉先輩はオレを強く抱きしめた。


「…あの、相葉先輩…?」


「今は…並んで歩けなくても、いつかは…俺の隣りに居て欲しい。」


初めて聞く、相葉先輩の切ない声だった。


「初めてなんだよ。こんなに人を好きになったの」



…ドク…ン!


胸が痛くなるほど、大きく鳴った。


オレは、こんな相葉先輩の心を受け止めることが出来るんだろうか…


不安に押し潰されそうで、でも相葉先輩の腕を振り解くことも出来ず、オレはただじっと、相葉先輩の温もりに包まれていた。





…つづく。