昨日は務川慧悟くんをソリストに迎えたプラハフィルハーモニア管弦楽団のコンサートを聴きにびわ湖ホールに行ってきました。

海外からのソリストや指揮者の来日は再開されつつあるものの、オーケストラについては計画されても実現されるのはかなり困難な状況が続いていて、このプラハ・フィルは昨年のウィーン・フィル()以来となります。

この秋もRCO、ベルリンフィル、パリ管などのオケが次々と来日中止となる中、ウィーンフィルのような名門で日本とのパイプも太いオケならまだしも、失礼ながらあまり著名でもないプラハフィルが、これまた、あまり大手なのかわからない光藍社というところに招聘されて本当にツアーが出来るのかと、直前まで疑っていました。しかし、今回ツアーを実現した光藍社はTwitterに以下のような投稿をしています。

「光藍社ではこの夏から海外のアーティストを招聘した公演を再開していますが、開催に漕ぎ着けることができた背景として、アーティストの皆様が厳しい隔離措置、行動制限など様々な要請を受け入れて下さり、渡航の直前まで入国許可が降りるか分からない状況で信じて待ってくださったことが大きいです。」

それだけで実現できたということではないだろうし、招聘元の働きかけも大きかったに違いないと思いますが、オケも厳しい隔離措置、行動制限など様々な要請を受け入れて下さったからこそと思うと感謝しかありません。

パンフレットによると、プラハ・フィルは1994年創設とのことなので、比較的新しいオケのようですが、とにかく、こんなご時世に来日してくれたことが嬉しかったです。

演目の「モルダウ」と「新世界より」はチェコの偉大な作曲家の作品だし、きっと心を込めて演奏してくださると思っていました。

そして、ソリストはまだ生で聴いたことがない務川慧悟くんで、演目はラフコン2。これも楽しみでした。

 

 
 

出演

指揮:レオシュ・スワロフスキー
ピアノ:務川慧悟
管弦楽:プラハ・フィルハーモニア管弦楽団
 

[プログラム]

前半

スメタナ:交響詩「わが祖国」より”モルダウ”

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18

 第1楽章 Moderato

 第2楽章 Adagio sostenuto

 第3楽章 Allegro scherzando

後半

ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界より」

 

 第1楽章 Adagio - Allegro molto
 第2楽章 Largo
 第3楽章 Scherzo. Molto viv5.

 第4楽章 Allegro con fuoco

 

[アンコール]

ソリストアンコール:J.S.バッハ:フランス組曲第5番
オーケストラアンコール:ドヴォルザーク:スラブ舞曲第15番

 

オケ弦5部は前後半とも12-10-8-6-4。

最初のモルダウ、冒頭のフルートの音がとても綺麗。気持ちだけかもしれないけど、やっぱりチェコのオケが演奏してくれる「我が祖国」はいいように思う。最後の「ジャン!」まで、ずっと気持ちよく聴けました。


続いて、務川くんが登場。思っていた以上に小柄で細い。
ブロ友さんがよく注目されている最初の鐘の和音は、ずらさず同時。

その後、一旦、ピアノが休止になったら速攻で、椅子の高さと前後位置を微調整。ちょっとしっくりきていなかったようです。

この曲を前回、生で聴いたのは、4月の京響との小曽根真さん演奏()で、この時は随分ジャジーなラフコンでしたが、今回はクラシックど真ん中の演奏。
強音を弾く時は、頭をガンガン振りながら渾身の演奏で、弱音はしっとりしていて繊細な弾き方。
ためが上手くて、音は勿論のこと、鍵盤から離れる時の左手の動きがカッコいい。
力強さは反田くんのほうがあるように思いましたが、務川くんは全般的に華麗な演奏の中に力強さと繊細さをバランスよく兼ね備えているような演奏と感じました。演奏技術のことがあまりわからいので、抽象的な感想ですが。

また、テンポの揺らしもあって、オケとピアノのタイミング合わせについては、スワロフスキーさんも務川くんも双方、お互いをよくよく注視しながら計っているように思えました。

演奏後はステージ前方に出て、丁寧に何度も客席にお辞儀。務川くんが何度もお辞儀をしているのが見えなかったのか、同時にスワロフスキーさんがオケのメンバーを立たせたりしていて、どっちに拍手されているのかわからないような状態になりましたが、双方ということでいいことにしておきます。

ソリストアンコールのバッハは美しかったです。


後半は新世界より。

これを聴くのは、7月の原田慶太楼指揮による京響()の演奏以来。

この時もエキサイティングな素晴らしい演奏でしたが、昨日は、もっと素朴な優しい感じ。
比較的、ゆっくりゆったりとしたテンポで、これも思い込みですが、祖国愛を感じる演奏。

スワロフスキーさんは、ラフコンの時だけ譜面台を使っていましたが、モルダウと、この曲は、暗譜で各パートに指示していました。

もう曲が身体に沁み込んでいるんだと思います。


アンコールは日本語で「ドヴォルザークの:スラブぶきょくだい15ばん」と紹介し、最後は客席のほうに振り返ってフィニッシュ。
数度のカーテンコールのあと、最後は、手で大きなハートマークを作って、客席に投げるポーズで退場。
その後、オケのメンバーもニコニコ笑顔で客席に手を振りながら退場。

客席も大半の人がオケのメンバーが全員舞台袖にはけるまで拍手していた温かいコンサートでした。
お客様の入りは40%くらい。
開演14時、休憩20分を挟み、終演16時20分。

 

帰宅してからわかった余談ですが、指揮のレオシュ・スワロフスキーさん。以前2度も観ていました。

いづれもチェコ国立ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団との来日。
僕が観た1度目は、2015年11月14日のびわ湖ホール。
ツアーの中、この滋賀公演のみ地元大津出身のピアニスト南千勢子さんがソリストを務めた公演。
南さんの演目はチャイコンでしたが、前後は今回と同じく、モルダウと新世界より。
 

2度目は 2019年2月24日。京都コンサートホール()。

この時も、真ん中に「運命」を挟んでいるものの、やっぱり前後は、モルダウと新世界より。

これを見て、なるほど「十八番中の十八番なんや!」と納得。

そして、調べてみたら、何れも招聘元は今回と同じ光藍社。なんか太いパイプがあるのかもしれないなと思いました。

更にオマケですが、光藍社のYouTubeチャンネルというのがあって、そこに今回のツアーのPR動画があるのを見つけたので貼っておきます。