手形が偽造された場合、被偽造者(偽造された側)は手形上の責任をおうものではない。たとえば、会社内で手形の振り出しの権限のない人が勝手に代表取締役の印鑑を捺印して、会社の名義で手形を振りだした場合、会社は手形上の責任を負わない事になります。
しかし、会社は何の責任も負わなくて済む訳ではありません。民法に「会社は被用者(会社が雇用している人)が実務の執行につき、第三者にくわえた損害を賠償すべきである」という規定があり偽造された手形でも責任を負わされることもあります。


たとえば、ある会社のAさんは会社内で手形を振り出す権利はなく、会社の印鑑を出し入れできる権利は持っていました。手形を振り出す際には社長の命を受けてAさんが手形を作成して社長に提出して、社長が会社の印鑑を捺印して振り出す。とういシステムで手形の振り出しを行なっていました。
Aさんが、社長の了承なしに手形を偽造してしまった事例の場合、「Aさんは本来、手形振出の権利はなく、その職務を逸脱して手形を偽造し、振り出ししてしまったが、手形の振り出しはAさんの職務権限内の行為と深い関係にある為、手形の受取人はその行為が偽造であったかを確認することはむずかしいので、会社は手形の受取人に対して民法上の理由から責任を負わなければならない」とされたようです。

被用者(会社が雇用している人)が手形の偽造をした場合は、つねに会社が責任を負うという事ではありませんが、手形の振り出し行為と関連性が深い人が行なった手形の偽造は会社の責任とされる場合もあります。
手形振り出しの権利、会社印鑑の使用権利は信頼できる一部の社員にのみ与える方がよいでしょう。




印鑑の光宝堂   http://www.kohodo.com/



手形では「署名」と「印鑑の印影」が同じでなくても有効とされます。印鑑は行為者の印鑑として用いられたものとして捺印してあれば良いという事になります。


手形の裏書きに記名されてあった名前と、捺印されてあった印鑑の名前が違ったという事例がありました。満期になり支払場所の銀行に提示すると、「裏書人の名前と印鑑が違うので、誰の記名、印鑑捺印かわからない」ということで、支払いを拒否されてしまいました。その手形は裏書きの連続性に欠くという理由から支払いが拒否されてしまったようです。

その手形の所持者が訴訟を行なった結果、「手形行為の署名と印鑑捺印において、印鑑は記名者の名前を表示されるものとして用いられるのが通例だが、印鑑と認められるとしたものが捺印されていれば良い」ということで、所持者への支払いが確定しました。また、手形上の印鑑捺印の意義に対して「手形の記名と印鑑の捺印は、手書きの署名の場合に、その手形行為が記名によって表示された行為者の行為であるか否かの判定であるものとして存在すれば良い」と解説し、裏書きの連続性に欠いてはいないので有効としました。さらに「雅号」などを彫刻した印鑑でも有効としました。しかし、雅号や他の人が使用した印鑑での捺印があった場合、問題が起きた時に、支払いを請求する側で署名した人が行為者としてその印鑑を用いたとしての証明をしなければなりません。記名と関連の薄い印鑑ほど、証明が困難になります。法律的には有効でも、後に面倒が起こりそうな手形は受け取らない方が無難です。

※ あくまで事例としての裁判の結果になります。

※ 裏書きとは
手形を譲渡する際に手形の裏面に署名捺印して、権利を法定の方式によって他人に移転させる行為です。
また手形の振出者が支払い不能(不当たりなど)とされた場合、裏書きをした側にも支払い義務が発生します。



印鑑の光宝堂   http://www.kohodo.com/


一般に会社(法人)の代表者が会社(法人)の為に手形の発行をする際には、法人名の表記・代表者の役職を表記・代表者の署名(またはゴム印で名前を押して印鑑の捺印)、が必要になります。
では、約束手形の振出人としてゴム印で「会社名と個人名」が押してあり、その下に会社役職の印鑑が捺印されていた場合、約束手形の振出責任は、会社にあるのでしょうか?個人にあるのでしょうか?この手形は、代表者役職の表記がなく、会社名と個人の名前がゴム印で押してあり、会社役職の印鑑が捺印されていた手形の場合になります。

このような手形の場合、裁判では手形の振出人は、会社にあるとされるようです。手形の「代表者の役職を表記」は法律上では特別のきまりがあるわけではなく、手形上で「法人のために手形を発行する」ことが解るように記載されていればよいという事になります。この場合、会社役職の印鑑が「代表者の役職を表記」であるとされたようです。

では、捺印されていた印鑑が個人の印鑑であった場合は、振出責任は会社にあるのでしょうか?個人にあるのでしょうか?この場合裁判では、手形を所持する人の利益を保護する事から「手形の記載から振出人が個人か法人かいづれとも解釈できるような場合は、法人および代表者個人のどちらに対しても請求ができる」とされたようです。

裁判となると、手続きや裁判にかかる時間などを考えると大変なことになります。会社名の入った手形を受け取る際には、名義、役職名の表示、捺印されている印鑑などを良く注意してから受け取るようにしましょう。


印鑑の光宝堂  http://www.kohodo.com/