『日本国紀』読書ノート(216) | こはにわ歴史堂のブログ

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216】日本人学生には給料が払われていたし、徴兵された朝鮮人も戦場に送られていた。

 

「たしかに戦争中『戦時徴用』として朝鮮人労働者を国内の工場などに派遣した事実はあるが、戦時徴用は日本の中学生や女学生にも行なわれていた。しかも日本の学生には給料は払われなかったが、朝鮮人労働者には正規の給料が支払われていた。」(P472)

 

これは誤解されています。日本人の学生にも給料は払われています。これは訂正されたほうがよい説明だと思います。国立公文書館アジア歴史資料センターに明確に記録が残っていて、1944年5月の「工場事業場學徒動員受入側措置要綱」に「基本報償算定基準」として報奨金額が記されています。

 

「同じ頃、日本人男性は徴兵で戦場に送られていたが、朝鮮人が徴兵されたのは昭和一九年(一九四四)になってからで、しかも一人も戦場に送られていない。」(P472)

 

という説明も明確に誤りです。同じく国立公文書館アジア歴史資料センターの史料に1944年段階の「部隊割当表」があります。少し考えても、情勢逼迫の中、徴兵して戦場に送り出されていない兵士などはいなかったことはわかるはずです。

 

「松代大本営」建設の徴用では、朝鮮人7000人、日本人3000人が動員され1945年4月にはそれぞれ1万人規模になっていて、そのときの労働環境や状況はかなり苛酷なものであったことがわかっています。

『ガイドブック松代大本営』(松代大本営の保存をすすめる会編)

『「松代」から何を読み取るか』(飯島滋明・名古屋学院大学論集・社会科学編・第45巻4号)

『松代地下大本営』(林えいだい・明石書店)