花、というとついつい季節は春、と考えてしまいます。
なかなかどうして秋の花も美しい。
『太平記』ゆかりの鎌倉は、花の名所でもあります。
もし、鎌倉などへご旅行を計画されている方にも参考になるよう、歴史とお寺とお花の話をしてみたいと思います。
浄光明寺。
鎌倉幕府の執権、北条長時が創建したお寺です。この長時の子孫が「赤橋家」。
つまり足利尊氏の妻、登子の実家です。
そんなわけで、この寺は足利尊氏の厚い保護を受けました。
1335年、中先代の乱を平定したにもかかわらず、足利尊氏は後醍醐天皇の命令にそむいて帰京しませんでした。
後醍醐天皇は尊氏を討つことを決め、新田義貞に軍を率いさせて鎌倉に派遣しました。
このとき、尊氏は、後醍醐天皇に恭順の意を示すために謹慎した寺がこの浄光明寺だったのです。
恭順か、はたまた反乱か…
まさに南北朝時代のハムレット、足利尊氏。
この寺にある地蔵菩薩像の前で苦悩し、反乱を決心した、といわれています。
日曜日や祝日、土曜日と木曜日の晴れた日には阿弥陀三尊像とこの地蔵菩薩を拝観できるようです。
地蔵菩薩には、坂上田村麻呂の蝦夷征伐の時、蝦夷たちが放つ矢を振り払って田村麻呂を守った、という伝説があるのですが、おもしろいことに、足利直義も地蔵菩薩に助けられた、という伝説があります。
おそらく坂上田村麻呂の伝説と重ねられたのかもしれません。
浄光明寺は“お花のお寺”。
秋は彼岸花が美しい…
浄妙寺。
足利尊氏の父、貞氏は、このお寺に葬られています。
おもしろいことに浄妙寺の裏手には延福寺がありました。この寺こそ、尊氏と対立してしまうことになった弟、直義が蟄居させられ、そして死をとげた場所。
そしてこの寺近くに直義の屋敷もあったといわれています。
今は「石窯ガーデンテラス」というおいしい料理がいただけるお店があります。
ここでお食事をいただいて、世の移ろいにしばし思いをやる、というのもまた一興かと思います。
浄妙寺は“もみじのお寺”。
秋は紅葉が美しい…
報国寺。
「竹の寺」として地元では有名です。
足利尊氏の祖父、家時が開いたお寺とも考えられています。
美しい竹を身ながら、お抹茶もいただけます。
1333年、新田義貞の軍勢が鎌倉に攻め入って鎌倉幕府を滅ぼしました。このときに戦って死んでいった武士たちを供養した五輪塔もありますが、これは1965年にみつかった、由比ヶ浜での戦死者の骨などを供養したものだそうです。
報国寺は“お花のお寺”。
秋は十月桜が美しい…
宝戒寺。
なんとこの寺、鎌倉幕府最後の得宗、北条高時の屋敷があったところに建てられました。
北条高時の菩提を弔うために足利尊氏が建てたのです。
この寺の二世、普川国師は尊氏の子どもであったという話もあります。
1333年、新田義貞の軍勢が鎌倉に侵入、激戦の末、「もはやこれまで」と北条高時は一族を率いて屋敷を出て、東勝寺に入ったといわれています。
そしてここで自害して果てました…
よく考えると、東勝寺は、足利尊氏の庶子、足利直冬が子どものときに預けられていたのもこの東勝寺。
宝戒寺のすぐ東南に、東勝寺跡があります。
宝戒寺は“お花のお寺”。
秋は白萩が美しい…
見渡せば
花ももみじもありにけり
秋の鎌倉、『太平記』めぐり、というのを楽しむというのはどうでしょうか。
※ お詫び
9月10日の投降で、「浄光明寺」を「浄妙光寺」と表記してしまっていました。
浄光明寺さま初め、鎌倉の皆さま、読者のみなさま、申し訳ありません。
お詫びして訂正します。