聖徳太子…
現在の教科書では、厩戸王、と、記述されることが多くなりました。
小学校の教科書ではまだ聖徳太子のままです。
“聖徳太子”の呼称は、信仰の対象としての名称のほうがよりふさわしい、ということで、政治家“厩戸王”と区別して使用しよう、というのが教科書作成者の意図になっています。
一時期、“聖徳太子”はいなかった、という説が大きく取り上げられたため、実在しないのではないか、という話にもなりましたが、現在では、むしろ逆に政治家“厩戸王”の存在が確認され、さまざまな業績が再評価されるようになっています。
さて、厩戸王の業績として、「冠位十二階」というのがあります。
小学校の教科書では、「家柄によらず」人材を役人に登用する制度、として紹介され、大学入試でもその位階の呼称が出題されています。
この制度は、『隋書』倭国伝にも出てくる記述ですので、実在が確認されている制度です。
「色と冠の形」で位をあらわした、と、小学校の教科書では記載されていますが、冠の形は不明…
色と位階の名称は記録が残っていて
徳・仁・礼・信・義・智
となっています。
あれ? 6階じゃん? となりそうですが、それぞれ大・小をつけて表記されていたので、
大徳・小徳
大仁・小仁
大礼・小礼
大信・小信
大義・小義
大智・小智
という12階級となります。
これに色が配されていて、
紫・青・赤・黄・白・黒
の6色が使用されています。大小は冠の形で区別していたのではないか、と、考えられています。
たとえば、上から第8位は「小信」となり、色は「黄色」、というようになります。
何でこんな色使いになっているのか…
でも、『隋書』倭国伝にみられるように、この色をみた中国の皇帝の使者たちには「わかった」ことなのです。
中国の思想には、「陰陽五行」という考え方があります。当時の“科学”のようなもので、物事は
木→火→土→金→水→木→火→土→金→水…
と、回転していく、という考え方ですね。
木が燃えて火。火が燃えたあとに土。土がかたまって金。金から水が流れて出て(金鉱が採掘する場所からから水銀が出るからでしょうか)… と、あたかも輪廻のようにめぐっていく…
中国では「木」は青色です。青々としげる、という説明があるように木は青。
中国では「火」は赤色です。赤々ともえる、という説明があるように火は赤。
中国では「土」は黄色です。中国の土は“黄土”。土は黄。
中国では「金」は白色です。光り輝く金。その輝きは白。金は白。
中国では「水」は黒色です。水がなみなみとたたえられている様は「黒々と」。水は黒。
もうおわかりでしょう。陰陽五行の変化を色にあらわしているんですよ。
無意味なカラーリングを厩戸王は採用されたのではありません。
あれ? 紫は??
紫は中国の皇帝カラーです。それらの万物の流転の上に超越して君臨する皇帝の色。
中国の使節を迎えた日本の役人たちのカラーをみた使者たちは、
「おお、日本は陰陽五行をわかっているのかっ」
と、感心したはずです。
案外と、この制度は外向けに(対隋関係をふまえて)、「近代化した倭を示す」制度だったかもしれません。
政治の改革は、内だけの問題ではありません。
外に向けてのアピールでもあります。
仏教も採用した国際派の政治家、厩戸王ならではの改革です。