第 10 章 不避（6）
濱江大酒店
袁氏が予約したテーブルが何故かわからないが別の人に占領され、ロビーマネージャーは謝罪を繰り返し出来るだけ早く手配すると話し、仲間もそれほど気にすることもなくロビー内で座って雑談をしながら待っている。
蘇敏の他は袁氏が昔遊んでいたわりとよく知っている数人の友人を呼び出した。
社会に出て大学の比ではないが一緒に集まる僅かな時間が出来て、今やっと思う存分世間話をするチャンスを捕まえた。
蘇敏はちょうどいい機会を利用して以琛に紹介する女性教師を呼び出した。
主役の男性は上の空
女性教師が恥じらい怯えながらも何以琛の様子を時おり見つめるのを見て蘇敏は密かにしたり顔をしている。
この事を少なくとも半分は成し遂げていた。
ちょうど話をしていると窓に身体を向けて座っていた向恆が急に立ち上がり、目はずっと窓の外を眺めている。
以琛は彼の真正面に座って無意識に振り返り、ちょうど一台の大型トラックが危うく默笙を擦るのを目にし、そして又默笙が無理に立ち止まった後、顔一面に平静を取り戻せずに青ざめる。
危機一髪に向恆は未だに恐ろしさが消えずに
「何以琛、おまえの奥さんはホント恐ろしい。気もそぞろに大道りを横切るのをちょうど見た。赤信号さえ気にしてない」
話を言い終えてないのに以琛はもう立ち上がると冷ややかな顔をして走って外に出て行く。
蘇敏は遥か遠くのその大通りの傍らに立つ女性の顔をはっきりと見て、目は大きく開かれきょとんとしてもう一度はっきり向恆の話を聞いてから体の向きを変えて袁氏に尋ねる
「奥さん？どういう意味？」
袁氏はへっへっへっと笑って
「奥さんは奥さんだろ。恋人じゃあない」
年の若い女性教師は疑って蘇敏を見る
恐らく・・・つまりは何故か結婚した人を更に私に紹介しようとしたの？
蘇敏は困っているのに口に出して言えずに容赦なく袁氏をじろりと睨みつける。
遠くで以琛が趙默笙の手を引いて前を歩き大通りを横切るとすぐに手を緩め、花壇の近くに立って詳しくはわからないが何かを言っている。彼の勢いを見て、そしてまた趙默笙の益々下がる頭。
たぶんしかりつけている・・・
「実に懐かしい」
向恆のレンズの下の目が微かに笑いだす。久しぶりにこういう場面を見た。大学の頃の以琛は大人びていて、事の処理が上手く人に対して怒るのは稀で、趙默笙に対してのみ事に失敗すると頻繁に長いことしかっていた。
「やっぱり彼女なのね・・・」
蘇敏は頭を振る
自分自身は当然この師弟の為に喜ばしいのかその価値がないのかわからない
「当時、我ら法学院には多くの才能のある女性と美人がどれほどかわからないが彼のことを好きだったのに、あえて彼は別の学部の人を見つけた。私はあなたが別の学部の人を見つけても学部の華等々を手に入れる、と言ったの。才能のある人が法学院の最高に優れた人に相応しいんじゃない？生憎とまだそれぞれの方面で特別なものは何もない」
当時、趙默笙は何以琛にどんな時も付き纏っていた。
法学院のほとんどの人は心に抱えている賑やかな心理状態で、この後を追いかける場面を見に来て、何以琛がこの女子学生を受け入れることができるとは誰も思っていなかったのに、最後に彼はより良い条件の人を拒絶し、それでその後、何以琛は趙默笙が自習の時、授業に連れてきていた。
何人が驚かされたかわからない
恐らく其の中にも女生徒は少なからずいたのに何故、もう少し積極的じゃなかったのか密かに後悔した。
その後、趙默笙はアメリカに行き何以琛は独身に戻った。
一部の新入生の情熱の度合は当時の趙默笙に比べて勝るとも劣らなかったのに、何以琛には何時も二、三日で追い払う方法があった。
ある時、蘇敏は耐えきれずに言った
「あなたは別の人があなたに付き纏うのが嫌なの？以前、趙默笙のことはどうして嫌じゃなかったの？」
言葉にして蘇敏は後悔する
軽率すぎた
だから大急ぎで叩いてハハハと笑うと思いもしない答えを何以琛はした
「那不同（それは違う）」
その時、何以琛はこう言った。僅か三文字・・・
とても単調な口調で、蘇敏にはどこが違うのか思いつかない。
もしかすると・・・
彼は趙默笙に自身に付き纏うチャンスを与えたのかもしれないくて、反対に他の人には与えなかった。
彼女の話を聞いて袁氏は得難いまともなこと言う
「この種の事情は如人飲水，冷暖自知（人は水を飲んで水が冷たいか温かいかを自分で知る）、君は口出しが多い」
話している間に以琛と默笙はやって来ている。
以琛は元通り美しい仏頂面をして、恐らく默笙は叱られて散々なんだろう皆に挨拶する声もかなり低かった。
默笙はかつて学部事務室の常連で蘇敏を当然よく知っている。
彼女を見つけて微かに笑うと
「師姐、こんにちは」
蘇敏はしぶしぶ「うん」と一声出す。強く何かを言うべきなのか、しかしすぐに歓喜の呼び声に遮られた。