第 10 章 不避(4)
少なくとも講堂の外では默笙の近くに居た女性の一部がすでに應暉の物腰と魅力に沸き上がっている。
「キャーかっこいい。例え年をとっていたとしても文句言わないわ」
「お願い!年をとってるって誰が言ってるの。たかだか三十四才で、若くて元気な時よ」
「もし、こんな夫がいたら、才能を求めて才能があったら、事業を求めて事業ができたら、美しさを求めて美しくあったら、出かけても必ず傲慢になるに決まっている」
「もうやめて。こうした人にはまだ成功する前に嫁に行かなきゃ。今じゃもう遅いのよ」
「ちょっと、あなた達聞いたことない?應暉がこの大学に通っていた頃のこと、恋人は当時の私ら学部の華だったって」
この話が出ると周囲で集中して聞いていた人も引き寄せられる。
「君らは何学部なんだい?」
ある男子が尋ねる。
「外国語よ」
「今はどうなの?彼らは一緒に居るの?」
「私も他の人から聞いた話だからほんとかどうかはわからない」
女生徒はまず強調して、その上で話始める
「聞いたところによると大学で勉強してた時、應暉はとても貧しく農村出身で試験に合格してきた。数学科にこういう変なところで有名になる凄い人が多い。その後、私らの学部が当時公認する学部の華に追いついた。話によると仲がとても良かったって。残念なことに卒業する時、学部の華は大学に残る目的のために学部主任の息子の求婚を受け入れて、應暉はすぐに国内研究所で働くのを放棄して出国したそうよ」
「へえ。学部主任の息子の嫁なのね。私らは英国文学史的なそれを談義できない。彼女が離婚したって聞いてない?」
「うわっ。ありえないでしょ。でも、あなたたの言うその彼女は死ぬほど後悔してるんじゃない?」
「まさか」女生徒はちょっと舌を出して
「これは前回私らの寮が奨学金を受け取って、指導員を食事に招待した時に指導員が言ったことなんだけど信憑性はとても高いのよ」
がやがやとした討論はまだ継続して盛り上がる。
有名人の過去とプライバシーは公衆が永遠に興味を持つ話題。
默笙は口を窄めて頭を上げてスクリーン上の勇ましく強い気風が現れる應暉を見る。
應暉はほんの少しだけ彼女に彼自身の事を言ったことがある。たぶん当時二十三、四だった彼女を、既に而立(三十才)した應暉はどちらかと言えば小さい妹と思っていたのだろう。
ただ一度だけ應暉は言った
「私には昔、C大に恋人がいた。とても聡明でその上とても美しい・・・」
そう話してすぐにやめたのでもっと聞きたかった。
その時ははっきりとした理由もなく、黙笙は後に続く
「私の昔の恋人もとても凄い人でした」
「えっ?」應暉は笑って
「君の恋人は運が悪い、私はいいな」
默笙は今も相変わらずあの時の彼の眼差しを覚えている。矛盾する物寂しさと傲慢と同時に穏やかな瞳の奥底に普段から波乱が現れていた。
それからずっと應兄さんの私生活にどんな人が現れたのかは見過ごしていた。
もしかしたら・・・
彼は私と同じだったのかもしれない
過去の人を何時までも解放する手だてがない・・・
默笙は茫然と考える
何時の間にか講演は最終段階に近づいて、司会が前に出て
「もし、今終わりになったら皆さん満足出来ない気分になるかもしれない。残念に思ってるんじゃない?」
そのあと大声で答える
「はい!」
「だから、次は自由な質疑応答です。時間は三十分ですからみんな時間を無駄にしないで」
雰囲気はかつてないほど盛り上がり、入れ替わり立ち代わり学生が立ち上がって様々な種類の悪賢くて変わっている質問をする。自由な質疑応答は一個人の文才に秀で筆が立つかどうかを最も具体的に反映する。明らかに應暉はこの点でそれ相当に優れ、機転が利いてその上ユーモアのある回答は拍手の音を勝ち取った。
今日の講演での應暉はどの分野であれ”C大の誇り”と呼ぶのに恥じない。
「お願いです。男子学生の質問は全く死ぬほどつまらないです」
連続する幾つかの専攻分野の質問は女生徒らをつまらなくさせる。彼女らはそれらのコンピューターだとか、技術だとかのどんな質問に対しても少しの興味もない。
この時、一人の女生徒の手にマイクが渡る
女生徒は立ち上がると咳払いをして
「應先輩、先に説明します。この質問は私が聞きたいことではありません。これは外に居るクラスメートがメールで送って来て、もし私が彼女の為にこの質問をすればご飯を奢って貰えます。私の夕食を無料にする為にも應先輩、是非とも私に返答をお願いします」
「もちろん」
應暉の振る舞いは極めてよい。手を挙げて「どうぞ」のゼスチャーをする
「はい。こういったことです」
その場に居る全ての人が静かになるのを待って彼女はおおきな声でしゃべる
「お尋ねしますが、應先輩は結婚してらっしゃるのか。私らにまだチャンスはありますか?」
舞台の下ではこの質問のせいで盛り上がる。
男子生徒らは口笛を吹き、女生徒に喝采を送る
しかしこのような賑やかな雰囲気の中で、舞台の上でずっとものに動じずにいた男性は明らかに我を失っていた。