何以笙簫黙第 10 章 不避(3) | アジアドラマにトキメキ!

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第 10 章 不避(3)

默笙に写真を撮る計画は特になく、カメラはもともと外出前に成り行きに任せて手に持っていたもの。

 

以琛が法学部に行って彼女も方向を変え、自分の学部への道を行く。

默笙の大学入試の成績は専らC大のボーダーラインにどうにかこうにか到達したに過ぎなく、そのせいでC大でもあまり優れていない科学科に押し込まれた。こともあろうに科学科はあらゆる学科の中で最悪な学科で、大学一年は科目を低空でも飛ぶように速く過ぎることが出来たのはたぶん以琛のおかげ。

 

默笙は科学科で一年余りを過ごしたが、自習と何時もの法学部のその辺りに居たために自分の学科については逆に不慣れで、科学科をぐるっと回っても思った通り大した知り合いに出会いはしなかった。

 

化学科を出て気ままに風景を求めるのに興味はさっぱりとわかない。

 

指はポケットの中の携帯電話に触れ、思わず以琛を恋しく思うのに彼が法学部で何をしているのかはわからない・・・

 

最近の彼女と以琛は・・・急に良くなり出した気がする。殊に彼女が香港から戻って来た後。

今のこの共に生活する様子は默笙にとって勿論楽しいけど、時に不安を感じる。以琛がどう思っているのか彼女にはよくわからなくて、何時もこんな感じで以琛の考えを彼女が推し量ることができない。

 

もしかしたら全てが又変わって元に戻れる?

 

默笙は再び考え続けたくなくて地面を蹴って独り言を言う

「考えがわからない以上、私はやっぱり単純な思考力なんだ」

 

今日のC大は今までにないくらい賑やかで、至る所人が集まって混雑している。

年の若い学生、白いものが混じった昔の学生、この一欠けらの土地がどれくらいの人の青春時代を記憶しているのかは知ることはできない。

 

もしかしたら黙笙が身に着けているC大の校名が印刷されたTシャツが理由なのか度々、どういうコースでどう行ったらいいのか彼女に尋ねて来る人が居る。

 

何館は何処ですか?

默笙は記憶を頼りに―――はっきり指し示す

 

数歩歩くと又、スーツを身に着けた年若い人に呼び止められる。

「ねえ君。君は應暉(イン・フイ)が何処で講演をしてるか知ってる?」

 

散漫な気持ちはこの言葉で驚きに変わり黙笙は固まり、自分が聞き間違えたかと疑う。

 

應暉?

 

「あなたは今、誰って言ったんですか?」

默笙はぼんやりと尋ねる。

「應暉だよ。中国のネットワークの奇跡、SOSOの総裁、彼は何処で講演してる?」

年若い男性はいらいらと彼女を見て茫然とし、即座に向きを変えて別の学生を引き留めた

「ねえ君。ちょっと聞くけど應暉は何処で講演している?」

「第一大講堂ですけど今更行ってどうするんですか。講演時間は二時から四時ですよ。既に始まっているし、間違いなく混んでいるからもはや中に入れないですよ」

こうは言いつつも女子学生が方向をはっきり示すと、年若い男性は慌ただしく礼を言うとそそくさと第一講堂に走って行った。

 

默笙はその場に立ってこの情報を暫くしてやっと消化する。

 

應暉

 

彼が帰国した

 

今はC大に居る

 

千人を収容できる第一大講堂はすでに人がいっぱいで出入口さえも塞がれている。

幸いにも大学はこうした状況を十分考慮し、講堂の外に大型のスクリーンを設置して講演を生中継していた。

 

默笙は人だかりの中に立ってスクリーン上で自信を振りまく男性を仰ぎ見る。英知を現す広い額、気性通りの毅然とした濃い眉、刃物で研ぎ澄ましたような柔らかさの欠けた顔立ち、幾度も経験する激しい世の移り変わりによって不意に煌めく鋭い目つきに、軽々しくしゃべったりしない親しみ難いような表情。

 

これぞまさしく應暉。

 

シリコンバレーで裸一貫で事業を興したインターネットの成り上がり

数十億の価値のある新興科学技術の大金持ち

 

そして私の名義上の前夫・・・もしかしたら事実上の

 

應暉の講演テーマはいたってありふれている。

人がやたらに説明する”中国IT業界の発展予測”しかしながら彼のユニークな視点にダイナミックな分析、特異な地位はむしろ彼の講演に変化を持たせて他の人とは異なる。

数学科出身という理由によってか應暉はとても事実根拠を重視して、彼の講演が描くITの未来は決して儚い蜃気楼ではなく、実行できることを踏まえて客観的な法則を判断して打ち立てている。

したがって人により一層信服させる。

彼自体の伝説的な奮闘の経歴は更に一段と全ての学生をしきりに興奮させ、よりにもよって彼の見かけはこのように素晴らしくて、その上での具体的な話は一種の力が漲り強硬で抜きんでて、それゆえに舞台の下では拍手の中に女生徒の悲鳴が混ざっていた。