第 9 章 恆溫(3)
外はどうしてこんなに騒がしいの?
默笙は頭を布団の中に引っ込ませても、やはり騒々しい音を遮ることはできずに耳を通り抜ける。
これはテレビの音?
以琛が戻って来たの?
身を翻して起き、黙笙は少しぼんやりとした状態でベットから起き上がり寝室のドアを開けるとすぐに呆気に取られる・・・リビングに何でこんなに多くの人が居るの?
リビングに居る人も次々に寝室の入り口に立つ彼女に気が付くと、一人、二人と静かになり動かなくなる。
双方が茫然と見つめあい静寂に包まれる。
以琛は食器や箸を持ってキッチンから出てきて寝室の入り口に突っ立っている黙笙が目に入り、美しい顔に訝しさが現れ更には眉の下に皺を寄せる。
「中に入ってちゃんとスリッパを履いてこい」
「ええ?あっ」
默笙が頭を下げて自分の足を見ると、急いで出てきたのでスリッパを履いてこなかった。
以琛は手の中のものをテーブルに置くと引き攣っている皆に
「ちょっと失礼する」
と、礼儀正しいお辞儀をした。
皆は茫然として頷き、以琛の姿が寝室のドアに消えた後になってやっと美婷が反応する。
「何弁護士が人と・・・」
小高と袁氏は向かい合ってみて、お互いの目の中に見えたものが信じられなく、しかし証拠は極めて確かで
・・・寝室、パジャマ・・・
揃ってその答えを叫び出す
「同棲!」
偶像は消えうせ、小高の若い女性の心は粉々に砕ける。
何弁護士は超真面目な人だと思っていたのに密かに同棲をしていた!
打撃は大きい!袁氏は男涙を流す。以琛でさえ他人と一緒に暮らしている、彼はまだ独身なのに!
向恆はむしろ彼らほど驚いてはいない。思いがけずではあるが何以琛と趙默笙は一緒に暮らしている。
「俺はずっと前から言ってただろ、趙默笙に巡り合う限り何以琛のどんな原則も割引くことができる」
寝室に入るとすぐに黙笙がベットで腹ばいになっている姿が目に入る。頭を枕に埋めて・・・きまり悪いのか?
以琛はベットの傍まで行き、何とか彼女を引き起こして胸元に囲い込むと
「明日、戻ってくるっていう話じゃなかったのか?」
「えっ、繰り上げて先に戻って来たの」
「何故?」
何で何故なの?默笙はすぐに話題を変えて呟く
「小紅を死ぬほど恨むわ、頼まれたもの全ては買えなくて・・・」
恨みがましい声は以琛によって押さえ込まれ、彼は吸いつくような口づけを何度も繰り返し、一心不乱に彼女の息遣いを奪い取る。
「・・・・・・君は俺を誘惑した」
つい今しがた礼儀正しくないことをして彼女の何弁護士は彼女の犯罪を告げ、低く沈んだ声の中には甚だしい不満が秘められている。
默笙は目を見張る。この犯罪は本当に重大なのね!
「どこが?」
「・・・・・・君は俺のパジャマを着ている」
「あなたのパジャマがバスルームにあって、パジャマを持って行くのを忘れてシャワーを浴びたの。それから交換するのを忘れて・・・」
焦って少しばかり話の筋道が通っていない。黙笙は悩んで言ったのに、ふとしたことで心得違いをして悔いを千載に残す・・・的な相当に後悔した。
「これからは絶対にこんなことしないんだから」
その彼は大きな損害を被ったわけでもなく、以琛は軽く笑って
「起き上がったら行って食事をしよう」
外の人と一緒に?頭を横に振って
「いらない」
以琛がとやかく言わないので、默笙は自信のなさから口実1を持ち出す
「飛行機でとても疲れているの」
「食べてからもう一度眠ればいいだろ」
口実2「彼らを私は誰も知らない」
「これから何時でも覚えられる」以琛は問題が起きてから対応できる。
「・・・」口実がみつからなくて黙笙は悩んで言う
「とても恥をかいたしちょうど・・・」
彼のパジャマを着て、髪の毛は乱れに乱れて、寝ぼけ眼でぼんやりと部屋の入口に立っていた・・・
やれやれ!
以琛はため息を吐いて手を伸ばしてベットにある服を掴むと
「俺はとうに慣れた。先に出て行くから君はちゃんと服を着て出てきてくれ」
以琛が出て行った時は誰もが何時もと変わらない表情になっている。
結局のとこ、ここに居る全ての人はすでに弁護士かあるいは将来の弁護士で、この点で気を静めるテクニックは大切である。
向恆と袁氏はベランダで煙草を吸い、以琛が出て来たのを見かけると彼に向かって手招きする。
以琛に一本の煙草を手渡し、袁氏は興味津々に聞く
「違法同居か?」
以琛は眉をあげて
「合法」
この言葉が出ると向恆は呆気にとられ、袁というこのヘビースモーカーでさえ咳き込ます。長いこと咳をしてやっと質問をする
「合法ってのはどういう意味だ?」
「男女双方が対等に自らの希望を基礎として結んだ長期にわたる契約関係だ」
以琛が法律的な解説をすると袁氏が狼狽する。
「まあ、簡単に言ってしまえば、そうその通り俺は既に結婚している。あなた達はご祝儀を準備することになる」
「あっ!おまえ!おまえおまえが!」袁氏は大声で叫ぶ
「お前が結婚した?」
以琛の肯定的な頷きを見た後、袁氏は更に一声大声で叫んでこの爆発的なニュースをリビングに飛び込んで発表する。
向恆はベランダの手すりに寄りかかり、十二階の夜空を見ながら
「人生って実にまあ不可思議だな。おまえらは大きな曲がり角で回り道をして、よくもまあ本当にその回り道から戻ってこれたもんだ」彼は感慨深げに言う
「この七年のことをおまえは本当に気にしないのか?」
「おまえは俺がどう答えると思う?」以琛は煙草に火をつけ、瞳の中には思いが沈殿して
「俺は何が一番大切なのかをはっきり区別している」
向恆は煙草を吸って少し笑い
「お前のセルフコントロール能力は昔から素晴らしい」
以琛はそれには答えず、うっすらとした軽い煙が二人の周りを巡る。
向恆は彼に目をくれて
「そういえば長いことおまえが煙草を吸うのを見ていなかったな」
「ああ、最近少なくなったな」
「初めての喫煙がどんな気分だったか覚えているか?」
まさか覚えていない?その時の黙笙との関係がなくなってどのくらいか、彼は既に酒と煙草に依存して自分に麻酔をかけて堕落していた。
以琛は手の中の煙草を軽く弾いて
「あの時、これはなかなかいい物だと思ったさ。人をこの世界に存在させ、まだ確かにやれることがあると思えた」
平然とした口ぶりに向恆には聞き取れる。
だが思うに彼は本当に解き放ったのか?
やむを得ず解き放ったのか?
こんなに平然と過去と向き合うことができる今の以琛は穏やかな顔つきに見受けられ、過去何時もあった迫る勢いとは違う。
向恆は心からの「おめでとう」を言い
以琛は淡々と笑って答えた
ーありがとうー
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ドキドキ・・・ドキドキ・・・(笑)
彼のパジャマ・・・ってツボ!!