法令の公布・施行と公務員試験(再掲) | 彼の西山に登り

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公務員試験講師があれこれ綴るブログ。

【本文】

 

※今日はバタバタしていたので、6年前の11/3の記事を再掲して場所塞ぎをします。

 改正民法が来年出題されるのか、という質問が意外に多く、それに関連する記事です。

 再掲とはいえ、昔のものですし、当時の見栄えの事情で妙な改行がしてあるので、それを訂正するのも全く無意味ではないでしょう。

(と手抜きの言い訳をする。)

 

 

今日11/3は明治節、じゃなかった、文化の日です。

法律屋ネタとしては、日本国憲法が公布された日です(昭和21年11月3日)。

そして、公布された憲法は、「公布の日から起算して六箇月を経過した日」から施行されています(同法100条参照)。

すなわち昭和22年5月3日、言わずと知れた「憲法記念日」ですね。

 

そこで、今回は「公布」と「施行」について書くことにします。

公務員試験では、憲法や行政法とも関係しますが、どちらかといえば社会科学の法学通論の内容です。

法学通論は公務員試験専願の方の場合、かなり手薄になりがちなので、用語の意味くらいは確認しておく意味があるでしょう。


 

まず、「公布」とは、成立した法令を一般に周知させる目的で、国民が知ることのできる状態に置くことをいいます。

また、「施行」とは、法令の効力が一般的、現実的に発動し、作用することになることをいいます。

 

聞くところによると、江戸時代には、「公事方御定書」などはお役人様しか知らなかったのだそうです。

しかし、近代国家においては、国民(の権利義務)を不意打ちで拘束するのは宜しくないとして、施行する前に、法令の内容を一般国民に周知する必要があることから、公布という手続が要求されています。

 

ただ、「一般国民に周知」といっても、全ての法令に関心がある人はあまりいませんし、全ての国民に漏れなく知らせる、という訳にもいかず、

多かれ少なかれ「擬制」の要素は出てきます。

 

国の法令は、かつての「公文式」(明治19年勅令第1号)や、それに替わり制定された「公式令」(明治40年勅令第6号)以来、公式令廃止後も、官報に登載する方法で公布されています。※1

しかし、誰もが「官報」をまめに読むわけではありません。

というか、それこそ公務員か法律家でもない限り、まめに読む国民の方が圧倒的に少ないでしょう。
その意味で、「官報登載による公布」というのは擬制です。

とはいえ、いくらなんでも、判例が公布の時期を、「一般の希望者が法令の掲載された官報を閲覧・購入しようと思えばできた最初の時点」としている(最大判昭33・10・15)のは、ちと曖昧かつ中途半端な印象もないではありません。※2

そこまでやるなら、いっそのこと、「法令が登載された官報の日付(の午前零時)」という学説の方が、明確な分ましな気もします。



一方、公布された法令の施行期日は、当該法令の「附則」で定められるのが一般的です。

例えば、特に周知期間を置く必要がないと判断されれば、附則で、「この法律は、公布の日から施行する。」などと規定されます。

政令に委任される場合も少なくありません。

もっともその場合も、白紙委任はされず、「この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」などと規定されます(会社法の例)。


法律の附則で施行期日を規定しなかった場合は、有名な「法の適用に関する通則法」2条本文により、「公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する」ことになりますが、現在では附則で定めることがほとんどで、あまり出番はないようです。


さて、公務員試験との関係では、新たに制定された法律や、新たな法改正の内容が、いつから出題されるか、というのが関心事です。

時事問題の素材としてはともかく、専門試験では、「施行期日前に出題されることはまずない」といえるでしょう。

施行期日までは、現在通用している法律(現行法)ではありませんからね。

 

例えば、会社法は平成17年7月26日に公布され、翌平成18年5月1日(上記の『政令で定める日』です)に施行されました。
ところが、平成18年度は、その施行期日の前日(4月30日)が、国家Ⅰ種(現国家総合職)の1次試験日でした。
その時の国家Ⅰ種法律職の商法では、法改正の影響がない部分の会社法と、手形・小切手法が出題されました。※3

 

また、公布後の施行期間とは関係なく、施行後も、学生に対する周知徹底期間(勉強期間?)を一定期間置くのが普通です。

国家総合職で施行の翌年、他の職種はそれ以降に出題されるのが標準的です(例外はあります)。

 

例えば、平成18年の国税専門官の1次試験は、会社法の施行期日後でした。

しかし、従来、会社法1問、手形・小切手法1問が原則だった「商法」で、同年のみ、空前絶後?の手形・小切手法2問出題という荒業に出ました。

会社法の出題は翌年以降にもち越されています。


 

※1 公式令の廃止(昭和22年)後、後釜の法律が作られず、現在、公布の方式に関する明文の規定は存在しません。しかし、周知の通り判例は、公式令廃止後も、特に国家がこれに代わる他の適当な方法をもって法令の公布を行うことが明らかな場合でない限り、法令の公布は官報をもって行われるものと解するのが相当である(最大判昭32・12・28)、としており、この公布方式は現在でも踏襲されています。

 

※2 具体的には、東京の官報販売所において閲覧・購入しようと思えばできた最初の時点、すなわち同所及び印刷局本局に掲示される、官報発行日の午前8時30分としました。これで全国一斉に公布したことになるのですから、地方の住民は、現実には公布後でないと当該官報を読めない場合があり得ます。ちなみに、公式令の前身の公文式では、官報が各府県庁に到達してから7日後に施行されることになっており、地域によって「施行」の時点すら異なる場合がありました。のんびりした時代ですね。

 

※3 現在の単行法としての「会社法」制定以前の、商法典中の「第二編 会社」の部分も、一般に「会社法」と呼ばれていました(『物権法』、『債権法』などと同じ用法ですね)。ちなみに現在の商法典の第二編は、繰り上げで「商行為」になっています(改正前は『第三編』)。

 

 

 

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