デジタル赤字は、主として次の3項目によって構成される。
第1に、通信・コンピューター・情報サービスである。これには、Amazon(AWS)やMicrosoft(Azure)などのクラウドサービス利用料に加え、ChatGPTやGeminiなどの生成AIサービス利用料が含まれる。
第2に、専門・経営コンサルティングサービスである。これは、GoogleやMeta(Facebook、Instagram)などへのインターネット広告掲載料が中心である。
第3に、著作権等使用料である。PCやスマートフォンのOS(Windows、iOS)をはじめ、各種ソフトウェアのライセンス料などがこれに含まれる。
日本のデジタル赤字、すなわちデジタル関連収支の赤字は、近年急速に拡大している。2026年3月時点の最新統計ベースでは、その規模は約6.7兆円前後で推移している。2023年以降の推移を見ると、2023年は約5.5兆円で前年比16%増となり、クラウド利用やインターネット広告への支払いの急増を背景として、5年前と比較しておよそ2倍の水準に達した。2024年は約6.7兆円で前年比22%増となり、生成AIの普及拡大や円安の影響を受けて過去最大を更新した。2025年は約6.7兆円で、ほぼ横ばいながらも高水準を維持した。
このようにデジタル赤字が拡大している主要因の一つは、クラウド、広告、OS、ソフトウェア基盤などの主要なデジタルプラットフォームの主導権を、GAFAMを中心とする海外巨大IT企業に握られている構造にある。すなわち、日本国内でデジタル需要が拡大するほど、その収益の相当部分が海外へ流出しやすい産業構造となっているのである。
さらに、2030年に向けては、このデジタル赤字が再び加速する可能性が高いと考えられる。理由としては、第1に、生成AIの本格普及に伴い、海外クラウド基盤や大規模計算資源への依存が一段と強まること、第2に、企業活動や行政サービスのデジタル化が進展することで、ソフトウェア、プラットフォーム、データ基盤に対する支払いが継続的に増加すること、第3に、円安や国際競争力の格差が続く場合、海外事業者への支払負担がさらに拡大しやすいことが挙げられる。
したがって、日本のデジタル赤字は、一時的に横ばいとなる局面を挟む可能性はあるものの、中期的には拡大基調を維持し、2030年に向けて再加速する蓋然性が高い。今後、この赤字拡大を抑制するためには、国産クラウド、生成AI、ソフトウェア、半導体、データセンターなどの基盤整備を進めるとともに、日本国内で生み出されたデジタル需要と付加価値を国内に還流させる産業構造への転換が不可欠である。その意味で、今後は「Made in Japan」と言える国産デジタルサービスの育成と競争力強化が強く求められるのである。