最近、ソフトウェア開発会社を含む情報サービス業の倒産が増加している。

しかし、これは単純に「IT業界が不況になった」という話ではない。

企業のDX、クラウド化、AI導入など、IT需要そのものは依然として大きい。

それにもかかわらず、なぜソフトウェア開発会社の倒産が増えているのか。

その背景には、人件費の上昇、人材不足、多重下請け構造、価格転嫁の難しさ、そして生成AIの急速な進化という、ソフトウェア業界そのものを変える大きな構造変化があると考えている。

ソフトウェア開発会社の倒産が増えている

東京商工リサーチによると、2026年上半期の「情報サービス業」の倒産は166件となり、前年同期比18.5%増加した。

特に目立つのが、小規模・零細企業の倒産である。

また、帝国データバンクの調査でも、2024年度の「ソフトウェア業」の倒産は220件となり、前年度から大きく増加している。

重要なのは、IT需要そのものが消えているわけではないということである。

むしろ企業はDX、AI、クラウド、データ活用などへの投資を続けている。

つまり、仕事がなくなっているというよりも、従来型のソフトウェア開発会社の収益構造が通用しにくくなっているのである。

なぜソフトウェア会社の経営が厳しくなっているのか

背景には、複数の要因がある。

・人件費の上昇
・IT技術者不足
・多重下請け構造による低採算
・顧客への価格転嫁の難しさ
・ノーコード、ローコードの普及
・生成AIによるシステム開発の内製化
・単純なプログラム開発の価格競争

これらが同時に進んでいる。

中でも、今後最も大きな変化をもたらす可能性があるのが生成AIによるソフトウェア開発の変革である。

生成AIがソフトウェア開発を変える

従来のソフトウェア開発では、

PM
SE
プログラマー
テスター

など、多くの技術者が役割を分担して開発を進めてきた。

そして、多くのSI企業では、技術者の人数と開発期間、すなわち「人月」を積み上げることで売上を確保してきた。

しかし生成AIはすでに、

プログラム作成
テスト
バグ修正
仕様書作成
調査
資料作成

など、人間が行ってきた多くの作業を支援できるようになっている。

今後AIの能力がさらに高まれば、これまで多数の技術者を必要としていた開発案件を、少人数の優秀な技術者+AIで進められるケースが増えていく可能性が高い。

これはSI業界にとって非常に大きな変化である。

「人月ビジネス」は転換点を迎える

これまで日本のソフトウェア業界では、

技術者を増やす

人月を増やす

売上を増やす

というビジネスモデルが広く使われてきた。

しかしAIによって一人の技術者の生産性が大きく向上すれば、顧客側から見れば、

「なぜこれだけの人数が必要なのか」

という疑問が当然出てくる。

その結果、従来型の人月中心の受託開発モデルは、これまで以上に厳しい価格競争にさらされる可能性がある。

特に、

人月中心
下請け中心
独自サービスがない
専門的な業務知識がない
知的財産を持っていない
AIを十分に活用していない

というソフトウェア会社にとって、今後の経営環境は厳しくなると考える。

AI時代でも強いソフトウェア会社とは

一方、すべてのソフトウェア会社がAIによって弱くなるわけではない。

むしろAIを利用することで、これまで以上に強くなる企業も出てくる。

重要になるのは、

独自サービス
専門的な業務知識
顧客との信頼関係
特許などの知的財産
研究開発力
AIを活用した高い生産性

である。

こうした資産を持つ会社にとって、生成AIは競争相手ではなく、自社の能力を何倍にも拡張する道具になる。

AI時代に人間に残る仕事とは

AIが高度化すればするほど、人間の役割も変わってくる。

特に重要になるのが、

課題を発見すること
判断すること
責任を取ること

である。

顧客自身も、自分たちが抱えている本当の問題を正確に説明できない場合がある。

現場へ行き、顧客の話を聞き、業務を理解し、表面的な要望の奥にある本当の課題を発見する。

このような仕事は、単なるプログラム作成とは異なる。

また、AIがどれほど優秀なプログラムや事業戦略を提案しても、最終的に採用するかどうかを判断し、その結果に責任を持つのは人間である。

AI時代には、作業する能力よりも、課題発見・判断・責任の価値が高まると考えている。

中小ソフトウェア会社は何をすべきか

これから重要なのは、AIを導入することそのものではない。

AIを使って、自社独自の価値をどれだけ速く作り出せるかである。

例えば、

自社サービスにAIを活用し、開発と改善を高速化する。

顧客案件から得た業務知識を、自社独自のノウハウとして蓄積する。

新しい技術や仕組みを特許などの知的財産として権利化する。

AIを商品開発、営業、調査、改善に活用し、事業の改善速度を高める。

こうした取り組みが、これからの中小ソフトウェア会社にとって重要な生存戦略になる。

これから問われるのは「人数」ではなく「会社固有の価値」である

最近のソフトウェア開発会社の倒産増加は、

「ソフトウェア業界そのものが衰退している」

という意味ではない。

むしろ、

IT需要は存在しているが、従来型の人月・下請け中心のビジネスモデルが転換点を迎えている

と考えるべきである。

これからのAI時代に問われるのは、

「何人の技術者を抱えている会社なのか」ではなく、
「その会社にしか提供できない価値を持っているのか」

ということである。

そして、さらに重要なのは、

AIを使って、その会社にしかない価値をどれだけ速く生み出し、それをサービス、ノウハウ、特許などの知的財産として蓄積できるか

である。

AIはソフトウェア会社の価値を奪うだけの存在ではない。

AIを単なる人員削減や効率化の道具として使うのか。
それとも、自社の知識、サービス、研究開発、知的財産を増幅させるために使うのか。

この違いが、これからのソフトウェア開発会社の競争力を大きく左右すると考えている。