平成10年、父が株で大損した。
毎月80万円を銀行に返さなくてはならない。
当の父は働く気もない。
というか、毎日昼間っから布団をかぶって寝ている。
母も既に定年。
働き手は私一人。
矢内電気というのは私と父の二人、工事は専属の職人二チームに請け負いで任す。
つまり大きな会社ではない。本当の個人事業。
であるから、月80万円の借金なんて払えようもない。
父は毎日寝てばかりで何をする様子もない。
私が何とかしなくては。
で、住屋と事務所の家二軒を売ってもらうように不動産屋に頼みに行った。
父の知り合いに不動産屋が二軒いた。そのうちの一軒に頼みに行った。
その人は父の友達で男気があるような人、快く引き受けてくれた。
そして嫁に行った妹の妙子に話した。
「二郎さんが株で大損したので、お前も住んどった家と事務所の二軒を売ることになった。」
この話を事後に父の二郎にした。
すると、二郎はぶち切れした。
二郎「誰が言えというたんぞ。」と凄む。
「妙子には言うつもりがなかったんじゃ。何で言うたんぞ。」
清巳「なんでというても、嫁に行ったというても妙子もこの家に住んどった家族ぞ。この家が無いなるんやけん、話するのは当たり前やないか。」
二郎「わしが言うとるのは何で株のことまで言わないかんのかというとんじゃ。」
清巳「なんで家を売らないかんのかを話さずには状況が理解できまいが。」
二郎「なんで仙谷(頼んだ不動産屋さん)にまで言わないかんのぞ。」
清巳「なんでて、家を売らんことには借金を返せんやろ。そもそも家を二軒売ったら借金は返せるというたんはあんたじゃろ。自分が毎日寝よって動かんのやけん、僕が動いたんやろ。仙谷さんは『ほうか、困っとるんやったら助けちゃろわい。』という人やけんあの人に頼みに行ったんやないか。」
二郎の「何で?」攻撃を何とかしのぐ。
二郎「わしはまだ家を売る気はなかった。」
清巳「・・・・ほな聞くけど、一カ月80万の借金をどうやって返すん?」
二郎「・・・・・・・・・・しばらく様子を見るつもりやった。」
銀行は根抵当で借りれるだけ借りている。
それだけでなく、担保のない高利のローンも借りている。
放っておけば利子かかさむばかり。
自分が作った借金、自分が負けた株なのに、二郎は働きもせず毎日寝てばかり。
それで、何の様子を見るの?
様子を見たら何か変わるの?
株で失敗したのを人に知られたくないのだろうが、毎日寝てばかりじゃ何も解決せんじゃろうが。
と思うけれど、まだこの時は心の中でしか言えない私でした。