ひとりぼっちの まもの 1 | sgtのブログ

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歌うことが好きです。コロナ禍で一度はしぼみかけた合唱への熱が''22年〜むしろ強まっています。クラシック音楽を遅まきながら学び始める一方、嵐の曲はいまも大好きです。


ずうっとずうっと南の海に
ちいさな島がありました。



島には高い山ときれいな川がありました。
川のそばには村があって、
人々がしあわせに暮らしていました。



また、川のそばには森もあって、
森の中にはまものが住んでいました。



まものはひとりぼっちでした。
ひとりぼっちはさびしいなあと、
いつも思って暮らしていました。



ある晴れた日、
まものは川へ水浴びに行きました。
ずうっとずうっと南の島は、
晴れた日はたいへん暑いのです。



川では大勢の人間の子どもが
にぎやかに水遊びをしていました。
まものはそんな子どもたちを見て
楽しそうだな、いいなあと思いました。



そこでまものは、呪文を唱えて
人間の子どもに変身しました。
まものは不思議な力を持っていて
何にでも姿を変えられるのです。



子どもに化けたまものは、
子どもたちと一緒に楽しく遊びました。
まものは、楽しくて、楽しくて、
ずうっとこうしていたいと思いました。



けれどもしばらくすると、
高い山の向こうから黒い雲がわいてきて
やがて雨が降り出しました。
子どもたちは、急いで川から上がって
それぞれの家に帰って行きました。
まものは、ひとりぼっちで
とぼとぼと森へ帰って行きました。



別の日、まものが水浴びに行くと、
おとうさんと子どもが川で遊んでいました。
まものは、おとうさんになったら
さびしくなくていいだろうなと思いました。



そこでまものは、呪文を唱えて
子どものおとうさんに化けました。
ところが本物のおとうさんに見つかり
大げんかになってしまいました。



けんかではどちらが本物か決まらないので
島の王様に裁判を頼みました。
かしこい王様は見事 にせものを見破り、
まものを捕まえようとしたので、
まものはすっ飛んで逃げました。



たいへんな思いをしたのに
おとうさんになれなかったまものは
とても悲しくなりました。
これまでもひとりぼっちでしたが、
これまでよりももっとさびしく感じました。



どうして ぼくは ひとりぼっちなんだろう。



まものが、考えても、考えても、
答えはみつかりませんでした。



やがて、村にはうわさが広まりました。
「あの森には悪いまものが住んでいる。
まものは人間に化けて子どもをさらう。
さらわれた子どもは食べられてしまうぞ」
子どもはみんな怖がって、
森のそばでは遊ばなくなりました。



ある日まものが水浴びに行くと、
川に子どもの姿はなくて、
水くみや洗濯をする大人たちがいました。
今度まものがあらわれたら
みんなで捕まえてやっつけよう。
大人たちはそんな話をしていました。



まものは驚きました。
なぜかはわからないけれど、
人間がぼくをやっつけようとしている。
これからは、人間に見つからないよう
気をつけなければいけないと思いました。



それからのまものは、
人間と会わないように、
ひっそりと暮らすようになりました。
水浴びにもあまり行かなくなりました。






〈つづく〉